2017年9月29日
――まず、ご自身と御社の自己紹介をお願いします
ソーン・シアップ(以下、ソーン) 私は、キーリエルエステートの創設者及び取締役のソーン・シップです。2010年にこのキーリアルエステートを設立しました。8年に亘り経営しており、プノンペンに3社、シュムリアップやバットンボン、コンポンチャムなどの地方にも事務所を持っています。今年、新たな地域の開拓を計画しています。
弊社は主に、弊社の根幹と成り得る不動産価値の査定に重きを置いた事業活動を行っています。それに加え、不動産の売買や賃貸といった不動産管理、不動産仲介、不動産雑誌の発刊と言った4つの事業を展開しています。
私自身は、10年以上不動産業界に勤めています。大学生時代にアメリカの不動産事業について学び、この 業界に興味を持ちました。残りの生涯を賭けて、このビジネスをしていきたいと思っています。
――御社の強みについて教えて下さい
ソーン 私たちがこのビジネスを始めた時は建設業も盛んでは無く、取引は所有者と買い手の間で直接行われており、非常に不安定でした。不動産仲介業者も利用されていませんでした。不動産価値の査定だけが、我々の核として建築できる事業だったのです。そこで、我々は査定について学び、多くの経験を得ました。いわば国際的な事業であった不動産事業をカンボジア市場にも成立させるため、我々は地方の会社と提携し事業を拡大していきました。そのため弊社は、不動産物件の評価や銀行及びマイクロファイナンス機関を含む金融機関に対する査定の提供に強みがあります。カンボジアにある銀行の多くはラオスにも事務所を構えているため、ラオスにおいても査定を行っています。
不動産価値の査定は、主に土地や家、ホテル、工場などの不動産の価値を見積もります。特に弊社は26の銀行と4つのマイクロファイナンス機関と提携し協力しています。
その中で、市場から情報収集を行うことは簡単ではありません。幾つかのデータベースを合体しますが、他の会社とは違いが生まれることもあります。このデータは賃貸物件数、販売物件数等のデータを出していきますが、その都度ダブルチェックを重ね、情報の正当性を追求していくことが大切です。
――カンボジアにおける不動産業界の問題や最近の状況について教えてください
ソーン カンボジアにおいて、不動産業界は非常に新しい分野です。それはある意味、世界のあらゆる地域、特に先進国からの影響を受けやすい環境ではあると思います。2008年には世界金融危機や海外投資のバブルの影響で国内でもバブルが発生しました。しかし、ここ10年におけるカンボジアの発展はめまぐるしいもので、2007年には2つの高層ビルしか無かったのが、今では数百の高層ビルが建っています。バンケンコン1に関して言うと、2007年には550ドルだったのが、今では3500~4500ドルへと地価が急上昇しています。
近年においては、外国人だけでなく、地方の人々による投資も増えてきています。
――どのような住宅物件に注目を置いていますか
ソーン 多くの場合、賃貸物件が強いと思っています。地元の人々からの需要があり、都市では急激に拡大しており、建設と売却が行われています。基本的に、売却価格は5万ドルから100万ドルの相場になっています。
――御社が注目を置く地域はどこですか
ソーン コンドミニアムに投資をする場合、バンケンコン1やトレバサックのような中心地を見たほうが良いでしょう。多くの収入が得やすい地域ではあります。賃貸物件の場合は、都市部では無く、1番目にトゥールコック、2番目にイオン2が建設予定のサンソップエリアが最適です。現在、多くの建設も進められています。
注目すべき大規模プロジェクトとしては、OCICによる320ヘクターのプロジェクトがあります。また、中国とカンボジアのグループであるLYPグループは、LYPと中国人投資家により1000ヘクターのプロジェクトを計画中です。合計投資額は約15億ドルとも言われています。小規模のプロジェクトには問題がありますが、今がプロジェクトの建設時期だと考えています。
――コンドミニアムが過剰供給という指摘もあります。どのように考えますか
ソーン コンドミニアムが過剰供給かどうかということに対して、私の意見はYesでもありNoでもあります。その理由は、過剰供給を証明する正確なデータが出ていないからです。
コンドミニアムの多くは、日本や韓国、中国によって建設されています。カンボジアでは流行に相まって、コンドミニアムの消費者に若者が多く見られるようになっています。私は、今後ローカルの需要が増えると思っています。数年後には、海外からの買い手も増加するでしょうし、開発者やプロジェクト所有者は常にコンドミニアムを売ろうとしていますので、明確な推測はできません。
――管理人が電気や水道料金を高く設定してしまうことが指摘されていますが、どうお考えですか
ソーン 電気及び水道の料金の上昇は、サービスアパートメントに多く見られます。1つの導線だけで電気を繋いでおり、電気供給は住居とオフィスに別けられます。基本的には1キロワットにつき0.25ドルですが、管理人が自由に価格設定出来るようになっています。
バイヤーを通して電気供給を行うので、電気料金を高くしないと儲けも出ないということだと思います。
政府からの消費は1時間につき1000キロワットであるにも関わらず、電力を接続し供給している場合1時間につき900キロワットと減少してしまいます。しかし、今後不動産業界は更に厳しくなっていくので、これまでのように高い電気料金では他の不動産に打ち勝つことが出来ません。私は電気料金の改善が見込まれると考えています。
――不動産購入をする際に、気をつけるべきことを教えてください
ソーン 不動産購入をするなら、需要と供給の関係から売り手が多いときに購入し、買い手が多い時に売るのがベストです。今は買い手が多くありませんから、今年か来年が狙い時だと思います。
また気をつけてほしいこととして、カンボジアでは日本人を含め、外国人が土地を所有することは出来ません。地上の建物、またコンドミニアムのような共同所有の建物のみ所有可能です。ソフトタイトルは単に不動産所有権を移転するという柔軟性があり、コンドミニアムも入手可能となります。賃貸には地方自治体を通して行われるものと、2種類ありますが、近年では、所有者が不動産税を確実に払うようにするため、両者が協働しています。
ハードタイトルに関しては、購入前に不動産仲介会社などの専門家に事前に相談することをおすすめします。
――カンボジアにおける不動産業界への展望を教えてください
ソーン 不動産開発はとても早いです。かつては1つの家に1家族だったのが、今や1つのコンドミニアムに2000部屋、2000世帯にもなっています。
しかし、バンケンコンなどの人口集中地域では、交通渋滞による問題も起こっています。その為、全ての建物の安全性を向上し、また完備されていない生活面のインフラとして交通網や電気の問題にも着手していくことが求められると思います。
また、日本の皆さんには更にカンボジアに来て投資をして頂き、No.1になってほしいと思っています。(取材日:2017年4月)