【医療・医薬】
(095 カンボジアの医療・医薬②から続き)
カンボジアでは衛生環境への配慮が欠かせない。ローカルの飲食店や市場では適切な衛生処理が行われていない場合が多く、不衛生な飲食店を避ける、氷・水を飲むことを避けるなどの配慮が必要だ。また、野菜は煮沸するかよく洗い、寄生虫の卵などを口にしないよう注意も必要。さらに熱中症などにも注意が必要で、強い日差しに当たりすぎないことも大切だ。サンインターナショナルの荒木医師は、「特に男性にですが、中性脂肪や尿酸の異常に高い人が多く見られます。血管が硬くなったりつまりやすくなったり、痛風や糖尿病に繋がるため、毎日の食事の総カロリーや栄養素について、時々見直しをすることが大事です」と食事管理の必要性を述べている。また、少なくとも年に1回の健康診断によって健康状態を把握することも重要であり、レントゲン検査・エコー検査・各種血液検査等を行なう企業健診を提供しているクリニックも多い。一方、サンインターナショナルクリニックのようにアンチエージング治療に力を入れており、プラセンタ注射・高濃度ビタミン点滴・ニンニク注射などの治療を行なうことができる環境もカンボジアにて整ってきている。
カンボジアの入国に際して予防接種の義務はない。カンボジア滞在にあたり、ケン・クリニックの奥澤医師は、「予防接種はA型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎、腸チフスの6種類をこの順番で受けることを勧めています。日本ですべて受けると半年ほどかかります。カンボジアでは日本と比べて非常に安価に摂取することができますので、カンボジアで摂取するのも良いと思います」と述べている。日本なら全部で20万円を超える予防接種が、ケン・クリニックでは300ドル以下で行なうことができるという。なお、現地の医療機関でワクチン接種の際は、事前予約が必要となる。
カンボジア国内の薬局では、処方箋なしでも薬を購入することができる。だが、医学知識のないスタッフによって経営されていることが多く、アドバイスを受けることは期待できない。品質が粗悪であったり、保存状態が適切でない場合もある。アメリカで薬剤師資格を取得し、アメリカで薬局を経営した経験のあるウエスタン・ファーマシーのチア・ビラック氏は、「カンボジアの薬局では医薬品の倉庫の温度管理ができておらず、日光が当たることで品質が劣化しているところが多い」と語っている。
カンボジア国民は経済的な事情から、病院・クリニックを受診する前に、まずは薬局で薬を購入して治療しようとする傾向が強い。なぜならば、病院を受診するよりもお金がかからないからである。しかし、薬局では薬剤師の大学を卒業していないスタッフが処方箋なしで医薬品を販売している所も多く、市民が適切な医薬品を入手できているとは言い難い。ウエスタン・ファーマシーのチア氏は、「自社では、薬剤師の教育に力を入れており、お客様の健康状態を適切に把握できるようにしています。健康状態によっては、病院の受診をおすすめしています」と語っている。近年はチェーン展開する薬局も増えており、薬局の水準も徐々に上がってきている。
(097 カンボジアの医療・医薬④へ続く)