2016/5/27
―――S.E.A.T.Sとは、どのような会社なのですか
峯島浩輔(以下、峯島) 弊社は2013年7月に設立し、リサーチ期間を経て2014年4月より流通・卸事業、輸出入代行事業を開始しました。「カンボジアの日系商社」として、主に現地の飲食店様、小売店様への日々のリサーチを通して現地で必要とされている製品やサービスに関する活きたマーケティング活動を実践しています。こうして得られた情報をもとに、国内外の複数の事業パートナーと連携して、お客様へご提案できる製品・サービスの幅を広げていくことが当社の価値だと考えています。
そのため、取扱い製品は食材、生活資材をはじめとして幅を広げており、今後も変化するニーズに柔軟に応えられるようにしていきます。私たちはいわゆる進出のためのコンサルティング会社ではありませんが、事業の内容に関わらず、日系企業様がご進出の際に「S.E.A.T.Sに声をかけてよかった」と思っていただける存在でありたいと考えています。
―――なるほど。ところで、ここ最近の業況について教えていただけますでしょうか
峯島 カンボジアの経済発展に伴い、特に上位中間層の購買力が増してきており、品質・価格面でもより良いものへニーズの幅が広がっているのを感じます。例えば皆さんに馴染みのある日本食関連でいえば、2、3年前まで、水産品といえば現地の市場で入手できる程度の品種で、安くて火を通さなければ使えないものが一般的でしたが、徐々に輸入でしか手に入らない冷凍品へのニーズも増えてきました。
さらに最近では様々な方法を用いてフレッシュ(生)の状態で輸入し、高品質な刺身として提供する現地系のレストランも出てきました。依然として輸入食材を提供する飲食店は「ぜいたくな食事」という印象があるものの、以前より身近な選択肢になってきていると認識しています。
一般的に、経済成長と所得の拡大は比例して伸び、それに伴い購買力も増していくので、カンボジアでは今後も安定して需要が拡大していくと考えています。カンボジアの経済成長率は7%程度で推移していますが、プノンペンだけでいえば更に早く成長している実感があります。直近の2年間でも真新しい小売店や大手の飲食店、サービスなどが次々と進出しており、シンガポール、マレーシア、タイなど隣国で成功している企業が現地の資本と組んで出店するケースが多いようです。
一方で、ニーズを捉えて繁盛している輸入品をメインにした飲食店はまだまだ少ない印象です。輸入品は原産品と比べて2~3倍の価格になる傾向がありますが、それを消費できる層はまだ多くありません。そうした中で、中間層に「手の届く値段」と「それなりの品質」で提供する割安感のある飲食店に人気が偏っており、例えばオーストラリア産ビーフのビュッフェスタイルで客単価12~13ドル程度の飲食店などは流行っていますが、業態やラインアップが画一的で選択肢の幅が狭いと思います。
当社としてはこの認識の上で、現在なにが欲されているか、今後になにが欲されていくか、に関してアンテナを立て、それらを持ってくるためのハードルをクリアしていくことに注力しています。今年からはAECの枠組みも発足しておりモノとヒトの動きがより活性化してくるため、ニーズの幅が益々広がっていくことを期待しています。
―――確かに年を追うごとに購買力も強くなっているように感じます。そのなかで御社の強みはどういったところにありますか
峯島 弊社の営業が、現地で毎日お客様に足を運ぶことで得られているリアルなマーケットの情報が一番の強みです。日系をはじめ他国からの進出企業様や、現地の大手企業様など、これまで150社以上とのお取引がありますが、一業者としてお客様と事業の盛衰を共に経験してきました。その過程で見てきた多くの成功例・失敗例のストーリーのご共有、それらに基づいたより現実的なご提案が可能です。
弊社は食品としては冷凍、冷蔵、常温品、アルコール類を取り扱い、特に冷凍、冷蔵品のラインアップに力を入れています。それ以外にも生活資材の物販など流通全般を行っており、現地のニーズに応える製品を見つけてくるという観点では製品を限定していません。特に今後進出を考える方のお問い合わせに対して、ご対応出来ない部分については現地企業のご紹介も含めて柔軟なサポートが出来ます。もちろん将来的に弊社ともビジネスに繋がれば嬉しいものの、商社としては情報のご提供も意味があることだと考えておりますので、お気軽にお問い合わせいただけたらと思います。
―――ありがとうございます。では最後に、今後の業界全体の展望と、抱負をお聞かせください
峯島 日本の製品やサービスが数年後にアジアの周辺国で流行るように、カンボジアでは地続きのタイやベトナムに影響を受けるケースが多いです。またSNS等を通じて日本や韓国のカルチャーやトレンドの情報を取り入れつつ、実際の製品やサービスは価格的に手の届く隣国のものが流通しているというのが現状です。
数年後に当然流通するであろう製品やサービスを見極め、国内外のネットワークを駆使して先行して市場に提案していく力を伸ばしていきます。ポイントは「早すぎず、遅すぎず」であり、数年先に確実にくるニーズの兆候をタイムリーに拾っていく地道なマーケティング活動が必要です。商社としては、ニーズに合致した製品のサプライチェーンを自社でまかなうという観点から、OEM生産元との協業による自社ブランド製品の展開や現地一次産業分野への進出等を考えています。(取材日/2016年4月)