2016年6月6日
―――以前と比べて、カンボジア中央銀行との関係性で変わった点を教えて下さい
ソー・フォナリー(以下、ソー) カンボジア中央銀行は、もちろん権威を持ち、銀行の法令遵守を見守る立場ではありますが、利益の上げ方、自国通貨の流通などに対して、民間銀行が意見することもあります。民間銀行にとって、制限する立場であり、パートナーとしての情報共有を以前より行っていると思いますよ。
―――サービス競争はますます激化しますが、その点についてはどう思われますか
ソー 2015年の報告書では銀行全体では47銀行、マイクロファイナンスは58機関あります。そして今では銀行は48行、マイクロファイナンス61機関にまで増えており、総額は5000万ドルにも上ります。おっしゃる通り、各銀行もネットバンキングやモバイルバンキングなど様々な付加価値を提供していますよね。
アクレダ銀行もたくさんのチャネルを持ち、258の支店は国内最大のネットワークを誇っています。好評なのは、モバイルバンキングですね。祝日等で支店が閉まっていても、家で携帯電話を使うだけで、請求書の支払いや口座間の資金移動が出来ます。こう言った便利なサービスをアクレダユニティと呼んでいます。携帯のみでファイナンシャルサービスがオンタイムで受けられ、より便利になりました。
―――銀行の資本要件が引き上げられることについては、どう思われますか
ソー 良い動きだと思います。資本金が増加することで、地元銀行、外資系銀行、マイクロファイナンスともに信用力が高まるためより強い銀行になっていきます。充分な資本を持つことで、人々の預金引出しに備えることが出来、お客様にとっては少ない金額で誰もが口座を開設出来るようになります。お客様の預金を守ることが出来、お客様からの信用度も高まるかと思いますよ。
また、人々が予想するように合併や統合も起こり始めるでしょう。統合し、強い銀行が生まれることで、成長もより急速でスムーズになります。2年以内に要件を満たさなければならず、この2年間にわたり銀行は大きく変わっていくでしょうね。
―――カンボジア人の意識については、変化した点はありますか
ソー 5年前から考えると、カンボジア人の銀行への信頼度はますます高まっています。以前カンボジア人にとって、お金は家族のために使い、現金は家に置くのがスタンダードでした。1997年に11銀行が倒産したのが理由ですね。それがきっかけで銀行に預けるのをためらう人が多かったのです。そのため、中央銀行は銀行設立の制限を緩やかにし、株主資本やライセンスの取得がしやすくなり、銀行数も増えて行きました。
その甲斐あって銀行の信頼性が増し、タンス貯金をしていたカンボジア人も、今は銀行に預けています。口座開設も手間がかからず、銀行口座間の資金移動も簡単になりました。また銀行に預ける方が安全性が高く、高い金利も理由の1つですね。
―――ドル化のメリット及びデメリットを教えて下さい。
ソー 見れば分かりますが、カンボジアはかなりドル化していますよね。田舎の小さな商店でも、買い物をするとドルで金額を言われます。私はドルよりもリエルを使いたいので、そんな時「あなたも私もカンボジア人でしょ?なぜあなたはリエルを使わないの?」と言うこともあるんですよ(笑)。
メリットとしては、海外からの投資家にとっては、ドルで投資が出来るので為替リスクが低くとても魅力的です。ミクロ経済的には経済が強い時はドル化は成功し、政府と経済の安定をもたらすでしょう。
デメリットは、自国通貨のアイデンティティが無くなり、人々の民族意識が薄れる可能性があることですね。リエルはここ5年間、ほぼ1ドル4000リエルを保っており、国際貨幣に比べても安定していますよ。しかしドル使用の制限がないため、リエル紙幣の循環はまだ低いです。ただ、人々はここ数年でリエルを使う機会は多くなっていると思います。政府はドル使用の制限こそしていませんが、税金支払いをリエルでするなどリエル使用の動機付けをしていますね。政府が電力をドルで買っていても、電気水道料金もリエルですよね。
―――アクレダ銀行の最新のサービスを教えて下さい。
ソー 今年2月に、消費者向けのクレジットカードサービスを開始しました。もちろんお客様の信用保証状況に応じますが、月々の限度額は最大5000ドルです。買い物や旅行など個人的な目的でお使い頂けますよ。
―――金融業界の将来の展望を教えて下さい。
ソー 今後も上昇しますね。アクレダはもちろん銀行業界全体でも毎年、いえ毎月のように上昇していますから。融資金額では2014年に74億ドルだったのが2015年には119億ドル、預金額では2014年100億ドルが117億ドルに。預金額はアクレダだけでも27億ドル以上です。法令遵守は守りながらも、法規制が弱いのは事実なので、その間まだ強い上昇は続くでしょうね。全ての銀行で融資額と預金は上がり続けると思いますよ。参入したい人たちも興味を持つでしょうね。
マイクロファイナンスももちろん上がります。今後2年間かけて、資本要件の増加を求められるうちに、銀行はより強くなり、人々からの信用度もより高まるでしょう。(取材日/2016年4月)