2016年はカンボジアにとって変化の序章となりそうだ。世界的な変化だけではなく、圏域の経済動向にも影響を受けそうだとカンボジア中央銀行(NBC)は毎年末公表される定点報告書で見通しを発表した。
NBCの2015年版 Macroeconomic Development and Prospect報告書によると昨年の米国の堅調な成長と中国や欧州の経済の低迷が明らかになっている。さらに圏域内の競争の激化により、今後のカンボジアの耐性が問われるのではないかとしている。米国は2016年もFFレートの引き上げを続ける予定であり、これにより新興国経済に何らかの影響を与えるのではないかと見ている。
米国内の金利上昇により、投資家に対する海外ドル市場の魅力低下だけではなくドルが強まるにつれカンボジアにおけるドルベース輸出の競争力も鈍化するのではないかとNBCは指摘する。カンボジアにとっては最大の貿易相手国及び外国直接投資先となっている中国と欧州経済の伸び悩みが懸念事項となっているが、周辺圏域の競争力の高まりが新たな課題になるのではないかとも指摘している。
縫製業における最低賃金の上昇、TPPの発足による競争力の激化、ベトナムとEU間で締結されたFTA、ミャンマーにおける経済の自由化等、カンボジアに少なからず影響を与えかねないと報告書で公表された。ANZロイヤル銀行のグラン・ナッキー氏は先に述べられたような事例は既に2015年から影響を及ぼしており、今後もマクロ経済の予想変動に対応できる長期的な弾力性を備えていくべきだと指摘する。「NBCが指摘するファクターは2016年以降カンボジアにとって課題となるであろう、既に競争の激化や圏域の成長率の鈍化などで地元の営業活動に影響が出ている。しかし長期的な展望を元に根本的な改革により持続可能な競争力を目指すべきだ」とも述べた。
グローバルマクロ経済の数々の課題にも関わらず、NBCによるとカンボジアは2016年も堅調な成長を続けるのではないかと見ている。報告書では金融市場のリスク時における流動性を向上させる手段、人材開発のノウハウ、特に経済・金融データ分野における銀行サービスの改善が不可欠だとしている。
NBCの数々の政策と2015年、2016年のGDP成長率6.9%にもかかわらず、2016年は苦難の年になるのではないかと世界銀行の専務デイビット・ヴァン氏は予測を立てるとともに、「我々は世界的な金融危機の可能性も覚悟するべきで、多くの専門家予想では中国経済の失速、ブラジルの経済危機等不安要素は多いです」と語った。ヴァン氏は何よりも近隣国が市場自由化に向け動く中で、カンボジアのローカルビジネスが経済統合した時に起こりうる競争に太刀打ちできるのかが気になると指摘する。「AECが公式に発足したにもかかわらず、カンボジアはまだまだ準備不足だと思います。2016年は厳しい年になるでしょうから、様々な外部要因から身を守ってほしいと思います」と述べた。
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