2017年7月15日
――1年前に比べて、建設業界全体の変化はありますか?
ミース・プロックサー(以下、ミース) 前年と比較して、建設市場がやや減速しているように思います。 2016年に多くのプロジェクトがローンチしたわけではありませんが、ほとんどの開発が2015年以降に開始され、2018年以降、すなわち2018年の国民選挙後の完了を目指している可能性が高いです。総選挙後には、政治的・経済的安定が正常化し、不動産市場が再び盛り上がるのではないでしょうか。
また、別の理由として、世界的経済の影響、特に中国の株式市場の暴落や米国政府による金利上昇、ベトナム、タイ、ミャンマーなどの近隣競争国の成長が優位にあることが挙げられます。
――中国企業はカンボジアでますます積極的になっています。これについてどう思われますか?
ミース カンボジアへの投資は基本的に、両政府の協力関係により、政治的な後押しがあり行われています。 そのため中国政府のバックアップにより、中国人はこの発展を、驚きつつも安全に感じているでしょう。
しかし、中国の開発プロジェクトの多くは、財務基盤の強い中国企業の支援を受けており、何かを建設する際には自分たちのリソースを使い、また買い手も中国企業をターゲットにしています。 そのため、中国は開発者だけでなく、バイヤーも豊かです。
投資または休暇のため、財産を持つことが難しく汚染された中国から抜け出したい。益々多くの中国人が、中国外での財産を所有しようとしています。 中国人にとっては、カンボジアは天国でしょう。
――日本企業はどうでしょうか?
ミース 日本企業は投資について慎重で、 どこに行くにせよ、その国の長期的な計画とビジョンを良く勉強します。 彼らが立ち上げるプロジェクトは、そのプロジェクトの成功を確実にする明確なマスタープランとビジョンとともに、強力な金融資本によって支えられています。
カンボジアでは、日本企業は通常、日本コミュニティの需要を満たすビジネスや、スペアパーツなど、不足しているサプライチェーンに気付き、事業を開始します、日本政府や日本コミュニティが支えているインフラや地域に沿った開発や事業ですね。 例えばチョロイチョンバー地区に焦点を当てたサンライズホスピタルやベルビューアパートメントなど。 他は日本の小売店やレストランです。
――労働者の賃金と給料はどうですか?
ミース 建設労働者の場合、賃金や給料は徐々に増え続けています。 1日辺りの収入でいうと、非熟練労働者は6ドル以上、低技能労働者は10ドル~15ドル、熟練労働者は20ドル程度です。ディベロッパー は、期限内の完成に向けて十分な労働力を確保したいと思っているが、建設作業員が不足しているため、賃金と労働条件は近年争われていますね。
しかし、建設労働者のほとんどが、市内でのプロジェクトが無い時期には、農作業にほとんどの時間を費やしています。建設労働者が季節ものだと扱われることに注意ですね。米をはじめとする多くの農産物の販売価格が下がったため、多くの人々は、利益を上げられない農作業に従事するよりも、一年のほとんどを建設現場で働く方が良いと思っています。
―カンボジアの産業全体の状況について教えてください。
ミース すべての産業が全体的に良好ですが、素晴らしいとは言えません。
農業は売価の低価格化、縫製業は最低賃金上昇、不動産は高すぎる価格での過剰供給問題に直面しています。しかし、経済は依然として勝ち続けている。
近隣諸国と比較すると、カンボジアは投資して成長する不動産の部屋がはるかに多いです。問題はすぐに健全化するでしょう。
――コンドミニアム市場の展望を教えて下さい。
ミース 過去数年間、ハイエンドクラスの開発が多く、そのため過剰供給が発生し、十分な買い手がいません。そのため現在、ディベロッパーは開発物件をローエンドクラスや、買い手を引き付けることができるコンセプトに変更しています。 将来的には、市場を勉強して実際の需要を見ているため、開発者が物件数を調整し、需給と供給はお互いに合うでしょう。
またカンボジアのハイエンドコンドミニアムは、カンボジアでは高くても、中国、シンガポール、タイの通常のマンションと比べるとまだ安いため、将来的にはほとんどが購入されると考えています。
――土地やマンションに投資したい日本人投資家へ、アドバイスをお願いします。
ミース 開発コンセプトと、どんな買い手をターゲットとするかによって異なりますね。
もし安価で素晴らしい開発コンセプトであれば、顧客は十分に確保できます。 カンボジア市場は依然として強い購買力がありますが、立地が良い、デザインが良い、手頃な価格、ビジネスや投資において魅力的等、買い手を惹き付ける物件は少ないです。
しかし依然としてカンボジアは土地集約的な国なので、開発が進んでいる土地を買うことで大金を手に入れることも出来ます。コンドミニアムはまだほとんどのカンボジア人にとってコンセプトが新しいため、低価格のローエンド向けであれば、地元の人々も興味を示すでしょう。
――土地やマンション以外への投資に関して、チャンスはあると思いますか?
ミース グレードBのオフィスや商業施設、小売店舗への投資は、地元企業や国際企業問わず進出してきてはいるものの、まだ潜在的な可能性の高いニッチ市場です。 プレミアムスペースには手が届かないかもしれませんが、グレードBはおすすめです。
またカンボジアは、アクセスが良く、気候や文化も馴染みやすいため、農業や組立工場、銀行への投資や会社設立が日本人投資家には良い機会だと思います。
――最後に、日本企業にメッセージをお願いします。
ミース カンボジアは、アセアン市場への足掛かりとして検討されるのが良いかと思います。また、環境にと転機に恵まれ、労働コストも安い。退職後には素晴らしい場所ですよ。(取材日/2017年3月)