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業界別インタビュー

2016年12月19日

正しい知識を持った専門家に意見を聞くことが大事[法務・税務・会計] 坂本征大

法務・税務・会計

辻・本郷税理士法人 カンボジア・プノンペン支部
代表取締役(左) ダイレクター(右): 坂本征大 Sakamoto Yukihiro(左) 菊島陽子 Kikushima Yoko(右)
日本語対応を重視して、カンボジアと日本の双方の規制に対応した、会計や税務を始めとする様々な支援サービスを提供している辻・本郷税理士法人のカンボジア現地法人。会計士の坂本氏と菊島氏に、最近のトピックスや留意点を伺った。(取材日/2016年10月)
生産性の低さを改善しなければ国際競争力が低下し、カンボジアに投資するメリットが薄れていく

―――今年の5月に租税条約をシンガポールと結んだようですが、詳しく教えてください

坂本 征大(以下、坂本) 2016年5月にカンボジアとシンガポールは両国間における租税条約に署名しました。カンボジアではそれまでいずれの国とも租税条約を結んでいなかったため、カンボジアにとっては初の租税条約調印となりました。しかし未だ批准していないため、本租税条約は有効とはなっておりません。

 租税条約が有効になった場合、カンボジアからシンガポールへ支払う配当や利息などの源泉税が通常の14%から10%に減税される、両国間における所得税の二重課税が回避されるなど、対シンガポールビジネスにおいて税務上のメリットが出てきます。今後、日本からの投資も、シンガポール拠点を絡めるなど投資スキームを工夫することで租税条約の恩恵を享受することが可能になりますね。

―――最低賃金も上昇するようですね

坂本 2017年1月1日から縫製業に適用される最低賃金は153USDに決定しました。昨年度と比較して9.3%の増加となりました。隣国であるベトナムでは、2017年度の最低賃金を対2016年度7.3%上昇を決定していますが、それ以上の上昇率であり、153USDはベトナムの第二地域を上回る賃金額となります。

 賃金が上がる一方で、以前から問題視されているカンボジアにおける生産性の低さを改善しなければ国の国際競争力が低下し、カンボジアに投資するメリットが薄れていくことが懸念されます。

教育事業に対する一部税の免除、ミニマム税撤廃の可能性

―――教育事業に対する税務インセンティブも導入されるようですね

菊島 陽子(以下、菊島) はい、2016年8月、カンボジア経済財政省は教育事業に適用する税務上のインセンティブにかかるPrakasを公布しました。教育事業にかかる事業者は2018年度末までミニマム税、前払法人税の免税、また教育サービスの提供に直接関わり発生する源泉税等が免除されます。

―――今後の税制変更の可能性はありますか

坂本 ミニマム税撤廃の可能性があります。現在、税務総局は収益に対して1%課税されるミニマム税の制度を一定の条件で撤廃することを検討しています。ミニマム税があるために、当期利益が出ていない赤字企業も収益が発生していれば納税義務があり、企業にとって負担になっていましたが、撤廃されればキャッシュフローや収益に対して大きな影響を与えることになり、撤廃が期待されます。

年次申告制度が未整備なカンボジアの税務上の問題点

―――カンボジアでの税務上の問題点を教えて下さい

坂本 申告制度の未整備による課税リスクがあります。

 源泉徴収税は規定の税率を差し引いて残りをサプライヤー(サービス提供側)に支払い、納税する税金になります。一方サービス提供側は差し引かれた税金が年次申告の際に法人税と相殺されますので、源泉税はサプライヤーにとって収益を圧迫する税金にはなりません。

 ただ実務上、トゥクトゥクや個人業者のサプライヤーが実態に基づいて申告、納税していることはないためサービス料から源泉することは難しくなります。そのため源泉税が全て消費者(納税者)側の負担となってしまいます。この場合は納税者側にとっては源泉できずに納めているため、源泉漏れのような形になるので経費計上もできなくなり、法人税計算上も不利になります。

 サービス提供者が負担しなければならない税金にも関わらず、納税義務そのものはサービスを受ける側にあるため、消費者(納税者)側が税務上不利な状況にならざるを得ないことが申告制度の未整備なカンボジアの現状です。

VATインボイス未発行なら源泉徴収の対象に

―――VATインボイスの不備による課税リスクとはどのようなものでしょうか

菊島 税法上は、個人(VAT非登録者)から受けた役務提供の対価に対して15%の源泉徴収義務、とありますが、サービス提供側がVAT登録者であるにもかかわらず、VATインボイスが未発行の場合、源泉税を求められることになります。

 この点については源泉徴収不要な要件としてVATインボイスが備わっていなければ認められないとする明確な規定はなく、税法上は「個人への支払は15%」とされておりますので、サービス提供側が法人である場合、個人でないことは請求書の内容からも明確なため、源泉徴収の義務はないと考えられます。

 一方、サービス提供側が法人であることを主張する場合、正しい証拠書類を用意する必要があり、この場合VATインボイスがあたります。ない場合は法人という証明ができない、即ち個人と看做され源泉徴収の義務が発生することになります。そのためVATインボイスが備わっていない場合、消費者側はVATの税額控除が認められないだけではなく、源泉税も納めざるを得なくなり、おまけに経費計上できずに法人税計算上も不利になるという税務上のリスクをおうことになります。

 カンボジアの税務の問題点については、対応が難しい部分がありますので、正しい知識を持った専門家に意見を聞くことが大事になります。(取材日/2016年10月)


辻・本郷税理士法人 カンボジア・プノンペン支部
事業内容:会計、税務
URL: http://www.ht-tax.or.jp/corporate/branch_oversea/cambodia/
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