米国がカンボジアからの輸入品に対して2025年8月1日より36%、ベトナムにも20%の関税を課す方針を示したことに対し、業界関係者からは輸出産業への深刻な影響を懸念する声が相次いでいる。
これにより、特に縫製・繊維・履物・旅行用品セクターにおいて、米国市場への輸出依存度が高いカンボジアでは深刻な影響が懸念されている。これまでカンボジア製品は米国市場で関税優遇を受けており、実質的に0%の関税で輸出可能であった。今回の措置により、関税率は一気に36%へと引き上げられることになる。
加えて、今回の措置における影響を測る上で重要なのが、両国の最低賃金水準である。
カンボジアにおける2025年時点の縫製業労働者の実質最低賃金は月額236米ドル(基本給204ドルに加え、法定手当を含めた金額)。一方、ベトナムでは、ホーチミン市やビンズオン省といった中華系縫製工場の集積地における地域1最低賃金は月額4,680,000ドン(約184米ドル)であり、実質的な手当込みの総額も200ドル前後とされる。
カンボジアの実質最低賃金はベトナムを上回っており、労務コスト面での負担は相対的に大きい。加えて、ベトナムの方が工場の稼働率・熟練労働者比率・電力インフラなどの点で優れている中で、ベトナムはカンボジアより関税負担が軽減されている点が浮き彫りになった。
繊維・衣料・履物・旅行用品協会(TAFTAC)副会長でカンボジア縫製研修所所長のロバート・ファン氏は「この措置は明確に影響を与える。企業としては選択肢が少なく、輸出は15〜30%の減少が予想される」と述べた。その上で、「このまま耐えることはできず、政府にはベトナム並みの関税水準を目指して早急に交渉してほしい」と訴えた。
カンボジアに長年投資してきた米国人投資家からは、「36%は依然として高く、製造業からの撤退リスクがある。ベトナムへ流れる可能性もある」と懸念が示された。