2017年8月15日
――カンボジアはどのように金融業界で成長しましたか
レオニー・レスブリッジ(以下、レスブリッジ) カンボジアの金融業界は、持続可能で包括的な経済成長に寄与しており、今後も成長は続くでしょう。良好な経済活動により、銀行システムは流動性が高く、健全さを維持しています。一方で、不良債権は非常に少ないですね。
――経済のドル化による影響を教えて下さい
レスブリッジ 低廉な労働コストと税制の改善の中で、市場でのドル使用は、投資家の経費削減に繋がり、依然として事業にとって重要であると考えられています。
しかし、経済と金融システムが成長するにつれて、高度にドル化された経済は、特に経済危機において、効果的な金融政策を取ることができなくなります。企業にとっては、通貨リスクをヘッジする必要性とチャンスの両方の可能性があります。
――ANZの強みおよび専門性を教えて下さい
レスブリッジ ANZロイヤルのスローガンは、革新、洞察力、連結性!(Innovation, Insights and Connectivity!) です。
ANZロイヤルは、様々な商品とサービスを提供しており、法人向け資金調達、銀行取引、貿易金融、外貨・通貨ヘッジ、住宅ローン、インターネットバンキング等が挙げられます。2005年の営業開始以来、差別化された商品とソリューションの提供により、カンボジアの金融業界で高い地位を確立しています。
経験豊富なリレーションシップマネジャーとその他の行員の素晴らしいネットワークを誇り、カンボジアはもちろんより広い地域においても、お客様の投資と財務の成長をサポートしています。
我々は革新的な商品や技術に引き続き投資しており、ちょうど最近、法人向けのオンライン納税サービスを提供できるカンボジア初の銀行となりました。また、我々は依然として複雑とされるHost to Host接続の商品を提供できる唯一の銀行であり、給与支払から買掛金、およびその他関連業務フローまで、お客様の事業における事務活動を最も効率良く管理できる最適な商品になっています。
中でもANZは、大メコン地域の5市場すべてに拠点を持つ唯一の国際銀行であり、各地域のお客様の貿易取引を促進し、さらにカンボジアに直接投資と投下資本をもたらしています。
ANZグループレベルでは、同地域において長い営業活動の経験を誇っています。我々は、アジアでのチャンスは実現可能だと見ています。具体的に、アジアは2050年までに10カ国にリードされ世界のGDPの約60%を占めると予測しており、ANZは同10カ国にお客様をコネクトさせます。我々は、世界貿易フローの70%を占める地域で営業活動を行いつつ、地域の貿易フローを正確に把握し、アジアへの自由かつ開放的な貿易の重要性を認識しています。
――電子商取引やフィンテックの増加についてどう思われますか
レスブリッジ 世界的に、フィンテックは現状を挑戦しつつ我々がいままでやってきたことに問いかけ続けており、これはカンボジア特有のことではありません。銀行業において、刺激的かつ課題を挑戦させられる時期であり、特に金融機関が効率の良いかつ低価な銀行と金融サービスを提供するため技術を活用しようとしています。
我々は、お客様を第一に考え、お客様の嗜好の変化に合わせて商品とサービスを適合させます。現在、人口の94%が携帯電話を使ってインターネットにアクセスしており、多くの金融機関はこのチャンスをすでにつかんで携帯電話での決済サービスに投資をしていることがわかっています。
我々も、個人や法人のお客様がシンプルかつシームレスな銀行サービスを受けられるよう、技術への投資を惜しみなく行っています。例えば、法人向けの分野においては、ANZロイヤルは、依然としてANZトランザクションを通じた革新的なデジタル決済ソリューションを提供しているリーダーであり、特に数少ない企業ではあるが、その企業に対して最先端のERPシステムへアクセスできるよう提供しています。
――金融業界の問題について教えて下さい
レスブリッジ カンボジアは、発展が目覚ましいものの、規制フレームワーク、ITインフラ、銀行システムおよび人材を開発していく必要がまだまだあります。金融業界にとっては、法律制定および目標とされる投資にさらに力を入れることが最も望まれます。
不動産業界も、関心の高いセクターのひとつです。カンボジア、特にプノンペンは、投資家が不動産の低い価格という好機を利用しかつ外国人が所有権を取得できることにより不動産購入が容易なことから、アセアン域内では住宅用土地も商業用土地も最大の成長を遂げています。しかしこの成長がオフショアファンドによって促進されていることを考えると、不動産バブルや崩壊は金融業界と経済の成長に何らかのマイナスの影響を与える可能性はあります。しかしこれは不動産業界に限ったことで、経済全体には影響しないかもしれません。
――金融業界のホットトピックを教えて下さい
――レスブリッジ 金融業界において一番のホットトピックスは持続可能的な貸出の成長ですね。現状の成長は、業界の持続可能性に悪影響を与える可能性があるからと考えられます。
カンボジア国立銀行(NBC)は、金融業界が世界市場の変動に耐えられるよう、流動性と資本金の要件を含むコンプライアンス枠組みを強化し、貸出の伸びを抑制するために活発な役割を果たしてきています。その結果として、市場は、銀行や金融機関の統廃合が促進されると予想されました。カンボジアのような新興国では、インフラや貿易開発に資金を提供するため、健全で持続可能な貸出へのアクセスと成長はとても重要なことです。そうでなければ、経済全体の成長が影響され、また投資家からの信頼がなくなっていくことを受け止めることになるでしょう。
――将来の金融業界の展望を教えて下さい
レスブリッジ 金融システムで提供される商品の高度化が高まるでしょう。例えば、国債の発行や資本市場へのアクセスなどが挙げられます。しかし、それを実現にするには、財務報告、監査された数字、および公正な実務基準のさらなる透明性を政府により再強化されることが求められます。
預金調達は、ここの銀行業においては、大きなテーマではありません。多くの銀行にとって、預金調達は単なる周辺的な活動に過ぎなく、預金額よりもローンの成長を注視しています。しかし、NBCが導入した流動性カバレッジ比率(LCR)によって、その傾向は変わりつつあります。
私は、今後、業界はローンの成長による収入を増加させることよりも、効率性を拡大させることに注力するだろうと期待します。過去5年間はもっぱらローンの成長に目を向けてきておりほとんどの銀行にとって効率性は二の次でした。しかし、ローンの成長は二つの要因によって鈍化するでしょう。ひとつはLCRの導入、もうひとつは経済と地域が少し停滞気味の成長フェースに直面しているからです。今後は収入が圧迫される中、効率性がより大きなテーマとなるでしょう。
*流動性カバレッジ比率規制とは、国際的な銀行の健全性を維持するための規制である「バーゼル3」を受けて導入されたもので、現金や国債のような安全性の高い適格流動資産の、30日間の不測の状況が続くようなストレス期間に必要となる流動性に対する比率を一定以上に保つことを求める規制
――最後に、読者へメッセージをお願いします
レスブリッジ カンボジアは、アセアン域内の中心に戦略的に位置し、ちょうど地域間をまたぐ連結性が求められる時期において、非常に興味深い市場です。また、急速な成長によって、投資計画とリスク許容を合わせられる投資家に対して多大な機会をもたらします。さらに、カンボジアの人口動向も非常に有利な状態にあり、教育の質は引き続き改善する必要があるものの、長期的な成長を支えるのはダイナミックな若い人口なのです。我々ANZロイヤルは、カンボジアですでに事業を行っている投資家のみならずこの国へ進出される方々も歓迎し、銀行サービスのご要望にお答えできるよう態勢を整えています。(取材日/2017年4月)