【法務・会計】
(025 カンボジアの法務・税務・会計①からの続き)
東南アジアで展開するヴィーディービー・ロイの日系企業担当ディレクターの石本由美氏は税務署の監査実態について、「税務署が課税対象とみなし、本来は支払う義務のないものまで追加徴収してくることがありますが、根拠法と実例を持ち出し理論的に取り下げる交渉ができます。税務署側が間違っていることもあります。税務署の言いなりにしか動いてくれない専門家もいますので、まず専門家パートナー選びが重要になります」と語っている。このような状況の中、税務署による外資企業向けの調査はかなり厳しくなってきていると言う。
ベトナム・カンボジアのビジネスに精通した会計事務所系コンサルティングファーム、アイ・グローカルの松村侑弥氏によると、「最近では資金管理の部分に関しての指摘が増加しています。現地法人設立の際には資本金を払い込む必要がありますが、事業活動を行う上でキャッシュが不足し、親会社から追加で送金を受ける企業が多くあります。現地法人側では当該取引の処理として、増資手続きもしくは親子ローン契約を締結する必要があります。増資手続きは定款を変更する必要があり、商業省および税務局にて申請が必要となるため、変更完了までおよそ2~3ヶ月の時間と手間がかかります。また、親子ローンの場合は契約書を作成し、利息の設定を行い、管轄税務局へ通知を行う必要があります。これらの手続きを踏まえなかったばかりに、親会社からの送金が現地法人の売上としてみなされ、申告漏れを指摘されるケースなどが目立ちます。また親子ローンとした場合、税務局への通知を怠ったばかりに恣意的な利率を税務局より設定され、利息に対する源泉税の申告漏れもしくは過少申告を指摘されるリスクがある旨にも留意が必要です」。
辻・本郷税理士法人の松崎氏によると、「税務署による調査において、税法規定はもともと存在してはいるものの今まで運用されないまま指摘すらされなかったものが、突然運用し始めて指摘してくる場合もあります。企業側としては、今更それを指摘されても…、という話なのですが、税務署は最長10年まで遡って是正を命令することができますし、こちらも資料を全て保存しておく義務があるわけですから、そのインパクトは小さくありません。しかも調査の際に指 摘に対する根拠規定を示してくれない、税金の計算が誤っているなどと、正直お粗末な状態です」と、調査の現状について語った。
(027 カンボジアの法務・税務・会計③に続く)