2015年1月23日
(前編からの続き)
カンボジアエキスプレスは、通常はカンボジアで作ったものをシハヌークビル港から出して日本まで輸送しています。通常はシンガポールを経由しなければなりませんから、3週間ほどかかってしまいます。そこで陸路を利用してプノンペンからホーチミンまで運び、ホーチミンの港から日本に輸送することで、リードタイムを縮めることができます。
カンボジアでの大きな問題の一つが物流と通関料です。カンボジアでは税関とカムコントロールが存在しているため、税関とカムコントロールで許可を得なければなりません。カムコントロールは安全品質に関する検査機関という位置づけで検査し、さらに税関でも検査をするという二重行政になっています。ただ、税関で行っている検査は、貨物が税番どおり正しく申請されているか、収める関税が正しいかの検査になっています。他国では全て税関が一元管理しており、カンボジア特有の制度となっています。カンボジアは通関料が高いという話を良く聞きますがこの2重行政がその要因の一つとなっています。
タイとベトナムという2つの経済国に挟まれているという立地にあるカンボジアですが、最近はチャイナ+1やタイ+1といって、タイにある工場の第二工場をカンボジアに作り、部品をタイから持ってきて、人件費の安いカンボジアで組み立てし、またタイに戻して最終組み立てをして製品として輸出するという流れが主流になってきています。そのためタイ、カンボジア間の陸路による物流が活発です。
また、ベトナム国境近くにあるバベットでも同じように生産し、ベトナムのホーチミンの港から輸出しています。その距離、2時間ほどです。ベトナムの工業団地とほぼ変わらない立地条件で、カンボジアの安い労働力を使って製品を作って日本まで送るというように、カンボジア単体としては、ポテンシャルの段階で他国と比べるとまだまだ小さく、ベトナムやタイの隣国と組み合わせて物流を考えていく方が面白いのかなと思います。来年にはネアックルン橋も完成しますし、ASEAN経済統合も控えています。南部経済回廊を活用した物流は、今後も益々加速していくと予想しています。また、シハヌークビル港は深水港なので、大型船が入る港ですし、シンガポールやマレーシア向けには非常にアクセスの良い港なので、これから便数が増えればさらに便利になるでしょう。
私たちがこれらのサービスを提供しようという段階で、いろんな障害もあります。例えば、一つのトラックに複数の顧客の貨物を搭載すると、それぞれに輸入許可が必要になってきます。また、書類の不備などの理由によって止められた場合、その他の顧客の荷物までもが止まってしまいます。低温物流はいったん入れてしまうと、24時間365日動かしていかなければならず、非常にリスクがあるのです。低温物流が簡単だったり、採算がとれるのだったら他社で既にやっているはずです。2トンの貨物トラックでホーチミンから荷物を入れ、カンボジアから2トンの荷物を積んでホーチミンへ戻れば最高ですが、今のところカンボジアから積む荷物が無いに等しいのです。将来的にはあるのでしょうが、今もって低温物流が無い国というのは、非常に珍しいことだと思います。
工業団地への製造業の製品輸送や、設備の輸送まで一貫して請け負い、日本や中国からタイやベトナムへ工場ごと移設するという実績も数多くあります。物流会社の選択は、料金もさることながら、どれだけ経験・知識があるか、ホスピタリティがあるかが重要だと思います。ローカルは料金的に有利ですが、何かトラブルがあった時にそれらを取りまとめて迅速に対応したり、有益な情報を提供するのが日系物流会社の特長であるといえます。やはりコミュニケーションがとれるというのは強みです。また、低温物流に関してはこれから経験・知識を積む段階ではありますが、この分野でも先駆者でありたいと考えています。(取材日/2014年8月)