2014年12月16日
――来歴とマニュライフ生命保険の概要について、お聞かせください。
ロバート・J・エリオット(以下、エリオット) 生まれはアイルランドの北部です。1980年にマニュライフ生命保険(以下、マニュライフ)に入社し、2005年から2010年まで香港で働き、その後2年半をシンガポールで過ごしました。それから、GMとしてマニュライフをカンボジアで立ち上げるためにやってきましたが、2012年時点では、我々はライセンスを持った初めての外資企業でした。
マニュライフ自体は、1887年にカナダのトロントで設立された企業です。1897年には香港で業務を開始しましたので、アジアでビジネスを開始したのは117年前になります。現在では日本を含めた11カ国、例えば香港、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナムなどです。そして2年前にカンボジアでの業務を開始しています。
それまで、カンボジアには生命保険という業種が存在していなかったため、我々にはいくつもの課題がありました。手探りの状態でしたので、ベトナム、シンガポール、香港、中国などからスタッフを集めてチームを結成しました。カンボジアの人々は英語も堪能でしたので、シンガポールや香港などでビジネス研修も行いました。現在では、90人以上のスタッフと、8000人以上の保険アドバイザーを抱えています。Ministry of Economic and Finance(MEF)の支援もあり、生命保険がどのような役割で意味を持つかということを勉強するためのセミナーも行っています。この国では生命保険の歴史がなく、だれも生命保険のメリットを知らなかったので、我々は、生命保険がどのようにして長い期間で資産を守るか、また貯金を可能にするかといったことから伝えています。
また、子供たちの教育についても考えていただかなくてはなりません。例えば、どなたか子供がいる人で、その子供たちに大学教育を受けさせようとする方々です。私たちの顧客である中間所得層の方々は、自分の将来や子供たちの未来に対して投資をしたいと考えています。
――カンボジア人のなかには、自分たちが死んだ時のための生命保険をかけるという考え方に違和感があるという方がいると、聞いたことがありますが。
エリオット それはカンボジアに限ったことではなくて、全世界共通して言えることだと思います。例えば、自分が死んだ時のことになんか言及したくないという理由で、ヨーロッパでも遺書を書かない人はいます。しかし、当然のことながら、生命保険を購入したために亡くなるというわけではなく、現実は不慮の事故や病気によって亡くなるのです。そのような理由で亡くなるまでに、将来的に自分がどれぐらい稼げるか分かる人はいません。それなのに、自分の将来が輝かしいままで長年続くことに賭けているのです。何故それを少量の金額で保障しないことができるでしょうか。そうしておけば、万が一の場合でも、金銭的には問題が起こらないのです。また、大多数の方がそうですが、満期になればお金も戻ってきます。お客様の人生設計をお聞きしたうえで生命保険の必要性をご説明し、ご理解頂いています。あくまでも”生命”保険であり”死亡”保険ではないのです。
――現在の保険業界と周辺諸国との違いについて教えて下さい。
エリオット 現在、生命保険会社は3社あります。ローカル系のカンボジアンライフ、イギリスのプレデンシャル、そしてマニュライフです。業界を作っていく企業同士なので、さまざまな点で協力していますし、現在の需要状況など新しい商品を作るために必要な情報を互いに共有したりしています。
カンボジアには生命保険の歴史が無く、触れるのが初めてという点が周辺諸国との大きな違いです。私は祖母が生命保険に入っていたのを覚えていますし、たいていの外国人はそのような記憶があるでしょう。カンボジアでは本当に新しいものなので、そこが面白いです。ベトナムでは15年前に生命保険会社が進出していますが、その後市場は大きく成長しています。カンボジア人が良質なサービスを享受するためには、それを浸透させるテクノロジーが必要不可欠ですが、カンボジアはインターネットやシステム等の環境が整っていますので、カンボジアもまた同じようになることを期待しています。
――日本の会社に向けてアドバイスをください。
エリオット カンボジアに来るどのような会社であれ、スタッフの利益を考えられる会社は歓迎します。カンボジアへの進出は私が思っていたよりも、難しいものではありませんでした。ローカルの人々も気持ちよく迎えてくれましたし、英語能力も学習意欲も高いです。平均年齢も23歳と非常に若く、新しい物事にたいして熱心です。新しいことが学べるため、外資企業で働きたいという人々も多い。そして、各々がカンボジアのために何かをしたいという気持ちが強いように思います。ですから、その企業が何をやっているか、それがカンボジアのためになっているかというのが重要です。
――好きな日本食はありますか。
エリオット 妻も日本食が好きで、刺し身、特にマグロが好きです。東京も大好きで、3,4回訪れたこともあります。朝5時に起床して築地の魚市場を訪れましたが、とても楽しかったです。(取材日/2014年9月)