カンボジアでは、金融の近代化とインクルージョン推進の一環として、ブロックチェーン技術を活用したデジタル金融の整備が加速している。カンボジア国立銀行(NBC)はすでに中央銀行デジタル通貨(CBDC)「バコン(Bakong)」を運用しており、現在では民間部門主導による新たなデジタル金融プロジェクトも動き始めている。
同国最大の商業銀行であるアクレダ銀行は、2024年からブロックチェーンを活用したデジタル融資プラットフォームの試験運用を開始しており、同様の取り組みが他の民間金融機関やスタートアップにも広がりを見せている。
クレジット評価や担保の可視化、送金履歴の一元管理などにおいて、ブロックチェーン技術は「透明性」「即時性」「耐改ざん性」の面で有効とされ、農村部の中小零細事業者にとっても資金アクセスの改善が期待されている。
また、カンボジアのFinTech企業「Clik」や「Pi Pay」などは、ブロックチェーン技術を利用したスマート決済サービスの開発を進めており、決済や与信審査を効率化する仕組みの社会実装に向けた連携が強化されている。
NBCのチア・セレイ総裁は「カンボジアはブロックチェーン技術の活用において地域の先進事例となる可能性を秘めている」と述べ、「民間主導の技術革新を後押ししつつ、制度的整備にも注力していく」との方針を示した。
NBCは、新しい金融技術をすぐに全国展開させるのではなく、「安全なテスト環境の中でまず少人数・少額で試してみる」仕組みを導入している。これにより、企業は実際の運用リスクを限定しながら試験的なサービス提供ができ、規制当局も効果や課題を把握できる。たとえば、「バコン(Bakong)」によるクロスボーダー送金や、スタートアップ企業によるブロックチェーン決済アプリの一部機能は、このような枠組みのもとで段階的に導入されてきた。
ただし、ブロックチェーン導入の普及には、リテラシー格差や通信インフラ、データ保護法の整備など、制度面・技術面での課題も残る。今後は、公共部門と民間の協働による持続可能な運用体制の確立が問われる局面に入っている。