カンボジア随一の会計学校として名を馳せるCamEdビジネススクール。米国コロンビア大学でMBAを取得した創業者ケーシー・バーネット氏を含め、マサチューセッツ工科大学やロンドン経営大学院など、世界でも名だたる大学出身の教員が揃っているのが特徴だ。今でこそ大学卒業の学位も取得できる同校だが、その始まりは18年前、企業の小さな会議室からだった。
米国コロンビア大学でMBAを取得したエリートが、カンボジアに来た理由とは
カンボジアに来たのは1999年、当初2年間の滞在予定だったのがいつの間にか20年になります。コロンビア大学で法律を学びMBAを取得した私は、法律と経営という武器を手に、卒業後はニューヨークで銀行・投資顧問会社・ローファームに勤めていました。
しかし発展途上国での経験を付けたいと、カンボジアへの渡航を決意。カンボジアを選んだのは、シンプルに自分自身を成長させる機会だと思ったからです。これまで米国で育ち、ニューヨークで働いてきた私にとって、途上国で働く経験は、世界や社会をさらに深く理解するきっかけになると思いました。
中でもカンボジアは、歴史や文化が好きだったんです。そのためニューヨークにいた頃から、難民で来ていたカンボジア人の先生にクメール語を教わっていました。その甲斐あって、クメール語の読み書きができるようになり、後に外国人で唯一クメール語で書かれたカンボジア税法会計の試験をパスすることになります。
小さく始まったCamEdビジネススクールの軌跡について
来た当初は、どこかで業務経験を積んだのち、米国に戻ろうと思っていました。しかし当時は今と比べ物にならないほど危険だったため、働きたいと思えるような事業会社がなかったんです。英語を教えながら、世界銀行でカンボジア政府の資金調達を支援したり、欧州系の会社で開発プロジェクトの審査をしていました。
しかし、そんな生活を2年ほど続けていると、カンボジアに大きな可能性を感じるようになりました。法人向けにスタッフトレーニングの事業を立ち上げると、特に会計のスキルアップに対するニーズがあることが分かったんです。そこで始めたのが、スタッフの会計スキルを向上させるためのスクール。今のCamEdの始まりです。
その後は2003年に教育省の認可を受け、2007年にはACCA(英国勅許公認会計士)という国際資格を得られるプログラムを開講しました。2011年にはついに大学の学位を取得できる学校になり、年々質の高い授業を提供できています。これはスタートアップからたくさんの人と会い、アドバイスを受けながら知見を広げたおかげでしょう。
今でこそ大きな投資ができるようになりましたが、これまで銀行からの借り入れは行ったことはなく、全て利益を投資しています。スタートアップ当初も大きく投資することはせずに、小さく始めました。全ての会社には会議室がありますよね。会社へ行き、その会議室で会計を教えるところから始めたので投資が必要なかったんです。一歩ずつ、決して焦らないことを常に考えていました。
CamEdビジネススクールの大事にしているものとは
我々が教えているのは専門分野のため、特に大事にしていることは、質の高い先生たちの採用です。現在はマサチューセッツ工科大学で博士号を取得した先生や、ロンドン経営大学院の学位を持っている先生がいます。採用は主にプノンペン在住者の方にオファーしていますが、WEBサイトでも募集しているため世界中から問合せがありますね。
採用の際に気を付けていることは、現地で面接を行うということです。これまでもロシアだろうがイングランドだろうがプノンペンに来て貰いました。これはプノンペンを見て貰うためと、コミットメントを図るための2つの意図があります。私は先生たちに長くいて欲しいんです。そのため職場環境の良さを分かって欲しいですし、快適に住んで欲しい。Skypeのみで行っていたときは、結局来なかったり、思った場所と違うとすぐに帰ってしまいました。今のところ18年や10年など、在職歴の長い先生が多いのは嬉しいことですね。また、給与水準も母国と同じくらいの金額でオファーしています。同額であればカンボジアの方が、高い生活水準の暮らしが出来ますし、彼らのバリューも高まります。例えばアメリカに住むよりもよっぽどいい生活が出来ていると思いますよ(笑)。
また、カンボジア人でも学位を持った人を雇用しており、彼らにも十分なお給料を払っています。先生たちは専任で働いており、コミットメント力が旺盛です。個々のカリキュラムにおいて、綿密なフィードバックを繰り返し、質の底上げをしているため、価値のあるオリジナルなプログラムが提供できています。
進化する生徒自身とカリキュラムについて
カンボジア法やカンボジア税法など、理解を深めなければならない科目を除いて、ほとんどの授業は英語で行われます。生徒の英語レベルはこの15年で、10倍以上に向上しました。学生の50%は高校卒業後すぐに入学しているため、今の1年生は2000年生まれ。小さい頃から15年以上も英語教育を受けている世代です。ACCAのテストも英語で行われるため、非常に教えやすいですね。
またグーグルクラスルームやオンラインテスト、アカウンティングソフトなどを使用するため、入学時には自分のパソコンを準備して貰います。アカウンティングとITの融合が求められていますが、それも使いこなしていますね。
一方、義務教育に関しては教育のフォーマット化の必要性を感じます。例えば、9年生(日本の中学3年生)から10年生になるためのテストはとても簡単ですが、12年生(日本の高校3年生)を卒業する際のテストはとても難しく、30-40%が落第します。12年生まで勉強をしなかった生徒が、卒業の前だけ勉学に励むわけがないですよね。例えば国外からアドバイザーを招くなど、カリキュラム作成の時点でスタンダードをしっかり作るべきですね。
また教科書類は他の国に比べてまだレベルが低いです。予算は限られていますが、他国の教科書をクメール語に翻訳するなどして、さらに投資が必要だと思いますね。
TOP INTERVIEW トップが語る、カンボジアビジネス(2020/1月発刊11号より) すべてのスタッフを尊重し、全員に対して公平であるよう最善の努力をする(1/3) 2002年にカンボジアに創業したイエローツリー … [続きを読む]
特別レポート(2019/06発刊10号より) 観光の視点から考える対日本マーケット戦略(1/3) 2000年から現在まで、カンボジア観光客の増加状況 カンボジア首都プノンペンから国道5号線に沿って北西に約300キロメー … [続きを読む]
TOP INTERVIEW トップが語る、カンボジアビジネス(2019/6月発刊10号より) シンガポールのビジネスマンが、カンボジアでホテルを運営する理由(1/2) カンボジアの数あるホテルの中でも有数の人気を誇り、サ … [続きを読む]