2018年12月7日
――自己紹介をお願いします
MATES Global Communicationsの柳内と申します。2007年4月からカンボジアに在住しており、こちらに来て11年という時間が過ぎました。最初はNGOの職員として、日本語学校の立ち上げを行いました。2 年間日本語教師として学校運営に従事させていただきました。当時は日系企業の進出も少なく、多くの若者が日本語を学んでいたのですが、卒業後に日系企業に就職できた学生は30名程度という現状でした。
この現実がカンボジアで起業する大きな理由となりました。学校を作ることで学ぶ場所は提供できても、そこで習得した語学(日本語)を生かせる職場が無ければ、必死に日本語を学習した学生達が望んでいる、日本語を学びそれを生かして日系企業で働くという本来の目的は叶えることはできません。このことがきっかけとなり、日本語学習者の働く場所を作るため、2009年に当時の教え子20名を中心にMATES社を一緒に立ち上げ現在に至ります。
――御社の事業展開について教えてください
現在、メインの事業としては広告事業を行なっております。特に現地カンボジア人の方にアプローチされたい日系企業様を中心に事業を行なっております。自社発行のフリーペーパー「Chuga-Pon」やトゥクトゥク看板広告の管理、各種イベント運営、セールスプロモーションなどカンボジア人マーケットに対して様々な媒体を用いて訴求する事をご提案しております。また、カンボジア在住11年の経験を活かし、日系企業様の進出支援やコンサルティング業務も行なっています。
――トゥクトゥク広告の付加価値について教えてください
カンボジアでは日本や他先進国と比べても広告媒体の数が少ないです。日本では当たり前の様にある公共交通機関もなく、電車、バスなどもまだまだこれからといったところです。その中で市民の一般的な交通手段となるのがトゥクトゥクです。街中を走り回るトゥクトゥクの背面に取り付けてある看板広告は多くの人の目につき、宣伝効果も高い媒体です。
看板のデザインも非常に重要で、特にカンボジア人に対しては抽象的なデザインよりも直接的で分かりやすいデザインが好まれます。雑誌デザイン作成のノウハウを活かし、カンボジア人に響くデザインを作成しております。
また、トゥクトゥクは基本停車位置が決まっており、ターゲットに合わせたエリア選定も可能です。どの層にアプローチするのかによってエリア選定から、看板のデザイン作成、取り付け、管理まで一貫して行います。
――現在、Pass Appなどの台頭によりトゥクトゥクが減少していますが、それによる影響などありますか
弊社のトゥクトゥク看板サービスは現在急激に増えているPass Appではなく、従来のトゥクトゥクにて取り扱っております。昨今のPass Appの増加により、今までトゥクトゥクを運転していたドライバーがPass Appに乗り換える事も増えており、トゥクトゥク自体の数は減っております。当然それに伴い今まで選定可能だったエリアに設置できる台数が減ってしまう事は否定できません。ただ、従来のトゥクトゥクが全てなくなる事は今後数年はあり得ないと考えています。Pass Appの荷台は従来のトゥクトゥクに比べて狭く、3人以上の乗車の際はかなり狭く感じます。荷物を置くスペースも狭く、また風通しが悪い事もあり、トゥクトゥクの様な快適な乗り心地には及びません。従来のトゥクトゥクでの看板管理事業は引き続き続けていきますが、昨今増えてきているPass Appタイプの車両にも設置できる新たな広告媒体を検討しております。
先程も申し上げましたが、まだまだ公共交通機関のインフラが整っていないカンボジアにおいて、今後数年はPass App、トゥクトゥクの利用が減る事はないと考えています。それらの流れを踏まえて、今までの看板広告に加えて、新たな媒体を用いての運用をしていく予定です。
――今後の御社の展望をお聞かせください
目まぐるしい勢いで発展しているカンボジア。日本でのメディア露出も増えてきており、進出を検討されている日系企業や投資家達が後を絶ちません。私はカンボジア在住11年の経験とノウハウを活かし、進出を検討されている方々への情報発信や進出支援をさせていただいております。カンボジアをより豊かにする為に日本企業が今まで以上に進出し、カンボジア人の雇用を生み、カンボジアと日本のお互いの成長に寄与する事が我々の望みです。そうしたカンボジアと日本の架け橋となる活動を現地カンボジアに根付き、行なっていきたく思います。
――読者(カンボジア進出を考えている日本人)にメッセージをお願いします
進出希望の企業からは「何をやったら儲かりますか?」という質問が多いです。「それが分かっていたら自分がやります」と冗談半分で回答しています(笑)。
日本でも同様でしょうが簡単なビジネスなど無いですし、すぐに儲かるビジネスなど無いと言いたいのが本音です。カンボジア人が何を欲しているかをきちんと理解する事が大切です。日本のスタンダード、成功事例をただやれば儲かると思っている方も時にいらっしゃりますが、カンボジア人の慣習、文化、アイデンティティー、趣味趣向が理解できていないのに、日本の価値観や常識を当てはめようとしても成功できる確率は少ないと思います。ましてや社長が日本にいて、カンボジアへは(内心)行きたくない社員を派遣するような事をしていたら絶対成功なんてしないでしょう。だからいつも「社長自らカンボジアに在住してビジネスをする気がありますか?」と聞いています。
もちろん現実的には日本法人の社長が現地で陣頭指揮をとることは難しいのはわかっています。ですがそのような気概もカンボジアビジネスでは必要な要素であるとお伝えしておきたいです。しっかりと腰を据えて、カンボジアと向き合い、取り組む事ができるのであれば、非常に魅力があり、可能性は無限にある国だと感じております。一筋縄ではいかない事も多いですが、カンボジアと日本の発展に寄与できる志のある方が進出していただければ、カンボジアに住む身としては嬉しい限りです。