カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

業界別インタビュー

2016年7月6日

競争激化の中でも事業拡大の余地はある[金融]ホウ・イエン・トン(1/2)

金融・保険

ハッタカクセッカー Hattha Kaksekar
CEO&プレジデント: ホウ・イエン・トン閣下  Oknha Hout Ieng Tong
カンボジアのマイクロファイナンス業界第4位のシェアを誇るハッタカクセッカー。2016年2月、タイのアユタヤ銀行による買収のニュースが報じられたが、ハッタカクセッカーの今後の展望とは。CEOのホウ・イエン・トン氏に話を伺った。(取材日/2016年4月)
NGOから株式会社へ

―――自己紹介と会社の紹介をお願いします

ホウ・イエン・トン(以下、ホウ) ハッタカクセッカーの創始者、ホウ・イエン・トンと申します。ハッタカクセッカーが始まったのは1994年です。当初のハッタカクセカーは、カナダのケベック州にあるNGO、OCSD/OXFAM–Quebecのプロジェクトにすぎませんでした。プノンペンから約200キロのところにあるプルサット州で始められたこのプロジェクトは「フードセキュリティプロジェクト」と呼ばれ、たくさんの構成要素がありました。農業、教育、そして信用販売などもありました。
私は1992年にプノンペンにある大学を卒業し、1994年からアシスタントプロジェクトマネージャーとして働き始めました。大学では農業経済を専攻していました。

 この組織の開発プロジェクトがうまくいって、1995年に信用商売の部門にとても興味がわいたので、プロジェクトマネージャーにこの部門だけを引き継ぎたいと申し出たところ、彼が私に信用商売の仕事だけを割り当ててくれました。そして同年、この組織に信用商売部門を独立させようと持ちかけ、それが認められて部門が独立し、1996年に「ハッタカクセッカー NGO」というNGOとして登記することが出来ました。ハッタカクセッカーという名前は、「農民への救いの手」という意味です。

 私たちは2001年までNGOとして活動しました。同年にカンボジア中央銀行監督のもと、正式な株式会社に業態を変更するとともに、マイクロファイナンスとしてのライセンスを取得し、商業省にも株式会社として登記をしました。そして2010年預金業務のライセンスを取得し、預金取扱マイクロファイナンス機関となりました。私たちの会社は成長を続け、今では国全体に151の支店を持ち、2400人の従業員がいます。

ハッタカクセッカーのサービス

―――御社のサービスについてもう少しお聞かせいただけますか

ホウ ハッタカクセッカーは金融サービスを提供しています。主にローンと預金です。ローンはつまり貸付です。貸付はいくつか商品があります。中小企業への貸付、農業計画への貸付、貿易業への貸付、手工業への貸付、教育への貸付、グリーンエネルギー関連事業への貸付、これらが挙げられます。そして預金についても、定期預金だけでなく他にもいくつかの商品があります。そしてさらに、他のサービスも用意しています。ATMの設置、携帯電話を通じた送金や携帯電話へのチャージのサービスの提供をしています。

―――インターネットバンキングのようなものですか?

ホウ インターネットバンキングとは少し違います。インターネットバンキングではコンピューターを使いますが、私たちのサービスでは携帯電話を使います。とても便利です。携帯電話というのは、スマートフォンだけではありません。携帯電話が使えるのです。私たちは3つのチャンネルを用意していて、SMSのメッセージを使ったり、USSDでコードをクリックしたりすることができます。スマートフォンを使えば、さらに便利ですね。私たちはモバイルバンキング用のアプリがあり、アプリを開けば残高照会や取引の確認、送金がわずか数秒でできます。携帯にチャージしたり、各種料金を支払ったり、そういったこともできます。

マイクロファイナンス業界の現状

―――マイクロファイナンス業界の現状についてお聞かせください

ホウ 現在カンボジアにはたくさんのマイクロファイナンス機関があります。マイクロファイナンスサービスを提供する商業銀行もわずかながらあり、その下には7つの預金取扱マイクロファイナンス機関があります。さらにその下には、40以上ものマイクロファイナンス機関があります。

 カンボジアの金融機関には3つのレベルのライセンスがあります。1つ目は商業銀行、中にはマイクロファイナンスサービスを提供する銀行もあります。2つ目は預金取扱マイクロファイナンス機関であり、7つの機関しかライセンスを取得していません。3つ目は通常のマイクロファイナンス機関です。40以上あります。これら3つのライセンスを持ったマイクロファイナンス機関のほかに、登記されたマイクロファイナンス機関があります。それらは中央銀行に登記をしているだけです。このようにマイクロファイナンス機関の数の話をすれば、非常にたくさんあります。多すぎると思う人がほとんどでしょう。

 しかし需要に関していえば、依然として高いです。つまり多くの人が融資にアクセスできておらず、金融支援を必要としています。だからマイクロファイナンス機関が成長し、事業を拡大する余地は依然としてあると思います。しかし競争は日に日に厳しく、強くなっています。多くのマイクロファイナンス機関が参入し、事業を拡大させようとしています。だからマイクロファイナンス機関の利幅は小さくなっているのです。競争が激化して一番利益を受けるのは顧客です。多くの機関が貸付金利を下げたり、預金金利を上げたり、集めた預金を貸付に回そうとしたりして競争力を高めようとします。しかし事業費が上がっています。マイクロファイナンス機関が増えていることによって人材が不足し、人件費が高くなっているのです。(取材日/2016年4月)
次回へ続く


ハッタカクセッカー Hattha Kaksekar
事業内容:マイクロファイナンス機関
URL: http://www.hkl.com.kh/
関連記事
経済
カンボジアのマイクロファイナンス:過度な負債と土地の担保の現状[経済]
(09月05日)
経済
カンボジアの電子決済額、世界最高水準に[経済]
(07月06日)
経済
PPCBank社債上場第2フェーズは応募超過に カンボジア[経済]
(10月12日)
経済
中小企業銀行と農業開発銀行、中小企業へ6300万ドル融資 カンボジア[経済]
(07月31日)
経済
マイクロファイナンス機関、約8億ドルの返済条件変更を承認 カンボジア[経済]
(06月08日)
経済
カンボジアマイクロファイナンス協会、債務者に「ソフト」な措置[経済]
(30日)
あわせて読みたい
特集
日本企業ならではのサービスや従業員教育を市場流入させたい
特集
隠れた“フィンテック先進国”カンボジア ~スマホ・携帯による送金額は国内総生産の半額規模にまで到達、急速に普及する金融×IT先端サービスの行く先は?~ (1/4)
特集
本音調査アンケート 調査リポート02―マイクロファイナンス
特集
急拡大するカンボジアのマイクロファイナンス市場。存在感を増す日系企業の参入と巨額投資、そのマネーが向かう先の実体は?(3/3)
特集
急拡大するカンボジアのマイクロファイナンス市場。存在感を増す日系企業の参入と巨額投資、そのマネーが向かう先の実体は?(2/3)

その他の「金融・保険」の業界インタビュー