カンボジアに進出する日系企業のための
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CDC Sok Chenda大臣 インタビュー
(2016/5発刊4号より)

ソク・チェンダ大臣写真
 

首相付大臣兼カンボジア開発評議会(CDC)事務局長、
ソク・チェンダ大臣が語る

日本人投資家に寄せる期待

 

安定成長が見込める産業構造に転換したいなら日本の存在が必要になる

―――カンボジアは高度経済成長を維持していますが、現状をどのように感じていますか

 カンボジアには年間平均7億から8億ドルが投資されています。良い点は、私たちの活動を多様化できるようになり始めたことです。伝統的にカンボジアは縫製業・農業・不動産業・観光業への投資があります。これらが4つの柱です。

 しかし少し心配すべきことがあります。縫製業と観光業はたくさんの雇用を生み出すため非常に大切ですが、これは外的環境が主体です。もしカンボジアの外で何か変化があれば、これらの産業に影響を及ぼします。観光業で言えば、SARDSやH1N1が流行した時、この地域ではバンコクの空港が閉鎖されました。何かが起こった時、不可抗力によって活動を遮断してしまうのです。

 また、カンボジアの縫製業は輸出向けです。もし欧州市場に輸出していて、欧州経済が停滞すれば彼らは買わなくなります。以前、アメリカの経済が減退した際、そのようになりました。ですから、外的なことに依存せず、カンボジアがもっと安定的な成長が見込める産業構造に転換したい思ったとき、私たちは日本の存在に期待するのです。

日本はASEAN各国の成長に多大なる貢献をしてきた

―――日本からの投資に他の外国とは違う点で何を期待されておりますか?

 今年の1月からASEAN経済共同体(AEC)が発足しました。私たちも外国人投資家にばかり頼らず、ASEAN諸国の政府と話し合い、投資しやすい環境をいかに用意するかなどの努力をしています。しかし、雇用創出や産業開発という点では外国資本に頼らざるを得ません。私は最も重要な民間セクターは日系企業だと思っています。

 日本はASEAN10か国の全てに進出しています。そしてAECとは、さらなる接続性を意味します。道路などハード面だけでなく、手続きの調和や関税形式のようなソフト面の接続性です。接続性の向上によって日系企業はこの地域を縦横無尽に移動できるようになります。ゆえに日本の直接投資(FDI)はカンボジアだけではなくASEAN全体で非常に重要です。

日本のメンタリティー、働き方をカンボジアの労働者に伝えてほしい

 日本企業に期待することはたくさんありますし、その分、私たちも日系企業に納得してもらえるよう努めます。少なくともカンボジアに見に来てもらえるように。なぜならカンボジアはイメージがよくありません。カンボジアに来る前、本や新聞、学校でカンボジアのことを知ったでしょう?

 しかしカンボジアのイメージ、貧しい国であるとかそういうことは、カンボジアについた後、驚きに替わると私は確信しています。思い描いていたカンボジアとは明らかに違うでしょう。潜在的な投資家に納得してほしい。ビジネスのためではなく、彼らに本当のカンボジアを発見してもらいたい。一度カンボジアを訪れれば、真実を見るでしょう。そして潜在的な投資家が、本当の投資家になることを願っています。

 日本のFDIに期待することは、本当にたくさんあります。ひとつは雇用の創出です。カンボジアの若い人たちに職が必要です。しかしこれに加えて私が本当に期待していることは、日本のメンタリティー、日本のビジネスのやり方です。ビジネスの倫理です。だから日系企業がカンボジアに進出して、工場を持ったとき、日本の管理職の人には、日本の働き方をカンボジアの労働者に伝えてほしいです。

最貧国という逆境をプラスに変えたカンボジアの利点

―――他のASEAN諸国と比較してカンボジアに進出する利点は何でしょうか?

