2018年12月25日
――SCSについて教えてください。
宮田智広(以下、宮田) SCSは2002年にマレーシアで創立し、現在本社シンガポールをはじめアジアを中心に19か国36拠点を有する日系の会計事務所です。ここカンボジアにおいても、カンボジアに進出する企業様を支援するべく2016年にプノンペンに進出いたしました。おかげさまで進出以降お客様の数は年々増加し、徐々にではありますが成長しております。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。
――どのようなビジネスをされていますか。
宮田 税務申告や会計記帳等のコンプライアンス業務や設立代行、内部統制の構築支援といったコンサルティング業務を提供させて頂いています。
――他社との違い、特長などあれば教えてください。
宮田 日本人公認会計士が常駐することは勿論、2017年より非常駐ではありますが、もう1名日本人公認会計士が加わり日本人会計士2名体制で業務を提供しております。
また弊社SCSは他国にも多く自社拠点を有しており、他国へ進出されているお客様への業務提供の際、各国SCSの担当者と連携した業務提供が可能です。日本人会計士がマネジメントを行っておりますので、サービス提供内容や価格決定などについても柔軟にご対応できることも特長の1つです。
――カンボジアのビジネス環境について、特徴などありますか。将来性についても併せてお聞かせください。
宮田 様々な特徴がありますが、弊社はサービス業ですので特に人材の観点から考えると、他の新興国と同様に、給与水準を上げるためのジョブホッピングが多いことが1つ特徴としてあります。特に会計系の人材の給与相場は年々上がっていますが、上昇幅に見合うだけスキルが向上しているかというと特にレベルは変わっていないという印象です。
ただ、教育水準は向上していることから若い世代ほど優秀な方が多く、国の発展に伴いあらゆる面で品質の向上が求められ成長が促されることから、今後日本人が期待する品質面での向上は期待できるのではないかと思います。
あらゆる面で品質の向上が求められているというのは、例えば会計税務の業界では、法定監査が義務付けられている企業への税務調査の際、外部監査人の監査報告書を求められるケースがあることや、適正な財務諸表の作成を行っている場合、ミニマム税の免除を受けられるような制度が設けられています。
――これから進出する日本企業に対して、会計税務関連で留意すべき点などありますか。
宮田 日本企業が海外進出するにあたり、本社の経理財務部門の方が常駐することは滅多にありません。そのため会計税務の知見・素養のある日本人がいない中、資金繰りの繊細なスタートアップ期などにおいて、自社で会計税務を試みるも、後々申告漏れや会計と税務の不一致、必要書類の紛失などといったトラブルが発覚し、結果的に追徴課税等でコストが余計に膨らむケースがしばしばあります。ここカンボジアにおいても、法制度が頻繁にアップデートされ、それがビジネスリスクにもチャンスにもなりますが、いずれにしても常に専門性の高い知識が必要になります。
――最近の会計法令等で変更された点、日本企業への影響など教えてください
宮田 2017年10月10日に経済財政省から移転価格に関するPrakas No.986が発行されました。それまでは関連当事者間取引について税務当局に再評価を行う権限を与えるという規定のみでしたが、国際税務の潮流に則り、カンボジアにおいても移転価格の概念が正式に導入されることとなりました。Prakas No.986では関連当事者の定義や許容される移転価格算定方法、移転価格の文書化の義務といった大枠が定められているのみで、今後の動向を注視する必要がありますが、関連して2018年8月に関連当事者間のローン契約についてはアーム・レングスの原則に従う、つまり第三者とのローン契約と同様の利率設定を行う必要があり、当該利率の決定について移転価格文書を作成して保管する必要がある旨のインストラクションが発表されました。
これまでは、2014年に出されたCircular 151の存在により、関連当事者間のローン契約については0%の利率の設定が可能となっておりましたが、今後は利率の設定、早期返済、資本金への転換などの方策を検討する企業も出てくると認識しております。
――今後の御社の抱負などあれば、お聞かせください。
宮田 SCSのブランド名には、サービスの売り手である当社(Seller)、サービスの買い手であるお客様(Client)、社会や国々(Society)が全て成長することのできるような業務提供を目指すという想いが込められています。
ここカンボジアにおいても、サービスの提供を通じてお客様の成長の力になること、雇用機会を確保することによりスタッフの成長と業界の発展に資することを理念として抱いております。
今後もカンボジアという国でお客様とともに成長してまいりたいと思います。