2018年7月11日
――自己紹介をお願いします
タシロ・ブリンザー(以下、ブリンザー) 私がカンボジアに来たのは2001年です。以前は1990年代から2000年代前半にかけて、フォトエディターとして多種多様な国際メディアで働いていました。ドイツで雑誌の立ち上げなどもしましたね。それから2006年にサウスイーストアジア・グローブで働き始めました。
2010年には、豪華旅行を提案する“ディスカバーカンボジア”(Discover Cambodia)という年刊誌を発刊しました。外国人インテリ層向けに、カンボジアのあらゆる側面を紹介し「東南アジアの新しいハイエンドな旅行先」として提案する試みは初めてで、当時の市場に大きなインパクトを与えました。
後に、急成長する経済を形づくるプロジェクトや人々を紹介し、投資を促進する年刊投資ガイドブック “フォーカスカンボジア”(Focus Cambodia)も生み出しました。
――会社紹介をお願いします
ブリンザー カンボジアでは2006年から営業をしており、出版社や弊社の出版事業の顧客向けに、雑誌・ウェブサイトの制作と、その制作物を宣伝するデジタルマーケティングサービスを提供しています。
我々はASEAN全体に、コンテンツ制作と広告営業を行う代理店及び寄稿者のネットワークを持っています。ビジネスの肝は、最高品質のジャーナリズムとライティングであり、カンボジアの制作物についても、その国際基準と同等であるよう一層の努力をしています。
また、自社製品、ブランド、自社の社会的責任投資(CSR)活動をPRするコンテンツを求めている企業向けにオリジナル雑誌の制作をしています。
――カンボジアのメディア産業の機会と課題を教えてください
ブリンザー カンボジアのメディア産業は、他のほとんどの業界と同様、外国人投資家に非常にオープンです。これは業界にとって大きなプラスであり、そのおかげで見てわかるよう、国内には数多くのメディア企業があります。
一方、アジア在住のドイツ人メディア専門家として言えば、ジャーナリズムの基準や価値観が統一されていないことは注意すべきです。我々は、制作物の品質を保つため、修正作業もプロセスに含めるようにしています。
欠点を挙げるとすれば、ほとんどのカンボジア人は、短文かつ犯罪や政治などのニュースを好むため、あまり深くは読み込みません。私たちもより多くの読者に読んで貰いたいと思っていますし、コンテンツを調整しています。しかし、私たちのコンテンツは英語で発信されており、一般的なカンボジア人にはリーチできず挑戦とも言えますが、一方で読者層に求められていることでもあります。
ビジネス面でいうと、メディア産業は地元企業・外資系企業の双方に競争力がある分野だと、政府が保証する必要がありますね。
――カンボジアのメディア産業の見通しを教えてください
ブリンザー 信頼できる情報を持つ情報提供者とジャーナリストが作る高品質のメディアにとって、市場は成長し続けるでしょう。 ますます多くの人々が英語を話し、読み、経験豊富な編集者によって精査された質の高い情報を求めています。
中でもプノンペンは、将来的には様々なメディア産業でうまくいく可能性があり、クリエイティブ産業の重要な拠点になる可能性があると考えています。多様で創造的なコンテンツがここカンボジアで成長し続けてきたように、政府はカンボジア経済を、外資系企業にオープンにすることが重要です。
また、すでに映画製作、広告、アニメーション、アプリ開発などの分野でカンボジアの企業は非常に高いレベルにあり、ますますよくなっています。 機会は増えていますが、まずは認められ、役割を果たすことが求められます。
――会社としての将来の展望を教えてください
ブリンザー 私たちは、メディア製作者としてカンボジアに傑出した足跡を残し、地方へ広げたいと思っています。実は、私たちのコンテンツの80%は他国の読者をターゲットにしており、その成長の可能性は莫大です。カンボジアで起こっている出来事に興味を持つ人が世界中にいるでしょう。近い将来はより多くの投資を行い、クメール語でのコンテンツ開発も検討しています。
私たちは、質の高いメディアと情報に可能性を感じており、特に信頼できる情報源を手元に持つことが重要だと考えています。私たちはその源泉となり、情報を中心にビジネスを成長させたいと考えています。
――最後に、読者へメッセージをお願いします
ブリンザー 案件を見極めることが大事です。カンボジアは驚異的な成長を遂げており、現在もさらに多くの業種が拡大しています。投資の機会は大小あり、ニッチな市場を開拓することができるでしょう。
しかし、適切なパートナーと巡り合うためには、十分な情報を得て、問い合わせを行って疑問点を確実にすることが非常に重要です。
(取材日/2018年4月)