2016年12月30日
――ご自身の経歴について教えてください
ケビン・ブリテン(以下、ブリテン) カンボジアに来て10年になりますが、その前はスーダン、キプロス、スペイン、フランスなどで人を教えたり、リクルーターをしたり、旅をしたりしていました。その時ブルネイ政府から良い契約条件をもらえたので、28歳の頃にブルネイ教育省で働き始めました。そこで英語教育に17年間携わり、ブルネイの女性と結婚しましたが、その後エンジニア企業へ移りました。その会社が私をここカンボジアに送り出したのです。
こちらに来てから私は会社を辞め、自分で起業しました。というわけで、私は自分の人生全てとは言わないまでもほとんどで、人材・教育・職業訓練に、つまり人間に関わってきました。こういうビジネスは、基本的に「人間ビジネス(people business)」です。
―― トップリクルートメントの特徴について教えてください。他社と違うところは何ですか
ブリテン 第一は、サービスレベルです。弊社は、クライアントに対してスタンダードなサービスを提供することに非常に注力しています。つまり、スピードのある仕事をする人材や、求められたプロセス全てを完璧にこなす人材を提供するなどです。スタンダードは求職者にも及びます。彼らが基準に沿った書類を完成させられなければ、ご紹介はしません。私たちは従うべきスタンダードを持ち、サービスの質を維持させています。
つまり、我々は他社と違うよりモダンな基準でお応えしているということです。というのは、我々はリクルートをセールス(売り物)ではなくマーケティングとして捉えています。日々、毎分毎秒、私たちは自分の評価を気にしていますよね。自分のブランドをマーケティングすることや管理することは、行動のすべてに組み込まれています。
皆さんと同様に、私たちも考えています。できる限りのことをしてクライアントの期待に応えることは、私たちなりのマーケティングです。わが社の行動基準を形作る最も重要なファクターだと思います。古い考え方の会社もありますが、そういったところはリクルートをセールス(売り物)として捉えているため、売り上げのことばかり考えています。
第二に、我々は人材をリクルートし、そして送り込むという2つのことしかしていません。これが他社と違うところです。家の水道管の調子が悪くなった時に水道屋を呼ぶと思いますが、電気がつかないときに水道屋を呼びませんね。それと同じで、各分野の専門家を使うということは人材紹介においても同様に重要です。だから「トップリクルートメント」という名を掲げ、専門性とプロフェッショナリズムを打ち出しています。
―― トップリクルートメントはどのくらいのレベルから人材を取り扱っているのですか
ブリテン 300ドル以上のオフィサーレベル(経験あり)の人材です。300ドル未満の月給レベルではショップのセールス人材になりますので、人材派遣事業で取り扱っています。
――現在の人材業界について教えてください
ブリテン とてもホットです。2016年は2015年よりも忙しくなっています。我々のおよそ40%の仕事がインバウンドのスタートアップの会社からの依頼ですが、今年は最終的にもっと多くなるでしょう。非常に多くのクライアントが、より多くの採用者を求めて我々のもとに戻ってきています。また、ベトナムやマレーシア、シンガポール、タイなどの地域からの会社がいまだに多くカンボジアに参入してきています。
プロフェッショナルや技術のある労働者、そして特に営業人材の市場はとてもホットです。良い人材は前の職場でどのくらい貢献したか、どんなパフォーマンスができるかを語れますから、もし人材が欲しいならなぜ自分の会社に来るべきかを説明して説得する必要があります。こういった人材はすでに良いパフォーマンスができるので、良い条件を提示したりして魅了しなければなりません。賢い雇用主は、こういった人材を獲得できます。スタンダードを求め、法律に沿って会社を運営し、成長と発展を求めて働く雇用主のことです。ということで、2016年のカンボジアの人材市場は需要の面で、前年よりも強くなっています。
スキルの面では職業訓練・技術訓練の不足により、スキル人材不足の困難に直面し続けています。ITスキルではなく、エンジニアリングスキルのことです。あらゆる分野のエンジニアが不足しており、よりクオリティが高く、より幅広いエンジニアスキル人材が必要です。
学校に通うカンボジアの子供たちには、エンジニアコースに進んでほしいですね。しかし現在、子供たちはエンジニアコースのことなど聞きもしなければ、国家経済がエンジニアを必要としているとも考えていません。生産工学, 機械工学, どの分野のエンジニアももっと必要です。今エンジニアリングを勉強した子供は、必ず将来的に仕事を得るでしょう。
構造的な問題でいえば、カンボジアにはエンジニアの学校がありません。日本がカンボジアを非常によく支援しているのは知っていますが、エンジニア分野での職業・技術訓練に関するイニシアチブも考慮に入れるべきです。今はそうでないかも知れませんが、多くの日系企業が今後再びカンボジアに進出してくる時、生産工学を理解できる者やプロセス工学を理解できる者など、日系企業はエンジニアを必要とするでしょう?カンボジアと日本にとっては、この分野に目を向けることは考慮に入れて然るべきです。奨学金制度でも日本はカンボジアを支援していますから、エンジニア分野も日本で教えてはいかがでしょうか。
現在、技術職支援には垂直的な取り組みがあります。例えば、カンボジアの為に私財を投じてどこかに病院を設立するなどです。しかし、必要なのは国全体に影響を与えられるような水平的な取り組みです。例えば、政府に働きかけて全国の病院に良質な設備を導入したり、職員にその使用方法をレクチャーしたりなどです。一部を完璧にするのでは、水平的な取り組みとは言えません。(取材日2016年7月)
(次回へ続く)