カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

2016年6月10日
カンボジア進出ガイド

【人材・コンサル】

123 カンボジアのHR&コンサル①(2016年5月発刊 ISSUE04より)

カンボジア人の特性 Characteristics of Cambodian staff

122 カンボジアの通信&ITの続き


 多くの経営者はカンボジア人に対する共通した感想を持っている。彼らはフレンドリーで礼儀正しいが、上司に対する進言などは少ない。だからこそスタッフとよく話すようにするのが良いだろう。彼らは自ら話さないだけで仕事に対して想いやアイディアを持っており、それを引き出すことはとても有用である。

 2005年創業、100名以上のスタッフを擁し7万人の求職登録を誇るカンボジア最大の人材会社、HRインクのダミーコ氏は、「カンボジア人は基本的に新しいことや学ぶことが大好きですし勤勉です。しかし教育システムが不完全なのでハンズオン支援が不可欠です。ただ機会を与えれば努力しますし能力を発揮します。日系企業は規律がきちんとしている分、カンボジアでは苦労するかもしれません。忍耐力とルールなどの明確化が必要かと思います。最初は日系企業の厳しさに付いて行くのが大変だと皆言います。しかし働いているうちにその良さが伝わるのか、働きたい企業の上位になっています」と語っている。



 JICAの協力により設立され、民間セクター開発を促進するための人材育成とネットワーキングの拠点となっている施設、CJCC(カンボジア日本人材開発センター)の伴俊夫氏は、「カンボジア人の日本そのものへの関心も非常に高くなっており、その結果日本語学習者も確実に増えているわけです。そして何と言っても若い人たちはとても親日であると言えます。これは人材としては大きなポイントだと思います。それ以外だと英語の力が高いですね。CJCCでは英語が公用語ですが、英語人材を雇用するのは決して難しくありません。人材の特徴は誠実で前向きかつ素直で、いつも笑顔である。これまでお目に掛かった日系企業の経営者の皆さんのうち、このような人材像がカンボジアに進出するときの一番のキーになっている方は多いようです」と語る。

 カンボジア人の多くは家族や親戚、友人らと共同生活をしており、一人暮らしは稀だ。理由として生活費の節約が挙げられるが、むしろ精神的な支え合いに重点を置いている傾向が強い。親の進言で採用を辞退したり、職務より個人的な用事を優先するなど、親からの過剰な干渉や強い依存関係に起因した行動が会社運営にも影響を与えるため留意が必要だ。

カンボジア人の働き方 Cambodian work ethic



 カンボジア人は帰属意識は低い反面、独立意識が強い。その背景として、主な働き先であるローカル系企業での極端な同族経営が挙げられる。なぜなら、このような会社で働く従業員は、努力しても昇進・昇給が難しいからだ。フリーランスで副業をする者もおり、顧客情報や技術・知識の流用が懸念される。就業規則や誓約書により同業他社への転職等を抑止する企業もある。

 また、元厚生労働省出身で、日系の大手人材紹介会社クリエイティブ・ダイアモンド・リンクス(CDL)の鳴海貴紀氏は、「彼らは希望給与額を現職給与額より下に設定することはほとんどありません。転職が賃金アップの有力手段であると安直に考えている向きがある。成果を出せば昇進・昇給できるというロールモデルを社内で構築できれば、人材の流出を防ぎ、従業員は業務に集中することができます」と言う。



 2008年から人材開発や労務コンサルタントを行うローカル人材会社、Aプラスのソー氏も、「仕事への考え方の違いを理解する必要があると思います。日本人は遅くまで残業したり、その日の仕事が終わるまでは家に帰らないという文化・気構えがありますが、カンボジア人は仕事時間が終わるとすぐに家に帰りたがる傾向があり、残業は顧客とアポイントがある時だけでしょう。理由の一つは日本のようにきちんとした仕事に対する教育を受けていないことがあります。カンボジア人の事を怠惰だとは言えません。なぜならそこには様々な文化的背景や要因があるからです。日本人はカンボジア人に日本の仕事文化や働き方を教え、仕事に責任を持って働いてもらうためにも、勉強・理解と辛抱強さが必要です」と語る。

 HRインクのダミーコ氏は、「日本のやり方を理解するマネジメントを作り上げることはとても重要です。またスタッフに日本を体感させることも大事です。日本人が多すぎる等通訳を多く介在させている会社の場合、問題に直面するかもしれません。成功させるコツはカンボジア人中心のマネジメントチームを作り上げ、彼らにスタッフの育成をさせることだと思います。その際もスタッフに日本流を体感させることを忘れてはいけません」とアドバイスした。

労働時間・最低賃金 Working hours & minimum wage

 労働法では、労働時間は1日8時間、週48時間と定めている。残業は通常賃金の50%増しで、午後10時~午前5時までや休日は100%増し。有給休暇は1か月につき1.5日(年間18日)と定めている。

 また、2015年10月、労働職業訓練省より最低賃金に関する省令が公布され、2016年の縫製業、被服業及び製靴業に従事する労働者の最低賃金は月額140ドル(試用期間中は135ドル)に決定された。2015年の128ドルから9.4%増。一昨年から昨年にかけての伸び率28.0%増と比較すると小幅な伸びとなった。政府が定める最低賃金額に自国通貨(リエル)を使用しないことは世界的に異例。為替が対新興国通貨でドル高基調となる際は、ASEAN内において相対的に労働コストが高くなることを意味する。
124 カンボジアのHR・コンサル②へ続く


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