 非常に大きな利点は、カンボジアはユニークである、つまりこの地域で最も開かれた経済であるという点です。外国人投資家が100パーセントの資本を保有できます。カンボジアのパートナーを持つ必要はありません。金融業や通信業などでさえもカンボジアでは開かれています。

 そして次に大きい利点は、カンボジアには若い労働力が豊富にあると言う点。人口ピラミッドを見てみると、人口約1,500万人のうち63パーセントが30歳以下です。9百万人以上が30歳以下なのです。今後20年、30年間は若い労働力に溢れているでしょう。これは大事な点です。

 例えば、タイには若い労働力を求めて多くの日系企業が進出しましたが、現在は高齢化問題が課題となっていて、労働力不足に悩まされ始めています。これがタイのある企業の幾つかがカンボジアに拠点を移している理由です。

 他には、カンボジアは世界の貧しい国50か国のうちに入ります。後発開発途上国と言いますね。残念ながら。しかしこの状況は、私たちに特別な機会を与えました。例えばカンボジアで作られた製品はEUの市場に対し、関税を払うことなく製品を輸出できます。

 わかりやすい例を出しましょう。あなたがもしベトナムに生産拠点を持つ日本企業だとしましょう。ベトナムの市場は大きいですね。人口約9千万人の規模ですから。しかし製品を輸出したいと思ったときには関税を払わなければなりません。ところが、カンボジアに来れば、AECによりカンボジアで生産したものをベトナム市場で売ることができますし、関税はありません。EUに対しても、関税を払うことなく輸出できるんです。

 あなたがもしカンボジアに来た投資家だったら、AECがなければカンボジアは1,500万人の市場です。しかしAECがあることにより、投資をする国がカンボジアでも、あなたが考えるのは6億3,000万人の市場なのです。

私たちは課題を減らさなければならない

―――日系企業への何かサポートは考えていますか?

 政府は、すべての投資家の事業をファシリテートしたいと思っており、日系企業に対して動的メカニズムを設置しました。官民合同会議と呼ばれます。日本国大使、カンボジア日本人商工会、JICA、JETROなど、20から50人の日本のビジネスマンが参加します。カンボジア側は、私を始めとする関係機関、金融業や農業など各産業を所管する省庁の上位職が参加します。私たちは日本側が抱える課題を完全に克服することができなくとも、それを少なくする努力をしてきました。

―――これまで日本側はどんな問題を抱えていましたか?
 彼らが私たちに伝えてきたことを繰り返すならば、3つの大きな課題があります。一つ目は、カンボジアの電気代が高いということ。二つ目は、もっとスキルを持った労働力が欲しいということ。三つ目は、行政手続きを減らしてほしいということ。これらの課題はすべての開発途上国が辿る道でもありますが、私たちは課題を減らさなければなりません。

カンボジアの公務員はAECが試練も運んでくることを知っておくべき

―――それらの問題を解決するための政府の計画はどんなものですか?

 たくさんの手段がありますが、最初に言いたいのは、AECの利益を享受できるようカンボジアに準備させてほしいということです。政府は策定した産業開発政策(IDP)を実行していく必要があります。そこには各省庁が何をなすべきかが定められています。

 ではCDCは何をするべきなのか。私たちには私たちの課題があります。例えば、電気のこと。私たちは産業目的のための電気価格を下げ、質を高めるための方法を見つけることです。また、ワーカーのための技能訓練などです。このように自分たちの課題を認識し手段を講じる必要があります。

 また、私たちカンボジアの公務員は、AECが試練も運んでくることを知っておくべきです。試練とは競争が激化することです。もし後れを取りたくなければ、離されたくなければ、私たちは行政サービスをもっと向上させなければいけません。

 例えば、多くの日本企業は2年前からミャンマーにも進出し始めました。もし日本のビジネスマンにミャンマーへ行ってほしくなければ、私たちがカンボジアを魅力的なものに変えていかなければなりません。もし日系企業が来ないのなら、それはミャンマーのせいではなく、私たちのせいです。つまり、あとは私たち次第なのです。

今度はカンボジアにビジネスでお金を稼ぐために来てほしい

―――日系企業へのメッセージをお願いします。

 まずカンボジアを見に来てください。日本の人たちはカンボジアのことを知りません。カンボジアに来て、ようやく閉じていた目が開いた程度です。そして、その目で見えた景色に日本人は興味を持つはずです。

 また、私たちカンボジアの人々は日本の20年以上にわたるODAを非常に感謝しています。日本は1992年から、カンボジアを最も助けてくれた国の一つです。現在、カンボジアは歩み始めています。まだ若いですが、赤ん坊ではありません。これまで日本はカンボジアを助けてくれましたから、今度はカンボジアにビジネスでお金を稼ぐために来てください。これはフェアです。それ以上言うことはありません。


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