カンボジアの観光産業を支える重要な柱の一つである飲食業(F&B)業界が、深刻な人材不足に直面している。業界関係者は、政府および関係者が早急に対策を講じなければ、観光業や経済全体に壊滅的な影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしている。
この危機の主な要因として、専門的なスキルを磨く場の不足、ASEAN諸国間での外国人労働者の獲得競争、そして比較的低い給与水準が挙げられる。
米国出身の長年のF&B投資家であるJovany Antonio氏は、「カンボジアには学校や課外プログラムを通じた適切な職業訓練機関が不足しており、経験豊富なスタッフの確保が難しい」と指摘する。また、企業が従業員を育成しても、競合他社に引き抜かれるケースが多発し、企業は新たな人材を育成し続けなければならない。これは時間とコストの負担が大きいサイクルを生み出している。
一方で、給与の引き上げや追加のインセンティブを提供することで従業員の定着率を向上させることができるという。例えば、チップの増額、教育費の補助、キャリア成長の機会を提供することで、従業員が企業に留まりやすくなる。
飲食業界における熟練労働者の不足が深刻化は、専門的な職業訓練の機会が限られていることや、労働者のスキル向上のための教育プログラムが十分でないことが一因と考えられる。また、近隣諸国と比較して給与水準が低いため、熟練労働者が他国へ流出する傾向も見られる。
タイやベトナムと比較すると、カンボジアは労働者のスキル開発や職業訓練の充実、労働環境の改善、そして競争力のある給与体系の構築が求められる。これらの取り組みを強化することで、国内外からの人材確保が可能となり、飲食業界の人材不足の解消につながるだろう。