カンボジアにおけるノンバンク金融サービスの監督機関(Non-Bank Financial Services Authority=NBFSA)に属する会計監査規制局(ACAR)は、シアヌークビル特別経済区(SEZs)内の企業や非営利団体に対し、強固で透明性の高い、信頼できる会計文化を確立するよう呼びかけた。これは行政罰の回避を目的としたものである。
2025年3月18日、シアヌークビル州で「会計・監査義務および関連規制」をテーマにしたセミナーが開催され、ACARのボウ・タリン局長が主宰した。
同氏は、「ACARとしてはSEZ内の企業や非営利団体に対し行政罰を課したくはない」と述べた上で、「我々は彼らが堅牢で透明性があり、信頼できる会計システムの構築に積極的に貢献することを奨励する」と発言した。
しかし、こうしたメッセージをあえて当局が発信する背景には、制度設計そのものが会計サービス市場の活性化や罰金収入の確保を目的としているのではないかと勘ぐられても仕方ない構造がある。
実際、ACARの規定と罰則は、上場企業や大規模法人が通常行う監査水準の報告義務を、中規模納税者にまで広く求めており、財務諸表の監査未実施や会計帳簿の不備だけで数百〜数千ドル規模の罰金が科される。一度の違反であっても罰則は厳しく、繰り返せば経営を圧迫しかねない。
さらに、違反に対して改善の余地を与えず、即ペナルティという印象が強く、義務内容と企業規模のミスマッチは明白である。他国と比較しても、カンボジアの中規模納税者に対する会計・監査要件および罰則規定は厳格であり、企業にとって大きな負担となるリスクが存在している。特に、監査にかかる会計事務所への依頼費用や人的リソースの確保が難しい層にまで求められている点は見過ごせない。
例えば、ベトナムでは全ての企業に一律の監査義務が課されているのに対し、カンボジアでは企業規模に応じた要件が設けられているものの、中規模企業に対する要求水準が高く、罰則も厳しい傾向にある。
法人設立がオンライン化の推進により以前より簡便になっているにもかかわらず、新規法人件数が減少している要因の一つとして、こうしたリスクも挙げられよう。