2015年7月20日
(前編からの続き)
――他の銀行との違いについて教えてください
イン・チャンニー(以下、イン) 当行は個人・企業両方へのサービス提供を行っています。独自のサービスとしては担保がないようなマイクロビジネスでも審査をもとに融資を実行しています。融資金額$3000以下は担保不要、外国人でも消費者ローンなら対応が可能です。他行の場合、基本的に外国人はNGでしょう。また、カンボジアの多くの銀行がプノンペン中心で営業していますが、当行は全土をカバーしています。全土に対応する電子インフラを保有しているので常時国内の他行と繋がっています。インターネットバンキングにも対応しているので、支払や送金、残高照会のために銀行へ足を運ぶ必要もありません。さらに、零細企業向けの融資でも事業のキャッシュフローを重視するので$3000以上でも担保なしで貸付を実行する場合もあります。それは他行との決定的な違いだと思います。
――なるほど。NGOから発展した商業銀行だからこそと言いますか、際立った特長ですね
イン はい。また当行は政府機関とも連携し、昨年から公務員の口座開設から給与支払いまで請け負っています。その数は40万口座に上ります。収入情報を把握しているので公務員の消費ローン等に活用することもできます。当行は全土に対応しているわけですが、地方の支店では農業関連の活用も多く、農業関連貸付も総合貸付の2割近いです。
今後はすべてのシステムにおいて自動化を進めていきたいです。どうしても窓口の待ち時間が課題になるので、電子指紋認証の導入などで本人確認をスピード化し所要時間を短縮できればと考えています。電子指紋認証は既に一部で試験導入しており、今年の9月をめどに本格導入を目指しています。時間短縮もそうですがペーパーレス化もできますね。当行は口座数が多いので顧客の数も多く待ち時間も長いですが、その分利便性への投資ができます。
――他にも何か特長はございますでしょうか
イン 当行ではSMBCやオリックス(金融、マイクロファイナンス共に)と連携しており、24時間対応のコールセンターも日本語対応(他に中国語、英語、クメール語)しています。日本人スタッフと日本語ができるスタッフのチームもあります。もちろん日本以外の外国人投資部門がありますが、企業口座では日系が一番多いと思います。ちなみに当行は国内で唯一年中無休営業であり、他行が休みの日曜日はイオンモール内の支店が営業しています。
――カンボジアの銀行業界の過去と現在でどのように変化しましたか
イン 2008年に世界経済危機があったわけですが、カンボジアへは直接的な影響はなかったものの成長は弱まりました。2010年から復調の兆しが見えました。ここ数年は外国投資も安定的に増え業績は良いとは言えます。ただし、現在カンボジアでは大手商業貸付を34社が競合している状況であり、そのセクターは非常に薄利となっています。一方マイクロファイナンスは競合も増えてきましたが、まだ利益は高いです。更に我が社の電子インフラを他行が利用しているのでその分利益を確保できる状況です。
――カンボジアでビジネスを展開する際、考慮すべきことは何でしょうか
イン 新たな国に参入するときは経済、社会、政治の安定をまず見るべきです。あとは投資貸付があるかでしょうか。カンボジアは100%外資での会社設立も可能です。資本取引もUSドル建てなので安心できます。当然のことながら、人やインフラも見るべきですね。カンボジアは地理的条件から今後ASEANの中心に成長しうると感じています。そのためカンボジアだけではなくASEAN全体を見てみるべきです。近隣諸国は独自通貨ですし、外国企業向けの投資貸付が無いところも多いです。当行は外国人による預金残高(非居住者預金含む)も多いので、外国企業向けの投資貸付が実現できるのです。他行も対応している場合がありますが、私の記憶では母国からの資産情報をベースにしていると思います。
――日系企業へのメッセージがあればお願いします
イン 当銀行はできる限りの透明化を目指しているので信用していただけると思います。SMBCやオリックス等日本企業の資本参加もあるので日本人の皆様にとっては安心材料となるのではないでしょうか。日本人担当デスクも設置しておりますし、全力で日系企業へのサポートができます。またACLEDAを利用することでASEAN内カ国に対応することができます。また昨年はクレジットカード発行数でVISAより表彰されました。当行はAMEX以外のカード発行総代理店となっています。(取材日/2015年3月)