―――まず自己紹介をお願いいたします。
坂本征大(以下、坂本) 2013年7月に辻・本郷税理士法人へ入社しました。2011年にプノンペン現地法人が設立されまして、その後2013年12月に、辻・本郷税理士法人カンボジア支部へ赴任となりました。2016年1月からは、代表取締役です。
菊島陽子(以下、菊島) 私は2015年に辻・本郷税理士法人に入社して、カンボジア支部赴任になりました。その前は、2001年から地方銀行、2010年からはベトナムにある日系の会計事務所で働いていました。今は弊社カンボジア支部のダイレクターです。
―――強みやサービス内容など、御社について教えてください。
坂本 辻・本郷税理士法人には、これまで日本全国の50拠点で、10,000社を超えるお客様のご支援をしてきた豊富な経験と実績があります。2011年1月にカンボジア・プノンペンに現地法人を設立し、会計・税務を始めとするコンプライアンス支援、事業運営支援サービスを開始しました。日本語対応を重視し、カンボジア・日本双方に対応したサービスを提供しています。
―――最近の税務を取り巻く環境について、特筆すべきことはなんでしょう。
菊島 2015年10月以降、税務にかかる法改正や変更点の大きなトピックとしては、
①申告課税制度の変更
②パテント税額の変更
③インボイスの発行のルール変更
が挙げられます。
まず申告課税制度の変更についてですが、2015年12月17日に公布された「The Law on Financial Management 2016(2016年度財政法)」により、従前、個人事業主に対して認められていた推定課税様式(Estimated Regime)が廃止されました。カンボジアでは、それまで推定課税方式、実態管理課税様式(Real Regime)、簡易管理課税様式(Simplified Regime)の3つの課税制度が定められていましたが、今回の法改正により推定課税様式が廃止され、個人事業主に対しても一般企業と同じように実態管理課税様式による税務申告が必要となりました。
菊島 従来、パテント税は1,140,000リエル(約285USドル)で一律の金額で設定されていましたが、この度の改正により、会社の事業規模に応じたパテント税を納税することになりました。結果として、多くの外資企業は税額負担が増加しました。
パテント税区分は以下の通り。
1-小規模納税者(一定の事業規模に満たない実態管理様式納税者): 400,000リエル(約100USドル)
2- 中規模納税者(地方税務署管轄の実態管理様式納税者): 1,200,000リエル(約300USドル)
3- 大規模納税者(租税総局管轄の実態管理様式納税者):
a- 売上高2,000百万リエル超10,000百万リエル: 3,000,000リエル(約750USドル)
b- 売上高10,000百万リエル超: 5,000,000リエル(約1,250USドル)
菊島 2016年1月26日に税務総局より公布されたNotification No.1127において、インボイスの発行に関するルールの変更がありました。従来からのインボイス発行にかかるガイダンスに、新たに、発行するインボイスはクメール語と英語による併記であること、また英語はクメール語の下に記載する旨が追加されました。
なお、Notificationでは施行日が明記しておらず、いつから新しいルールを適用してインボイスを発行するべきかはっきりしていません。また、インボイスを受け取る側としても、各サプライヤーに新しいルールを適用したインボイスを受け取るようにしなければなりませんが、全てのサプライヤーに応じてもらえるとは限らず、応じてもらえない場合、インボイスの形式が適切ではないとのことで将来的に法人税上損金不算入となるリスクも考えられます。
とある税務ワーキンググループが税務総局に対してNotification施行の延期を求める要求を提出したとの話もあり、今後の税務総局のアクションに期待したいです。(取材日/2016年4月)(次回へ続く)