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業界別インタビュー

2016/11/25

カンボジアで建設をする際は安請け合いを鵜吞みにしない[建設・内装] 大嶋信

建築・内装

大村インダストリー Omura Industries Co., Ltd.
ゼネラルマネージャー General Manager: 大嶋信氏 Oshima Makoto
活況と言われるカンボジアの建設業界。日本人も多く注目しているが、その勢いはどこまで続くのだろう。また、カンボジアでの建設にあたって日系進出企業が留意すべき点は何か、事情を知り尽くした大村インダストリーの大嶋信氏にお話をうかがった。(取材日/2016年10月)
日本よりも、カンボジアで仕事をしたいと思った

―――カンボジアに来た経緯をお聞かせください

大嶋信(以下、大嶋) 東日本大震災の直後に来ましたから、カンボジアに来てもう約5年になります。当時は日本のゼネコンにいたのですが、震災復興の応援のために2週間東北へ行ったあと、カンボジアに赴任することになりました。日本の大手メーカーがカンボジアの生産拠点をプノンペン経済特区に建設するということで、約3万平方メートルの工場建設にプロジェクトマネージャーとして携わることになりました。当時は大きな日系工場はあまり進出していない時で、プノンペン経済特区では主な日系工場は味の素くらいでした。

 その後、務めていたゼネコンを退職し今に至ります。日本で仕事をするよりも、カンボジアで仕事をしていたい、と考えて決断したんです。細かいところを気にしない部分や、優しい人が多く楽しいところに惹かれました。

―――5年間いらっしゃって、プノンペンの変化はどうですか

大嶋 だいぶ様変わりしました。今は交通渋滞がひどいですが、以前はそれほどでもありませんでしたし、高層ビルが今どんどん建設中ですが、私が来たときは数えるしかありませんでした。

異国でのジャパンクオリティは時間とコストがかかるもの

―――大村インダストリーさんの強みについて教えてください

大嶋 弊社はローカルの建設会社といくつか提携しており、協力を受けて施工・管理・監理しています。お客様と相談して、図面の設計からもお承り可能です。もちろん現場での施工の管理・監理を致します。こちらの建設事情については熟知している自負があります。

 カンボジアの建設事情をあまりご存じない日本人の方には色々とアドバイスできると思いますから、お気軽に連絡をくださると嬉しいです。カンボジアで建設をする際に気をつけなければいけないことは、安請け合いを鵜吞みにしないということです。建設会社の営業が安請け合いをして、後で問題になることは、カンボジアではよくあることなんです。カンボジアのローカルの建設会社に施工を依頼するのは品質や納期の面で不安があるという方にとっては、大手ゼネコンへ依頼するほどはコストがかからないので、お力になれることがあるかと思います。

―――他に日本人が、建設する際に気をつけることはありますか

 カンボジアの建設業界は活況ではありますが、日本の建設と同じ感覚でカンボジアの建設や施工を行うと、トラブルになることも多くあります。例えば建設費の予算組みについてです。カンボジアは低中所得国ですから格安で建設できると思われがちですが、実際はそうではありません。人件費は確かに安いですが、材料費は高くなることが多いんです。
 
 というのも、カンボジアでは国内で材料を調達することが難しいことが多く、ほとんどを輸入に頼っているからです。例えば鉄筋は建設にあたって非常に重要な資材ですが、これはベトナムから輸入する必要があります。中国産も多いのですが、概して品質が良くありませんから、ジャパンクオリティで建設しようとすれば、全て日本から輸入したりして非常に時間もコストもかかる結果となります。

 また材料面での問題のほかに、人材の問題もあります。人件費が安いことは確かですが、経験がなく未熟練な職人が多いですね。丁寧な仕事をするカンボジア職人も確かにいますが、作業効率は日本よりかなり悪いので、効率を考えると日本より格安であがるということではないんですよ。

 ですから、良い品質のものを作ろうとすればコストがかかるのは当然なんです。日本と同様のクオリティのものを作ろうと思えば、むしろ日本よりも高くなることすらあります。

 弊社の話になり恐縮ですが、系列会社の大村コンクリートでは、プノンペンから35キロ離れた国道1号線沿いに、舗装材や土木製品を製造するコンクリート二次製品工場を開業しました。カンボジア国内の材料を使って製造しているため、安価でご提供でき、日本の製造機器で生産し、日本人が品質管理を行いますから品質も保証できます。今後はカンボジア国内の都市開発や公共事業に採用していただけると思います。

建設許可が下りるまでにかかる時間には要注意

―――今後の建設業界について、ご意見をお聞かせください


 以前のプノンペンと現在のプノンペンでは都心部が拡大していますし、建設地域の拡大に伴って今後もどんどん都会部分は拡大していくでしょう。現在、イオンモール2号店の建設が進んでいますが、あの周辺は以前は何もない湿地帯だったんですよ(笑)

 確かに建設業界は目覚ましく成長してはいますが、だからこそ危うい感じもあるんじゃないでしょうか。プノンペンの人口が将来的にこれからも増えていくとしても、これだけ高層ビルやコンドミニアムが乱立して、それだけの需要があるのか疑問に思います。それよりは道路環境保全などの公共事業の方をもっとしっかりやるべきではないかと個人的には思います。

―――カンボジアでの建設について、政府に期待したいことは何かございますか

 建設許可が不透明なところがまだあるので、行政にはここを改善してほしいと思います。すべての建物に建設許可が必要だということは明記されているのですが、どういう建物ならば許可されて、あるいは許可されないのか、などが不明瞭です。手数料もいくらかかるのかなど、職員によって言う事が違います。また許可が下りるのに非常に時間がかかるので、建設計画にも支障が出ることが多くあります。このあたりは事前に留意しておくべき点でしょうね。

実際に足を運び、自分の目と耳で情報収集を

―――カンボジアで建設をしたい日本人や、カンボジア進出を検討する方へのアドバイスをお願いします

 これは建設に限らず、他の業界についても同じことが言えると思いますが、実際どのくらい費用がかかるのか、どのような品質で施工されるのか、納期はどのくらいかかるのかなど、カンボジアに足を運んでいただき、自分の目と耳で正しい情報を収集することが重要だと思います。カンボジアに進出するのであれば、時間をかけて正しく情報をつかむ、ということが非常に大切だと思います。(取材日/2016年10月)


大村インダストリー Omura Industries Co., Ltd.
事業内容:建設・土木
URL: http://www.omura-cambodia.com

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