(前編からの続き)
――マイクロファイナンス業界について教えてください。
永田 マイクロファイナンス業界は、中央銀行の認可機関と、NGOなどが行っている中郷銀行が認可していないものの2種類があります。まず、中央銀行のマイクロファイナンス認可機関は全体で30行強近くあります。マイクロファイナンス機関は言葉の通り、商業銀行が相手をする大手ではなく、中小企業家や個人に対する融資をするものです。
ただし、ここはローンのレンジが多岐に渡っていて、プラサック、アムレット、サタパナ(※各々マイクロファイナンス機関の一つ)などは農村地にも貸していて、平均すると500~2000ドル位です。これこそマイクロファイナンス(※小口融資)だと思いますが、我々は25000~30000ドル位のレンジです。決してマイクロとは言われず、中小企業金融になります。
私は差別化をしなければいけないと思い、調べましたが、500~6000ドルくらいローン融資を行うマイクロファイナンスをする機関が大半でした。その中でもレンジが1000ドル以下と、1000ドル以上6000ドルの間に分かれるのですが、我々のように10000ドルから10万ドルのレンジでやっているマイクロファイナンスは少数行しかありませんでしたので、我々は当該レンジの融資を対象とした御客様を中心に営業活動を行って居ります。
――どのようなところがお金を借りてくるのですか?
永田 ほとんどは中小企業のオーナーで、自宅や会社の土地を担保にして融資します。事業活動のための融資です。弊社は全国で6支店ありますが、プノンペンとシェムリアップが中心です。だいたい商業銀行が融資されているところは、大手やプノンペンの中心街ですが、我々はプノンペンの郊外に顧客が多いです。
業界の問題として無免許での融資活動を行っている融資機関(闇金融)の問題があげられます。中央銀行認可機関ですと、毎月レポートを提出するのですが、法による金利上限は無いものの、中央銀行からの指導が入ります。しかし、一部の闇金融機関など、暴利をむさぼる為、高い金利をお客様に要求し、社会問題化させてしまって居ります。その影響により、業界全体が一色単にされ、マイクロファイナンス機関全体が暴利を貪る悪徳機関としてお客様に認識されてしまうリスクが生じてしまってます。
マイクロファイナンス業界は、毎年のように貸出残高が対前年比で約3割づつ増加してきています。借り手も又、預金者も増えてきています。商業銀行は大手には貸しますが、小さい単位の個人にはあまり貸しません。それから、ほとんどのマイクロファイナンス機関は小口融資が大半です。一方、私たちが対象にしているお客様(中小企業家SME)は、融資単位が10000ドル~50000ドルの方が多く、これまで金融機関から借りたことが無い方が多く、資金需要が旺盛です。国を経済発展させる為には、SMEの方々の貢献が不可欠で、我々は、この層を中心に、かつ、迅速な資金手当てを行っております。
――多重債務の問題を防止するため、日本のように金融機関の貸し手の情報を共有するようなことはしているのか?
永田 その機関はありますし、我々もメンバーです。中央銀行認可機関は必ず入らなければならないのです。信用情報の一括管理は政府も絡んだ機関であり、そこに会員として所属して、全情報を流しています。融資する時には、必ずそこで確認したうえで融資しています。ただし、このシステムができたのは約2年前なので、残念ながら、未だ十分な情報が蓄積されていないのが現状です。
――抵当を偽る方に対しては?
永田 我々が恐れていることです。一般個人の方では難しい事ですが、我々はお役所とのパイプがあるので、行政に直接確認することができます。事前にきちんとチェックし、抵当権も設定したうえで融資しています。また、ソフトタイトルでも融資をしています。ソフトタイトルの場合は、非常に注意しています。ソフトタイトルは区や村に確認していますが、その場所が将来的にセットバックされる危険性を調べて、低い掛目で融資しています。これはレポートを提出しているので、中央銀行も知っていることですが、我々は過去4年強やっていますが担保とって融資したもので不良債権化(未回収となったローン債権)したものは1件もありません。もちろん、遅延債権は出ていますが、任意売却により完済してもらって居ります。
――今後の抱負をお願いします。
永田 金融全体として、経済発展の過程で金融機関は大きな役割を担っています。カンボジアはこれからも益々発展すると信じています。我々は心臓の役割として、血液ともいえる資金を提供する役目として重責を担っていると思っているので、その責務を全うしていきたいです。商業銀行とマイクロファイナンス機関のそれぞれの役割の中で、我々は中小企業の発展に貢献したいと思います。日本の9割は中小企業が占める、大きな技術力を持っており、大企業がそれを活用することで日本経済が伸びてきました。我々としても、中小企業がカンボジアの発展のために何をすべきかを考えていてやっていきたいです。
日本人の一人として架け橋となり、日本から資金を調達するだけでなく、日本の技術(サービスを含む)をカンボジアに持ち込んで参ります。我々も日本の投資家もカンボジアへの長期的な貢献を考えて居りますので、長期的な資金提供、並びに技術供与を行って参ります。一例として、日本流の金融サービスとして、スピード融資です。万一、お客様が緊急な資金が必要になった際、カンボジアの一般的な金融機関であれば融資に1か月近くかかるので、SME等のお客様は迅速な資金需要に対応できません。我々は書類が全て整っていれば3日以内に融資しておりますので、お客様も安心してビジネスを展開する事が出来て居ります。
また、金融以外でも違法駐車による渋滞を解消する為に、プノンペン市と協業で、日本のコインパーキング(有料駐車場)をカンボジアで運営していく計画です。このように、日本からの資金調達による貢献のみならず、日本からの技術供与による技術力の蓄積による安定したカンボジアの経済発展に貢献していきたいと思って居ります。(取材日/2015年2月)