2014年12月27日
――何がきっかけでこの分野での企業となったのですか。
ンガイ・メンリー(以下、ンガイ) 人材調達のコンサルや人材教育、人材派遣を主に行っておりまして、開業は1年余り前です。それまでは不動産業や保険業、カスタマーサポートといった様々な業界で、主に営業の仕事を経験しました。営業という仕事は、どんな業界でも必要とされる職種であり、社会人としての基本的なスキルであると考えています。営業の成果は目に見えやすいので、その成果の大きさに応じて収入も多くなりますから、やりがいがあって楽しいです。
しかし、営業成績を上がり収入が多くなったとしても、私は営業という仕事を追求してみたかったので、収入が下がっても良いから、違う業界の営業の仕事を探して転職をし、そこで一定の成績をあげて満足したら、また別の業界に移るというようして、経験を積みました。
起業するにあたって、元々は保険業界で働いた経験を活かし、保険会社を作ろうと思っていたのですが、社会の状況を見渡した時、人材業界の可能性を感じました。というのも、現在、カンボジアの若者は大学を卒業しても中々良い仕事に就けないという声を多く聞いていましたし、求人と求職の双方をつなげる仕事をしてみたいと思うようになったのです。
――今カンボジアの就職に於いてはどんなスキルが求められていますか。
ンガイ カンボジアにおいて就職しようとするなら、コミュニケーションスキル、フレキシビリティ、語学力(タイ語、英語、韓国語、日本語等)が特に今は求められています。語学力が無い人は仕事の選択肢が減りますので、最低でも英語は必要ですね。現在の大学の制度では一般教養課程が主ですから、例えば、観光や科学、IT等の専門課程を大学で学んでいたとしても、それほど深く追及して勉強できていないのが現状のようです。現在、弊社の大学生に対する人材育成は休止中ですが、将来的には自社施設を持ち、継続していきたいですね。
なぜなら、若いということは、そもそも可能性を秘めているということでもありますし、将来性のある若者の就職難をサポートしていきたいと思っているからです。大学を卒業すると、一部の学生は自分の田舎に帰って家業を手伝ったりする機会がありますが、当然のことながら、そのような仕事は収入が低くく、ほとんど休みなしで働いているのも現実です。
カンボジアの大学進学率は4%と言われていますので、絶対数は少ないのですが、なぜそこにターゲットを置くのかというと、単純に言えば、多くの若者が困っており、個人的に見捨てられないということです。大学生をターゲットにするという時点で、マーケットは限定されてしまうことは承知していますが、彼らは仕事を求めていてもどこに行っていいのかもわからなかったり、集約された情報もない中で就職活動をしているのですから。
――では、人材教育においてはどのような点に重きを置いていますか。
ンガイ 私が今日までさまざまな業界で経験を積みましたので、それを活かして、様々な分野(IT、カスタマーサービス、保険等)向けの人材教育を行っています。スキル面からいうと、近年の労働市場は変化してきていると感じます。なぜなら、労働市場はより高い専門性を求めており、語学や会計といった分野などでは、大学などの教育機関もこれに呼応した動きが見られます。ただ、私はもっと労働市場の要求に合わせて変わらなければならないと思っています。雇用する側から見て、欠けていると思われるスキルに、コミュニケーションスキルや語学力があります。しかし、若者は大学卒業後、お金が必要なために熟考せずに就職しがちです。大学では基礎しか学んでいませんから本当は就職の前にもう少し専門的に学んだ方が良いと考えています。
――来年発足予定のAECの影響はどのようにお考えですか。
ンガイ 人材業界も活発になるでしょうね。カンボジア人はのんびりしているので、AECが間近に迫っていることも今はさほど影響ありません。いざ、その時が来ると急激に活発化するのではないかと考えています。現在は、AECに向けてあまり準備していないということです。AECが発足すれば、おそらく様々な分野でカンボジアに進出する企業が増え、これに併せて求人も増えるものと思います。これに伴い、必然的にスキルアップする必要が出てくるでしょう。例えば、近年は日本企業の進出が増えているので、日本語を学ぼうとする若者も増えてますよね。もちろんスキルを身につけるにはそれなりに時間がかかりますが、例えば、日本語というスキルを取り巻く環境が、進出企業の増加によって変化してるのと同じように、AECの影響が社会に出てからでないと、人材教育の面でも環境は変化しないと思いますし、環境が変化すれば急激に活発化するものと思います。
―進出を考える日本企業にメッセージはありますか。
ンガイ どんどんカンボジアに進出してきてください。ただお願いがあるですが、もう少しこの国の給与体系を勉強してきてほしいですね。日系企業がこの国に投資するのは喜ばしいことです。カンボジアはこれから変わっていくと思います。特にサービス業、不動産、教育分野は激変すると思います。
――日本の読者向けにお聞きしますが、お好きな日本食は何ですか。
ンガイ お寿司です。最近はHANAMIという和食レストランに行きました。そこで携帯を落として画面が割れたのでよく覚えています(笑)。(取材日/2014年8月)