2017年7月23日
――MyTVについて教えてください
リム・クンスルン(以下、リム) MyTV(マイティービー)はカンボジア国内で23あるTV放送局の一つで、2003年に設立されたCTNの姉妹局として2009年に開局された新しい放送局です。MyTVはカンボジア従来の伝統的なTVチャンネルとは異なり、はじめてカンボジアの人口の70%を占める30歳以下の若年層をメインターゲットとした放送局です。
開局後、韓国の音楽を扱う音楽番組、インドのドラマ番組などそれまでになかった新しい番組をカンボジアの視聴者に提供しはじめました。その後もトレンドの変化に対応して、チャンネル自体も進化しつづけています。国際的な調査会社の協力の元、常に視聴者調査を行っていますが、視聴率は順当に伸び続け、今ではCTNと並びカンボジアで最も人気のあるTV局となっています。
――MyTVにおいてどのような役割を担っていますか
リム 私はMyTVのゼネラル・マネージャーとして、コンテンツ戦略や営業戦略などの戦略決めるなど会社全体の動きを統括しています。
その中で特に、海外番組の放送を行ったり、世界各国で人気の番組フォーマットを購入といったことを積極的に行っています。私たちの対象視聴者が番組を楽しんでもらうためにはどうしたら良いか番組編成に関しては日々考えていますね。
――MyTVの強み、他局との違いについて教えてください
リム 他局と同じような番組ではなく、カンボジアにはない新しい番組制作を重要視しています。
私たちが今新たに取り組んでいるのは「リアリティーショー」という新たなドラマ形式の番組です。人材の確保も必要ですし、投資も行わねばなりません。特に人材の育成は必要ですね。私たちは若いプロデューサーのチームを社内に作って、常に新しいアイデアを取り入れるように努めています。そこが他局とは異なるMyTVの強みですね。
もう一つ、今新たに取り組んでいるのが、「一般常識」を伝える3分程度の短い教育的な番組です。現在は1日10回程度放送しているのですが、「どのような仕組みで月が動いているのか?」「なぜ月は光っているのか?」「なぜ太陽は熱いのか?」「世界で最も走るのが速い生き物は何か?」といったテーマで番組を制作しています。
視聴者が楽しみながら「一般常識」を学べるコンテンツはこれまでカンボジアになかったものです。今後は同シリーズの番組の中でカンボジア人が世界に目を向けるような番組も作っていきたいですね。「ダイアナ妃とはどんな人か?」「エイブラハム・リンカーンとは?」「アルバート・アインシュタインとは?」番といったように、番組を使って視聴者の知識向上に貢献する新たな取り組みも積極的に行っていきたいと考えています。
――TV局として重要視していることは何ですか
リム 私たちは番組の「クオリティー」を重視しています。番組のグラフィックデザインをはじめ、視聴者を飽きさせない番組のバリエーションがあります。昼休みに主婦に向けて人気のインドのドラマを放送することで、より多くの視聴者をランチタイムにMyTVを見せています。国際的なフォーマットのTV番組も豊富にありますし、午後には音楽紹介番組を放送しています。
カンボジア人にとって「MyTVには必ず見たいものがある。」そう思ってもらえるチャンネルにしていきたいですね。
海外から購入する番組の多くはドラマです。MyTVは以前からタイ、フィリピン、中国、インド、韓国からドラマを輸入してきました。一番多いのはインドドラマで、続いてタイのドラマですね。
MyTVの番組の約50%が海外から来ていますが、残念ながら日本の番組はまだありません。日本の番組にも興味がありますので、現在日本大使館に協力を仰いで、日本人のプロデューサーや日本のTV放送局のつながりを求めていますので、これから具体的な動きが出てくるのではないでしょうか?
――他局よりもはるかに高い番組のクオリティーはどのようにもたらされるのですか
リム 元々私たちの局のスタッフはCTNから来たスタッフがほとんどです。初めからある程度の経験はありました。それに加えて新しく大きな番組プロジェクトを始める場合には私たちは海外のプロフェッショナルにコンサルタントとして協力を仰ぎ、制作に協力してもらいます。また定期的に社内のスタッフをシンガポールやタイに派遣して訓練を行ったり、ワークショップに参加させて常に新しい技術や表現を学んでもらっています。また定期的に韓国や中国、日本やシンガポールでも研修旅行を行っています。
――MyTVとソーシャルメディアの関係とは
リム 私たちのソーシャルメディアとの関係はとても近いです。
MyTVはフェイスブックにファンページを開設していますがすでに「110万いいね!」を得ています。フェイスブックは私たちのTV番組のプロモーションを行うだけではなく、TV番組や広告に対して視聴者から意見・感想などフィードバックを得るツールとしてとても重要です。
ソーシャルメディアが現れる以前はTV番組のフィードバックを得ることができず、視聴者も番組の感想などを送ることができなかった。今では良い反応、悪い反応どちらもフェイスブックのコメントで寄せてくれます。こういったフィードバックは我々はソーシャルメディアをとても重要視しています。
あとMyTVにはもう一つ「MyTV LIVE」というフェイスブックファンページがあって、MyTV LIVEでは、MyTVで流れている番組の多くをそのままライブ配信しています。つまりイベントの中継や、音楽イベント、TVドラマなどがTVとほぼ同時にフェイスブックファンページでも見ることができるのです。
現在、カンボジアの人々の多くは忙しく、家でドラマを見るために待つということが難しくなっています。私たちがフェイスブックでライブ配信を行い、終了後も録画配信することで、ランチタイムや学校の放課後などあらゆる場所でスマートフォンを通して視聴できるようになりました。
――MyTVは今後の展開をどのように考えていますか
リム 私たちは視聴者が現在TVから携帯端末に代わってきていることを認識していますので、私たちはソーシャルメディアや街頭ディスプレイのテクノロジー対しても非常に大きな関心を寄せています。
その他のデジタルプラットフォームや、Youtube配信など、私たちもまだまだ研究段階ではありますが、制作能力を高め、必要な人材を確保してそういったトレンドをしっかりと掴んでMyTVを進化させていきたいと考えています。
これから5年か10年後、視聴プラットフォームは変化するでしょう。そういった新しいプラットフォームのための新しいコンテンツを提供するコンテンツプロバイダーとしての役割も求められると思います。
斬新で創造力溢れる「日本」のコンテンツもこれから積極的に取り入れていきたいですね。(取材日/2017年1月)