カンボジアに進出する日系企業のための
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業界別インタビュー

2014年10月2日

この国で法律を無視することはできない[法務・税務・会計]ブレットン・G・シャーロニ (2/3)

法務・税務・会計

シャーロニ&アソシエイツ Sciaroni&Associates
シニアパートナー: ブレットン・G・シャーロニ Bretton G. Sciaroni
カンボジアで20年以上の歴史を持つ、シャーロニ&アソシエイツのシニアパートナー、ブレットン・G・シャーロニ氏に話を伺った。(取材日/2014年9月)
法律さえきちんと守っていれば、トラブルに巻き込まれることもなく過ごせる

前回からの続き
―――司法制度の専門家として、隣国と比べた時のこの国の違いや優位性は何だと思いますか?

シャーロニ この国は近隣諸国に比べてかなりの自由度があります。企業にとっては進出から設立までかなり容易にできますし、周辺国に比べても柔軟です。顧客の多くは100%外資の会社設立ができることに驚かれる方も少なくはありません。通貨管理もありませんので外資のみで設立して、合法のまま利益を国外へ持ち出すことも可能です。外国人は様々なメディアの影響から、カンボジアは無法地帯だと誤った情報を持ったまま来ることがありますが、私は自社の顧客にはこの国で法律を無視することはできないと教授します。法律さえきちんと守っていれば、トラブルに巻き込まれることもなく過ごせると思います。

 たしかにカンボジア人で法律を守らない人々は少なからずいますが、それは国家の問題であり、進出してくる一個人の問題ではありません。私たちの義務は法律を順守することであり、そうすれば困難はさほどないでしょう。たくさん進言をしますがもう一つ主なことは、法律を順守すると決めた以上は、よくありがちな「○○(政府関係)の親族です」と言い寄ってくる仲介人などは相手にしないことです。問題に直面した時、彼らは安易な提案をしてくるでしょうが、その関係者が抜け、万が一あなたがやるべきことを手順通りやっていないということが表面化した時、あなたは大きな代償を払うことになります。

その国や経済システムの背景を調べる責任がある

―――法律を順守すべきというのは理解できますが、先に出た矛盾などにより、時にそれが困難であると感じることはありますか?

シャーロニ そうですね。進出する側としては、その国や経済システムの背景を調べる責任があると考えます。私は、ここは外国人にとってとてもいい環境だと思っていますし、政府関係者と仕事をする機会が数多くある中で、彼らの問題に対する機敏さ等とても好感が持てます。ビジネスのいろんな業界を見てもかなり機会があると言えますし、業界によっては難しい面もあるかもしれませんが、表面的に考えた場合、カンボジア人と外国人を区別する法律はありません。唯一の権利の違いは、個人の土地所有が可能かどうかという事のみです。それぞれ違うルールが適用されるわけではないので、困難であるという事はあまり感じません。

ジャパンデスクの設置

―――数か月前にジャパンデスクを設置したようですが、その理由を教えてください

シャーロニ はい。近年の近隣諸国での日本企業進出の増加もあり、設置を決めました。カンボジアへの進出もかなり増加していますね。政府関係者は、日本はODA予算の拠出のみで日本企業の国内実態がほとんどないと長年嘆いていました。両国の友好関係にも関わらず、民間企業の関心は低いままだったのです。カンボジアには基礎インフラ整備がまだまだ不十分なので、ODAはもちろん、どんな予算でもありがたく重要なのです。ただ、この国を本当に強い国家にしていくには、民間企業の進出によって得られる雇用の増加、さらにはそこから生まれる経済活動が必要です。

 お金がなければそれは期待できませんし、仕事が無ければお金は生まれません。日系企業の進出の増加は劇的な変化を見せています。長年の日系企業の躊躇も緩み、多くの企業がカンボジアでのビジネスに期待していることがわかります。

カンボジア最大の難関は人の誘致

―――日系企業が投資を検討する段階で、よく聞かれる質問や心配事項はありますか?

シャーロニ 長きに渡ってですが、日系企業の最大の悩みは治安だったと考えています。私自身この国に暮らして不安に感じたことはありませんが、カンボジアが抱える歴史の出来事や負のイメージの作用ですが極めて危険な場所だとは思いません。一旦人口の流入が始まり、QOLの高さが認知されればそれも払拭されるでしょう。不満を言う外国人は多いのですが、彼らがここを去ることはあまり無いですよね。そのことから見ても案外良いところなのだという事がわかると思います。

―――ご自身が周囲に勧めるときはどのような伝え方をしますか?

シャーロニ 私自身、カンボジア最大の難関は人を誘致することだと考えています。一旦暮らしてみれば気に入る人が殆どですが、その人々がビジネス面でうまくいくかどうかは、業界や競争相手と、対処法に依るでしょう。ただ観光客であれ、ビジネスで来る人であれ、国に戻った時に彼らが語るカンボジアでの経験と意外性は周囲に伝わると思います。そういった伝聞で人々のイメージは変わっていくものと思います。(次回へ続く)(取材日/2014年9月)


シャーロニ&アソシエイツ Sciaroni&Associates
事業内容:法務コンサル等
URL: http://www.sa-asia.com/home/

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