――インドシナリサーチについて教えて下さい
カール・リモイ(以下、リモイ) インドシナリサーチは1994年に設立されました。カンボジア、ラオス、ベトナムの全域をカバーするリサーチ会社は我が社が唯一です。我が社は長年この地域での活動から培った経験があります。この独特な地域を長年研究し、様々な分野から得た情報は何事にも代えがたいです。私どもはこの地域のマーケットには相当精通していると思います。
我が社は社会的調査だけでなく近年は商業目的の調査も数多く手がけています。ロックフェラー財団やUSAID、JICA、UNICEFなどの国際的なNGOは主に開発支援プロジェクトの影響査定の発注が主になります。商業目的の調査は市場調査や参入前調査など、自国の調査会社が提供しているような内容をカバーしています。また、カンボジアでは特に若者の動向調査に力を入れています。国民の6割が25歳以下という人口構成は、この層を理解することによりカンボジアの未来の開拓になると考えているからです。
――カンボジアで調査会社を利用する人に何かアドバイスはありますか?
リモイ カンボジア(の調査業界)では先入観から結論を出そうとする人が多いです。彼らは深く理解しているかどうかに関わらず答えを出してくることも多々あります。その点を見抜くのはトレーニングを積んだ人でない限りは難しいでしょう。今では多数の会社が市場調査や参入前調査のサービスを提供していますが、その多くの会社が長年の経験と科学的証拠を基にしているとは言えません。このような会社のサービスは格安かもしれませんが、間違ったデータを基にした調査は後に大きなリスクとなるでしょう。
――現在と5年前とではどのような変化が見られますか?
リモイ ここ10年近くカンボジアの経済は年間6-7%という水準で成長を続けています。世界的に見てもかなりの発展スピードと言えます。我が社の調査の結果からも世帯収入の増加、さらに中流階級の発達が認められています。更にここ数年は国際的な大手企業の参入も増えています。バーガーキングは2013年に参入、その直後にはAEONモールがオープン、そして2014年にはポルシェが参入しています。
――カンボジアのマーケットの特徴について教えて頂けますか?
リモイ カンボジアの消費者はコミュニケーションチャネルが十分であるとは言えません。メディアの状況は刻一刻と変化しているとはいえ、それはまだ都市部のみの現象です。消費者の大半は未だに質素で素朴な暮らしをしており、情報の伝達は限られています。
――どのようなビジネスに調査・マーケティング会社を利用するべきだと思いますか?
リモイ まず初めに自社が投入しようとしているサービスがこの国で本当に需要のある者であるかを査定する必要があります。発展途上国(発展初期)のマーケットなのでタイミングも重要です。地元のパートナーも必要ですし、もちろんお互いメリットのあるパートナー選びも大切ですね。事前調査をすることによりこれらの問題への解決の糸口を見つけ、リスクを最小限に抑えることができると思います。
――カンボジアでの調査・マーケティング業界の将来について教えて下さい
リモイ 参入企業にとって、リスク回避の要求は高まりつつあります。今後もその要望は高まるでしょうが、リサーチ手法は変わってくるでしょう。世界的にもデータベースの活用方法は変わってきているので我が社も生き残るためには、色々とやり方を変えなければいけないと思っています。
――最後に、カンボジアに進出を検討している日本人と日系企業にメッセージをお願いします
リモイ カンボジアにはかなりポテンシャルがあると思います。しかし、カンボジア独特のマーケットの理解を深めることが重要です。特にここ近年の変化はキーになると思います。急激な成長、消費者の考え方も変わっています。ですから、最新のカンボジア事情を持ち合わせていることが成功のカギとなるでしょう。