2017年2月3日
――自己紹介と、御社の特長について教えてください
本庄谷由紀(以下、本庄谷) 2015年10月にカンボジアに赴任して1年経ったところです。その前は弊社のベトナム・ホーチミン事務所に約3年おりました。旅行が好きで、赴任後にカンボジア国内ではモンドルキリ、シハヌークビルを初めて訪れましたが、どちらもとても魅力的な場所で、必ずまた行こうと決めました。お客さまがカンボジアでビジネスを行うにあたり、必要なご助言やご質問対応を行っています。会計税務に関する事項をお話しすることが多いです。
マック・ブラタナ(以下、ブラタナ) 私は設立直後に入社して今年で勤続6年目になります。主にお客さまの会社設立やライセンス取得支援、労務関係の業務支援やご助言を行っています。
本庄谷 アイグローカル・カンボジア事務所は、2010年4月に設立した際は、カンボジアで最初の日系会計事務所でした。現在まで、おかげさまで多くのお客さまにご愛顧いただいております。カンボジアはさまざまな法令やシステムの整備が途上にある国ですが、お客さまの税務リスクを最小化できるようなご助言やご支援に努めています。
また、弊社は税務調査対応支援を多く経験しておりますが、カンボジアは税務調査で追徴課税が決定された場合の延滞税や罰金が高額となるため、月次や年次の申告を保守的に行うことが一番の節税になると考えています。
――最近の税務を取り巻く環境について特筆すべきことや、進出する日系企業が留意すべき点を教えてください
本庄谷 カンボジアでは、個人所得税に該当する給与税のほかに、付加給付税(FBT:Fringe Benefit Tax)という税金があります。
この、従業員に対する給与以外の諸手当を対象に一律20%課税する付加給付税について、
新たに経済財政省令が発行されました。これは、事前届出を行った企業を対象に、省令で定められた諸手当対して給与税も付加給付税も課税しないというものです。
また、2016年8月から行われるとアナウンスされた税務当局による会社訪問も続いており、企業実態把握への取組がひき続き行われています。
ブラタナ 行政手続の電子化が進んでいます。特に、商業省が今後法人登記手続を電子化するにあたり、既存企業に対してもウェブサイト経由での再登記が求められているため、お客さまに対して登録の支援を行っています。
また、税務申告手続にもオンラインでの手続が導入されました。このため、納税時に税目ごとの内訳の情報が必要になります。各企業でオンラインで情報入力の上で納税することとされていますが、現状では納税時に明細書を提出することもできます。その他、事業登録(パテント)税の税額変更、クメール語を大きく表記する等のインボイス書式の変更などがあります。
――多国との違いで、重要な点は何でしょうか
本庄谷 日本から進出される場合で一番驚かれるのが、最低税制度だと思います。単純化してご説明すると、カンボジアの法人税率は20%ですが、収益の1%と比較して高いほうを納税すると定められているため、赤字であっても少なくとも収益の1%を納税しなければなりません。この税制は改正が検討されているとのことですが、まだ具体化には至っていません。
――最近の税務調査事例は何かありますか
本庄谷 駐在員事務所で、管理者もスタッフも常駐していないために事務所として支払給与が発生せず、そのため給与税の納付を行っていなかった事例があります。税務調査が行われた際に、あるべき所長の給与を当局が推定し、それに基づいて追徴課税額が算出されてしまいました。
これは、事務所設立時に所長名は登録されるため、最低でもその1名は在籍しているものとみなされたためと考えられます。このような事態を回避するには、非居住であっても登録責任者に関しては少額でもカンボジアで給与を発生させ、給与税を納付すべきといえます。
(取材日/2016年10月)