食品デリバリーアプリによる「ディープディスカウント(deep discounting)」がレストラン業界に深刻な影響を及ぼしている。
食品デリバリーアプリが採用するディープディスカウントは、売上を伸ばすためのプロモーション戦略である。この割引はレストラン側が資金を負担し、そこから得た利益をデリバリーアプリと分配する仕組みになっている。しかし、これによりレストランの利益は30~37%の手数料を差し引かれ、実質的に20~25%の利益減少につながっている。
一部のアプリでは支払いが即時処理されるものの、最大7日間遅れるケースもあり、現金回転に支障をきたす。さらに、割引を装い実質的に価格を上げる不正行為も横行し、質より量を追求する業者が観光客を欺く事例も指摘されている。
シェムリアップやプノンペンのレストラン経営者たちは、ディープディスカウントが一時的な利益をもたらす一方で、長期的にはレストラン業界全体とデリバリーアプリ自体の存続に悪影響を及ぼすと懸念している。これに対処するためには、デリバリーアプリ側とレストラン経営者が協議し、双方にとって利益となるガイドラインを策定する必要があるとの意見が挙げられている。
カンボジアには約3000のレストランがあり、その86%がプノンペンとシェムリアップに集中している。主要なデリバリーアプリであるNham 24、Grabfood、foodpandaなどはコメントを控えたが、Grabの幹部はディープディスカウントの問題を認識しつつも、業界が成熟することで双方が利益を得られる日が来ると楽観的な見解を示している。
レストラン業界はオンライン事業と店内利用をバランスよく成長させる必要があり、消費者と事業者の利益を両立する体制を構築することが求められている。