2018年2月19日
(前回の続き)
――政府は2025年までに毎年5万人の観光専門家の教育を目指しています。また、スタッフの欠如や教育の向上を求める声も上がっています。観光業の人材に関して、現状及び問題点を教えてください。
ヴィー・ウータンワッタイ(以下、ヴィー) 私自身、人材の強化は今すぐ取り組むべき問題だと思っています。
弊社でも適切な人材を見つけ出すのに非常に苦労します。特にハイシーズンには、どの旅行会社も人材の確保にあたるので需要過多となり、人材確保の競争になる場合もあります。これはアウトソースであっても同様です。
また弊社の場合だと、経営陣レベルの人材は固定されますが、その下のスタッフは非常に流動性がありますね。その理由には、人材不足が挙げられます。
カンボジアには数多くの旅行会社がありますが、人材は比例していません。そのため給料も高くなり、会社側も高い給料で交渉し他社から人材を獲得します。その結果、経験はあっても、十分な訓練や教育を受けていない人材ばかりが育ってしまいます。
セールスコンサルティングや旅行コンサルティングには顧客の需要を理解し、顧客に合ったパッケージを提供することが求められます。ただ売ればいいのではありません。弊社では全スタッフの専門性の向上に努めています。ツアーの際も、利用客のアレルギーや薬の把握、利用客の年齢や状態に合わせた時間管理が必要となり、非常に人的資源を要します。コンサルが出来る適切な人材が必要です。政府は観光ガイドに対する職業訓練を発表していますが、旅行エージェンシーにおいても人材育成を図ってほしいと思っています。
また人材の強化に加え、言語の強化が今後の観光業の発展に重要なポイントとなり得ると思っています。
――カンボジア人の国内及び海外旅行の現状を教えてください。
ヴィー 驚くべきことに、海外旅行をするカンボジア人の数は非常に伸びています。観光省が出す統計によると、今年4月の海外への旅行客数は前年同期時から20%増の17万6971人。7月は昨年から12万3329人と昨年同時期から15%増加しています。
増加の要因として、経済の安定とカンボジア国内の政治環境の安定が挙げられます。かつてはいつ戦争が再開するのかわからないという不安から、国民の多くは安全さを求め、お金も貯金していました。国に対する信頼もありませんでしたが、近年は国に対する信頼も上がり、それぞれの人生の質に重きを置くようになっています。より家族との時間や、休暇の過ごし方に重きをおくようになりましたね。将来、政治環境が同じように続けば、更に海外への観光客数は増え続けるでしょう。
――カンボジア人に人気の観光地はどこでしょうか?
ヴィー 10年前は、ベトナム、バンコク、マレーシアへの旅行ばかりが目立ちましたが、その後中国や香港、日本、韓国、ドバイへと、観光地も拡大しています。国民も常に新たな場所を求めています。
人気の観光地は予算によって異なりますが、2016年のクメール正月では、日本と韓国に旅行するカンボジア人が多くみられました。低予算であれば、近隣国であるベトナムとタイ、少し多くなると、マレーシアやシンガポール、更に上がると香港、中国、マカオ、更に予算が多くなると韓国や日本に行くようです。更に予算に余裕がある方は、アメリカ、ヨーロッパ諸国、オーストラリア、ニュージーランドなどを訪れます。
国内の場合は、シェムリアップ、モンドルキリ、ラタナキリといった山岳地域、シアヌークビルやコッコン、ボコールなどの沿岸地域が人気の観光地です。社員旅行など200~300人の団体旅行としては、シェムリアップや沿岸部が人気となっています。
――外国人旅行客はいかがでしょうか?
ヴィー 弊社の場合、ヨーロッパ諸国からの観光客数には減少が見られます。ヨーロッパ地域での政治的問題、消費力が原因と考えられます。一方、シンガポールやマレーシアからの訪問者数は増加していますが、一般的な観光客とは異なります。先日、MICE(Meeting Incentive tour Conference Exhibition)と呼ばれるイベントで、多くの訪問者がありました。
――今後、御社はどのような役割を担っていきたいと考えますか?
ヴィー 引き続き、質に重きを置いたサービスを提供していきたいです。また創造性も求めていきたいですね。年齢層に合った旅行パッケージを展開していきたいです。
また海外旅行客に対してカンボジアの魅力を伝えられるような、正しい旅行コンサルタント、専門家を目指します。団体、個人、ハンディキャップを持っている人、どんな人でも、彼らのニーズを満たすことが出来るコンサルとして引き続き、努力していきたいと思います。
――日本人の読者に対して、メッセージをお願いします。
ヴィー カンボジアは非常に美しい国です。アンコールワット以外にも、魅力に溢れた場所を多く秘めています。文化も多様で、カンボジア人は笑顔でフレンドリーに対応します。ぜひカンボジアに来て、魅力を見つけ出してください。(取材日:2017年8月)