2014年1月30日
辻・本郷税理士法人は、独立系の会計事務所として日本国内に37拠点があり、グループ会社を合わせて、約750名体制でサービスを提供しています。海外にはカンボジア以外では、アメリカ、中国にも拠点があります。
弊社の特長は2つあり、1つ目は、カンボジアと日本双方の規制を考慮した、コンプライアンス対応とコンプライアンスコスト低減のサポートができる点です。私たちは独立系では数少ない、日本で大きなネットワークを構築している会計事務所で、地方に本社を有するお客様についても、日本側のサポートが可能です。カンボジア進出の過程の中で起こる様々な税に関するご相談について、カンボジアの拠点と日本の拠点双方からのバックアップ体制を整えております。
2つ目は、日本語対応を重視している点です。他の事務所においても、常駐日本人スタッフにより、日本人顧客との間でカスタマーリレーション業務を行っているところがありますが、当該業務の全てを極少数の日本人によって依存している場合、顧客の増加により問い合わせが集中し、肝心な時に連絡がつかないなど、円滑なカスタマーリレーションができない場合も想定されます。
私たちの場合、日本人スタッフが複数名いるだけでなく、日本語を解するカンボジア人税務スタッフが複数名おります。日本語学校を卒業した者や、日本での留学経験のあるスタッフに対して、社内にて会計・税務知識を付けるための育成に力を入れております。お客様がバイリンガルでもない限り、英語による会計処理には何かとストレスを感じることが多いなかで、カスタマーリレーションシップをより円滑にするための努力は惜しんでおりません。
カンボジアという国は何に関してもハードルが低いという印象からか、税金に対しても同じように捉える方がいらっしゃいます。しかし、投資額が高額になれば尚更のことですが、スタートアップの時点から会計事務所によるサポートにより会計・税務面の体制構築をしっかりと行うことが、後々のビジネスをよりスムーズに進めるポイントになってきます。
例えば、税務調査において、規定は存在しているにも関わらず、今まで運用されず、指摘がなされなかったものが、突然運用し指摘してくる場合もあります。今更それを指摘されても、という話なのですが、税務署は最長10年まで遡って是正を命令することができますし、こちらも資料を全て保存しておく必要があるのですが、インパクトは小さくありません。基本的には前回の税務調査以降からが調査対象となるのですが、そのとおりになる保証は何もありません。
税務職員の質にも問題があるのです。調査の際に指摘に対する根拠規定を示さない、更正を求める際の税額計算が誤っている等とお粗末な状態です。また、税法の全てが誰にもアクセス可能な状況になく、GDT(租税総局)やMoEF(経済財政省)のWEBサイトにも税法の全てが公表されていないため、納税者側からは税法自体を確認しづらい状況にあり、税務署からの指摘に根拠規定があるか否やは一般の方では判断が難しいと思います。税務調査には、こちら側が申告時からしっかりした対応をしていれば怖くはありませんが、それでもスタートアップの段階から対策を講じていなければ、税務署への反論のしようも無くなってしまいます。
調査の際には私自身が現場に行くことが多いですが、税務署の対応には未だ驚かされます。
例えば、取締役の変更の場合には、株の譲渡などと違って、登録税がかからない規定のはずですが、税務署の担当職員が規定を理解しておらず、全く譲らなかったことがあります。こちらも執拗に説明すると、その職員は上司に確認する必要があると言い、あろうことか、私たちに資料を作らせ、そのうえ上司に説明しろと指示してきました。規定を読めばわかることですし、上司への確認行為は内部でやるべきですが、常識が通じません。賄賂が欲しいのかと言えば、そうでもない様子で、意図がわかりませんでした。
また、税務署の職員には商業省での手続きをあまり知らない方が多いかもしれません。
例えば、登記変更などは商業省の所管業務ですが、税務署への手続きの際に、この辺りの関連書類の提出を求められます。支店登記の場合は定款が無いことを知らずに、税務署の職員は定款があるはずだから出せとの一点張りでした。この時は丁寧に説明して何とか納得してもらえましたが、思いもよらぬ手間がかかる事が往々にしてあります。
ちなみに、税務署の賄賂はだいぶ改善されていると思います。本人ではなく上司に言われてやっているのか、自分が欲しいから賄賂を要求するというケースは少なくなっている印象です。(取材日/2014年7月)