2014年12月31日
私が初めてカンボジアを訪れたのは8、9年前でした。バックパッカーとして旅をしており、そのときに同じくバックパッカーだったアイルランド出身の妻と出会いました。その後、渡豪し数年が経ち、今から5、6年前、人生に変化を求めエクスパット(駐在外国人)としてどう転ぶか、カンボジアで一年暮らしてみることにしたのです。一年という期限を設けて来たのですが、いつの間にか5年となりました。妻もVDBロイで働いており、とても満足しています。
最初訪れたとき不動産探しに苦労しました。その当時のサービスでは中々満足を得られなかったのも事実です。私は過去に(豪では)インフラ整備と設備維持が平職であり、不動産に関する最低限の知識がありました。そこでカンボジア人の友人と不動産を観て周り、写真を撮影しWebサイトを構築しました。それがIPSの始まりです。
当初はWebサイトと携帯電話のみでしたが、現在国内に三つの支店(プノンペン、プノンペントウマイ、シェムリアップ)があり、向こう12~18ヶ月の間でシハヌークビルに支店を開く予定です。5年前に起業し、現在の形にしてきた理由としては、この業界にかなりの可能性を感じたからです。起業後最初の12ヶ月でそれは確実な自信へとつながりました。良い決断をしたと今は思っています。
私どもの会社と他社との違いですが、IPSは外国人による会社です。私どもの多くのエージェントも外国人であり、主なクライアントである外国人のニーズも把握していると思います。我が社の実績の8割が外国人による賃貸または売買、更には商業的分野でのお手伝いも多く手がけています。オフィスやウェアハウスの提供だけではなく、時に会社設立の支援もしています。
ここで働くみなが同じプロセスを経てきています。皆外国人であり、私は5年、長い人は18年カンボジアで暮らしており、平均すると3-5年は居住しているので、今までの経験を活かすこともあり、より親身になって相談に乗ることができます。外国人による不動産業者としては長いのではないでしょうか。私どもは強固なネットワークもあり、かなりの数のオーナーさんにも通じているので、他社では見つけられないような物件もあります。オーナー様は、良い外国人の顧客を抱えていると知っているので、繰り返し我が社を指名してくださいます。
ここでは多くの人が頻繁に転居します。業界の変動の大きさも一因です。5年前すごく良かった物件は、新しく出てきた選択肢に立ち向かえなくなります。それも転居が多い一因です。更にはオーナーさんも難しいですね。豪での私の経験では、家主というものは結構気さくでリラックスしています。良い借主がいれば、ずっといてほしいと考えます。しかしカンボジアではどれだけ良い借主で、物件をきれいに維持したとしても、2、3年後には物件の状態にかかわらず家賃が上がります。時にその上昇率があまりにも高く、それが転居の理由となる場合も少なくありません。
カンボジアでは不動産の所有権や土地の個人所有権の法はありますが、賃貸物件においては、きちんとしたガイドラインはありません。ですから、言わば無法地帯なんです。いろんな人がいて、いろんな価値観があってまとまらないのです。
現在のプノンペンの不動産業界ですが、かなり刺激的なマーケットです。街を見上げると建設業界はここ2、3年、ミニブームであると言えるでしょう。それが今マーケットに流れ込み始めています。売買物件のみではなく、賃貸もかなり出てきており、プノンペンの変化となっています。2010年に外国人の所有権に関する法案が院を通過し、翌年施行されました。それにより外国人は新しく建設がはじまったビルの専有権を(strata title)購入できるようになりました。以前はノミニー制度(※)を使うか、専門の代理店を通して100年等長期契約を取り付けて不動産を守る必要がありましたが、現在は自己名義で買えます。その事実は、買い手にとっては大きな安心感に結びついています。現在では、外国人による直接投資が不動産業界でも見られるようになりました。投資目的だけではなく、居住外国人の自国の両親が投資兼別荘目的でデキャッスルの数部屋を抑えていたりする現象がみられ業界にとっては追い風となっています。
※ノミニー制度:合法的にプライバシーを保護することができる。法人登記時にオーナーの個人情報を使うことなく登記することが可能
ストラタ・タイトルとは、西洋で言うとビル会社と購入希望の個人が共同所有の契約を結んだ上での専有契約のことを指します。アパートメントに100ユニットあるとしたらこの専有制度を使い、各々の部屋とオーナーとが直接契約できるものです。ただカンボジアではビル全体の7割以内が外国人所有と定められています。上限が決まっていますし、地階や地下以下はカンボジア人の所有でなければなりません。
施工会社の立場としては、地階にはアメニティサービスや自社オフィスとして利用したりもできます。カフェやコンビニに賃貸することもあります。決して損害というわけではありません。現在多くのビル開発が始まり、今後業界へ供給されるわけですが、この影響はまだ計り知れません。デキャッスルが最初となるので、今後の変化への指標となるでしょう。デキャッスルは多くの日本人も購入しており、今後1ヶ月くらいで入居も始まります。その多くは賃貸による投資物件として購入しており、業界への供給が一気に増えることになります。1200-45000ドルの家賃価格帯の部屋があのビルにはありますから、多少なりの影響はあるでしょう。
現在2ベッドルームで1500ドル支払っている人は、築7年の自分のアパートを取るか、新設備満載でプールやジム付のデキャッスルかという選択肢が生まれるわけです。新しい設備、プールや最新のジム、私ならきっとデキャッスルを選ぶでしょう。それが今後の住居のシフトにつながるかもしれません。(後編へ続く)(取材日/2014年7月)