2014年6月13日
田村陽一(以下、田村) KPMGは、会計事務所としてカンボジアでは最大手のひとつで、約150人のプロフェッショナルおよびスタッフが在籍しています。ASEANでは9か国に23拠点を持ち、6,300人を擁しているグローバルファームです。会計監査、税務、法務およびアドバイザリーの分野において、企業の新規参入から事業拡大、安定的成長に至る各フェーズごとにさまざまなサービスを提供しています。
会計監査業務では企業が作った決算書が適切かどうか、独立した外部専門家の目から見てチェックします。税務業務では税務申告のサポート、税務調査対応のサポートや、クライアントの事業内容や会計実務に沿った税務リスクの洗い出しや節税策の提案といったサービスを提供しています。
法務業務では、会社設立、定款変更、労働省登録などの手続きのサポートを行っています。アドバイザリー業務では、M&AのサポートやIFRS導入支援などを行っています。
日系企業のクライアントでは、日本からの直接投資だけではなく、タイやシンガポール、中国などにある海外子会社を通じてカンボジアに進出するケースも多くあります。その両方に対応できるグローバルな体制のもと、高品質なサービスを提供しているところも私たちの強みです。
マイケル・ゴードン(以下、ゴードン) 投資家にとって重要なのは、カンボジアがまだ発展途上にあるということを意識することです。すべての分野の手続やシステムが十分に整備されておらず、税法の運用についても同じことが言えます。税金の仕組みや税法は、1960年代から70年代に作られた初歩的な税法を基にしています。細かい定義や説明がない部分も多く、租税裁判所もありません。租税に関する決め事は基本的に税務総局に決定権があるような状況です。どの定義、解釈が適当か見極める必要があります。
この十年間、税務総局の法解釈に起因する問題は頻繁に起きています。日本のような先進国の投資環境は、法令やルールがしっかりしていますが、そのようなものはカンボジアにはないと考えていただきたいです。ビジネス上のリスクをしっかりと把握し、適切に対処しながら投資をすることが重要です。とは言え、カンボジアには多くの投資機会があります。今後も継続的な経済発展が見込まれており、投資家にとって魅力的な国であることは間違いありません。
ゴードン 先ほどお話ししたように、カンボジアの税制は初歩的といえるものです。ただし、高度な税制が必ずしも望ましいというわけではありません。先進国の税制は高度に発展していますが、実際問題としてあまりにも複雑すぎて実用的とは言えません。ちゃんとした注釈やガイドラインがあれば、シンプルな税制で十分なのです。
徴税に関わる公務員の腐敗の問題もあります。2011年に腐敗防止法が制定されましたが、より的確に長期的に運用される必要があります。税務署の本来の役割は、とにかく多くの税金を集めることではなく、税制をより正確・的確に運用し政府のために税金を集めることにあります。
公務員が個人的な利益を求めるのではなく、正しいやり方で徴税を行うことが求められています。税制を改善するために、税務署もいろいろな対応を図っているようですが、ガイドラインなどを制定し、条項の解釈を明確にすることが国際標準に近づくための一歩になります。
カンボジアへの投資にあたっては、企業や経営に対するリスクをしっかりと考慮することが大事です。どうやって会社を興すか、どこに会社を興すか、どの分野に税金がかかってくるのか。決して、大体の感覚でものごとを決めずに、できるだけ正確な調査・分析をして欲しいと思います。(取材日/2014年1月)