2016/11/28
―――ご自身のご経歴を教えてください
山口渉(以下、山口) 配属後、12年間は福岡支店で直販営業として働きました。その後海外留学制度を利用してアメリカのイリノイ大学で1年間マーケティングを学んだ後、カリフォルニアにある子会社でプリンタービジネスをしました。帰国後の3年半は東京で勤務し、その後2006年秋に上海へ異動しました。2007年にシンガポール、2010年から約5年半はタイの販売会社でビジネスプランニング長・マーケティング長を兼務しました。2015年8月からはプノンペンに異動となり、カンボジア支店の立上げをしました。今は支店長としてオフィス機器、デジタル印刷機、ドキュメントソリューションなどの販売活動を行っています。
―――御社の事業について教えてください
山口 弊社は複写機のパイオニアです。近年、複写機内部の画像処理部分のデジタル化により、ネットワーク化・多機能化が進み、「複写機」ではなく「複合機(MFD)」と呼ばれるようになりました。最近はスキャン機能を使って紙文書を電子化し、効率よく資料を管理するDMS(ドキュメントマネジメントソリューション)などの提案に力をいれています。また電子化文書を基幹システムにダイレクトに保存できるようになるので、作業効率が飛躍的に向上します。他のアジア諸国では約10年前からこうしたDMSのご提案をしているので、カンボジアでも日系企業様を中心にお問い合わせをいただくことも多く、大変有難く思っています。
カンボジア支店の開設は2015年10月ですので、お陰様で1年が経過しました。それまではベトナムにある販売会社がプノンペンの販売代理店を通してオフィス機器を販売していました。カンボジア支店開設以降は、販売代理店との協業体制を更に強力なものとしながらも、弊社のDNAとも呼べる「直販・直サービス」に注力しています。日系企業のお客様にはご導入以後も安心して機器類をお使いいただけるよう、アフターサービスを一層充実させていきたいと思っています。
―――なぜ、カンボジアに支店開設させることになったのでしょうか
山口 3年前にミャンマー支店を開設した後、本当の意味で「最後のフロンティア」であるカンボジアへの進出の機会を伺っていました。カンボジアは市場自体は小規模ながらも、毎年のGDP成長率は6~7%と安定しており、今後も堅調に市場拡大が見込めます。アジアのどの国でも富士ゼロックスが販売会社、支店を開設し、お客様のビジネスを直接サポートをすることが何よりも大切だと考えています。
―――カンボジア市場における御社のターゲット層はどうなっていますか
山口 日系企業はどこの国でも最も大切なお客様です。ただカンボジアでは日系企業の数が多くありませんので、ローカル企業、他の外資系企業にもフォーカスする必要があります。概して企業規模は小さいですが、それでも建設や繊維、金融関係には中手・大手の企業も沢山ありますし、マイクロファイナンスというカンボジア独特の市場も活発です。容易ではないとは思いますが、今後は文書管理系のソリューションを中心に官公庁市場の開拓も進めていきたいと思っています。
―――カンボジアにおける競合の状況はいかがでしょうか
山口 弊社以外の競合は販売代理店を通じてのみの販売です。弊社は直販・直サービスの強みを活かし、提案、購入、アフターサービスとワンストップでお客様にご満足いただけるように、しっかりと努力して参ります。
―――社内など、カンボジアのインターネット環境についてはどのように思われますか
山口 思った以上にデータ通信は快適に使えるのではないでしょうか。品質は通話よりも安定していますし、通信速度も遅くないと思います。都市部ではWi-Fiが使えるエリアも充実していますので、クラウドなども利用できます。うまく使えば、かなり快適にビジネスができると思います。
―――カンボジア支店の将来的なプランを教えてください
山口 弊社販売代理店との協業と直販・直サービスの強みをうまく活かし、効率的にオフィス市場の拡大を図りたいと思っています。人件費やオフィス賃料が高騰してきましたので、カンボジアにおいても事業の効率化が求められる環境になってきました。そういう意味で他の国同様、文書管理のニーズは高まってくるはずです。機器販売だけでなくソリューションを中心とした販売にいち早くシフトして行きたいと思っています。販売エリアに関してはプノンペン以外の地域からのお問い合わせも着実に増えてきています。今後は地方の主要都市への進出も戦略的に検討する必要があると考えています。
またプロ向けのデジタル印刷機市場を積極的に開拓して参ります。弊社はこの分野でもマーケットリーダーであり、アジア諸国で非常に高い市場シェアをいただいています。カンボジアはいまだにオフセット印刷が主流で、印刷品質も必ずしも高いとは言えません。高品質なデジタル印刷を、先駆けとしてカンボジアでもご提供して参ります。
―――業界の展望についてどのようにお考えですか
山口 ローカルのオフィス機器市場は黎明期であり、新規の需要が拡大しています。日本では殆どの企業で既にMFDを導入いただいており成熟市場と呼べますが、カンボジアでは卓上プリンターのみ、あるいはOA機器を使っていないオフィスもいまだ珍しくありません。経済規模の拡大にあわせて事業が大きくなれば、MFDは間違いなく必要になりますので、ローカル企業でのMFDのニーズは確実に拡大していくでしょう。また外資系企業の投資も堅調ですので、この分野でも伸び代は十分あります。新規需要、新規投資の情報を確実に掴み、先行してご提案することが大切だと思います。
―――日本人投資家、起業家へのメッセージ
山口 カンボジアは外資規制が緩く、参入しやすい市場であると思います。ただ業態によっては、税制などで注意すべき点もあります。市場規模は小さいですがこれからの成長市場であることは間違いありません。まずはカンボジアで現場をしっかりご覧になり、いろんな方と話しをされることをお勧めいたします。カンボジアへの進出をご検討の際はぜひお気軽にご連絡を戴けると大変嬉しく存じます。
私が2006年に上海に赴任した時は、高い成長率の中で街が活気と自信に満ち溢れていました。いまのカンボジアはそれに近いものがある気がします。成長している市場で働けるというのは、ビジネスマンとしてやりがいもありますし、何より楽しいです。「最後のフロンティア」であるカンボジアで、成長を実感しながら共に働きましょう。(取材日/2016年9月)