2016年8月18日
(前回の続き)
昨年からカンボジアのビジネスマンを対象にビジネススタディーツアーを開催しています。初回の昨年は名古屋に行き、日本の企業を訪問し日本のビジネスマンと会いました。隈丸大使には公邸で出発前の壮行会も開いていただき大変感謝しています。約20名のカンボジア人ビジネスマンは、会社訪問だけでなく岐阜県高山市の観光局に行って観光開発を学び、伝統食品の八丁味噌の商業化をどういうふうにやっているのかを見たり、多方面のことを視察してきてもらいました。
続編もまた仕込んでおり、場所を毎回変えて送り出そうと思っています。そこでまた役に立つのが先ほどのネットワークです。例えば関西経済同友会とのつながりがありますので、関西に行ったときに受け皿をやっていただけます。そうやって日本のいろんな場所のビジネスアソシエーションや県の中小企業海外展開支援部門等、いろんなところと協力関係が広がっています。ここがこれからもっと充実させるポイントです。
CJCCにはジャパンデスクが設置されています。最初は1名でしたが現在2名体制です。どんどん日本の企業が増えており、経済団体や自治体、銀行などからまとまって20人くらいの規模でカンボジアを視察しに来られます。そういう視察団に参加した後、個々の企業単独で再びいらっしゃる方もいます。昨年はひと月に7,8件ありました。CDC(カンボジア開発評議会)が会社設立、投資相談、法律的なサポートなどをしていますが、CJCCは採用人材トレーニング、ビジネスネットワークのようなところで相談を承っています。日本にいる方でこちらに来て相談される方が非常に増えています。もちろんカンボジアに進出済みの企業の方も来られて、カンボジア人社員のビジネストレーニングや日本語トレーニングのご要望にもお応えしています。
いろんな企業がどんな人材をほしがっているかっていうのを見ていると、カンボジア人と日本人との相性はいいと思います。非常に誠実で前向きで素直で、いつも笑顔な、そういう人材像がカンボジアに進出するときの一番のキーになっている人は多いです。それ以外だと英語の力が高いです。ここでも英語が公用語だけど、英語が話せる人材を雇用するのは何の苦労もありません。そしてなんといっても若いということが大きいです。平均年齢は日本の半分の23歳です。CJCCもほとんど20代の人で回しており、パワーがあります。そこがカンボジアの一番の強みだと思います。その力を活かせるような人材の使い方をしていただければと思います。
アセアンの経済統合が進んできて、まだ実際の影響は少ないみたいですが、カンボジアはどうなるのかと若い方も心配しているけど、私がカンボジアの若い人に言っているのは自分の頭で考えて創造することが重要だということです。カンボジアはインフラ、予算、経験、その他いろんなものが足りません。それをアセアンの中でカンボジアの人がビジネスの世界で互角にやっていくには、まずはインフラを整えてから、とかそんなことを考えたって追い付きません。後追いでは何年かかるかわからないし、追い付くころには周りの国はもっと先へ行っています。もっと自分の頭で考えてイノベーションを形にしていくっていうのがこの国の生きる道です。そのための必要条件はちゃんと持っています。
必要条件っていうのは失うものがないってことです。日本の戦後だってすべてなくなってから復興しました。逆に満ち足りるとなかなかイノベーションが起きないっていう問題があります。何もないのが一番イノベーションに適した環境で、それを利用しないのはおかしいです。カンボジアの人材は優秀です。ただ後追いを考えるマインドセットは、自分で何か作り出していくというふうに変えた方がいいです。途上国だからできないとかそんなふうに思っているとしたらその時点でダメです。新しいものは何もないところからできますから、若い人にはそれにぜひ気付いてほしいです。日本の企業はそこを上手くサポートしたり活用したりというふうに見てもらえれば非常に良いサイクルになると思います。(取材日/2016年2月)