【IT・通信】
2013年には人口1500万人に満たない小国に8社もの通信キャリアが移動通信サービスを提供していたカンボジアの携帯市場であったが、合従連衡の波が一気に押し寄せた。現在はベトナム系キャリアであるヴィッテルを母体とするメットフォン、マレーシア系キャリアであるアクシアタを母体とするスマート、カンボジア有力財閥ロイヤルグループとルクセンブルグ系MCIの共同出資によるセルカードの3大キャリアが市場をほぼ制圧している。
小さな市場で競争が激化するなか、各通信キャリアは進化する顧客ニーズの取り込みに必死だ。通信会社にとっての従来の主な収益源は音声通信やSMSであったが、今は主にデータ通信によってアプリや動画を楽しむユーザーからの収益に移行しているのは世界的な潮流であり、カンボジアではその変化速度が他国よりも速いと言われる。老若男女問わずほぼ常時にFacebookやLINEといったソーシャルネットワークサービス(SNS)に触れている状況だ。
2009年4月に8番目の通信キャリアとしてスタートした後、積極的なM&Aにより業界2位にまで駆け上がったスマートアクシアタのトーマス・ハント氏は、「通信インフラ的にカンボジアは後発途上国ではない」と言う。同氏は、「ベトナムやタイと比較すれば同等もしくはそれ以上の発展レベルです。カンボジアでは4Gが広範囲かつ十分手の届く価格で利用可能ですが、ベトナムには4Gはありませんし、タイでは2015年に導入されたばかりです。通信インフラや質、サービス内容が良いので、ビジネスにもカンボジアは適しています」と語る。
市場の変化への対応もスマートは迅速だ。同氏は、「我々は、特にデータネットワークに集中して投資してきました。2016年の投資額は過去最大で、4G通信網整備のために7500万ドルを費やします。4G LTE はデータ通信に特化しており、我々は2年半以上前にカンボジアで初めて導入しました。競合他社は4Gにあまり投資していなかったので、その隙にこれまで以上に投資を加速させているところです。すでに基地局の45%が4Gを導入しました。通信が速くなってストリーミング再生などに最適なため、ユーザーも驚くべき体験をするでしょう」と話す。
先進的な通信インフラの拡充だけでなく、若者向けのサービスやCSR事業へも注力するスマートアクシアタのハント氏はまた、「スマートはコンテンツの提供にも力を入れています。約1年前に音楽ストリーミングサービスを開始しました。国際的に有名なアーティストらと独占契約し、彼らのオリジナルコンテンツを提供しています。アーティストもそこからきちんと収入を得るというメリットがあります。
また、動画ストリーミングサービスもYouTube以外にカンボジアに登場するでしょう。NetFlixは既に上陸しました。我々もパートナーシップベースで、カンボジアでの動画ストリーミングサービス開始に向け動いているところです。動画コンテンツの需要は高いです」と語った。
インターネット環境も良好だ。主要市内の主な飲食店やホテルでは無料WiFiが当然のように設置され、ほぼどこでも当たり前のように高速インターネットが利用できる。また、ネット環境の品質向上にともない、人々のサービス需要は多様化している。
業務用に特化し国内最大手ISPとなったイージーコムのイヴ・シェフェール氏は、「通信業界は目まぐるしく変化していますし、スピードや品質など、非常に成長しています。我々のようなオペレーターの拡大も急速ですね。カンボジアでも、最近は新商品の発売やプロモーション、案内などもほとんどWebサイトを通じて行います。しかし、法人の利用頻度が高いのはデスクトップのWebサイトですよね。これは昔からある使用方法のため、法人向けには必ずしも最新のネットワークが必要というわけではありません」と語る。また、同氏は、「人々のインターネット欲求の高まりと同時に、需要も益々増加すると思います。
また、事業の境目はどんどんなくなっていくでしょうね。現在、法人向けにはデータセンターとホスティングサービスを行っています。また、個人情報や企業情報保護など『守る』ことにも力を入れています」と述べた。