【法務・会計】
東南アジアで展開するヴィーディービー・ロイの日系企業担当ディレクターの石本氏は税務署の監査実態について「税務署が課税対象とみなし、本来は支払う義務のないものまで追加徴収してくることがありますが、根拠法と実例を持ち出し理論的に取り下げる交渉ができます。税務署側が間違っていることもあります。税務署の言いなりにしか動いてくれない専門家もいますので、まず専門家パートナー選びが重要になります」と語っている。
このような状況の中、税務署による外資企業向けの調査はかなり厳しくなってきていると言う。日本国内最大規模の税理士法人のカンボジア法人である辻・本郷税理士法人の松崎勇人氏によると「税務署による調査において、税法規定はもともと存在してはいるものの今まで運用されないまま指摘すらされなかったものが、突然運用し始めて指摘してくる場合もあります。企業側としては、今更それを指摘されても…、という話なのですが、税務署は最長10年まで遡って是正を命令することができますし、こちらも資料を全て保存しておく義務があるわけですから、そのインパクトは小さくありません。しかも調査の際に指摘に対する根拠規定を示してくれない、税金の計算が誤っているなどと、正直お粗末な状態です」と、調査の現状について語った。
JBLメコン薮本氏は、「カンボジア等の新興メコン諸国では法律と運用の間に必ず乖離があります。こうした国での事業進出、展開を成功させるためには、現地に根づいた日本人弁護士の知識・経験と現地法律家の強固なネットワークを土台としたリーガルサービスの活用が必要不可欠だと思います」と、カンボジアビジネスの現状についてアドバイスしている。
ルール整備はされていてもその運用状況に難あり、という一筋縄ではいかない法律環境において、ヴィーディービー・ロイのエドウィン・ヴァーダーブルッゲン氏は、企業のパートナーとなる専門家のあるべき姿についてこう語る。「法律によればこうですよ、と言うだけなら簡単で誰にでもできます。困り果てたクライアントが来るのを待って、法律に関する質問に答える。小さな調査書を渡し、法律ではこうなっていますよと助言して、あとは幸運を祈るだけ、そして請求ですね。こんなやり方では、カンボジアの企業法務の問題を解決することはできません。より踏み込んだ手法が必要となるんです。問題を解決するためには、具体的にどの省庁と、いつ、どうやってやりとりして、いくらぐらいで済ませるべきかといったような、極めて実践的な経験と知見が必要とされるのです」。
シャーロニ&アソシエイツのシャーロニ氏も実践的なアドバイスとしてこう語る。「法律を順守すると決めた以上は、よくありがちな“政府関係の親族です”と言い寄ってくる仲介人などは相手にしないことです。問題に直面した時、彼らは安易な提案をしてくるでしょうが、その関係者が抜け、万が一あなたがやるべきことを手順通りやっていないということが表面化した時、あなたは大きな代償を払うことになるでしょう」。
法律条文や判例を机上で講釈する専門家よりも、いかに実践的に顧客の法律・会計実務や諸問題と向き合い、解決に向けて共に動いてくれるか。専門家としての資格や肩書きよりも、リアルな実務経験と協業スタイルがパートナー選びにあたっての重要なポイントとなるようだ。