「我々が、カンボジアのIT業界の台風の目になる。」そう話すのは、本人もIT分野で起業し、データアナリティクスで日本のシェアトップまで登り詰めた猪塚武氏。現在はカンボジアのキリロムで、世界で戦えるIT人材を育成する大学を経営している。そんな『キリロム工科大学』では、今年10月に、待望の第1期卒業生が誕生。カンボジアの平均月収の20倍近くを稼ぐ、モンスター新入社員となる。収入もITレベルも、まさに圧倒的。圧倒的な人材の受け皿として、猪塚氏は何をするのか。カンボジアで、これまでになかったIT事業がスタートする。
我々はリゾートや大学のイメージが強いと思いますが、IT事業も世界トップレベルです。その証拠に、デロイトトマーツが発表した「テクノロジー企業成長率ランキング2017デロイト アジア太太平洋地域テクノロジー Fast500」で、我々はASEAN諸国と日本を含めたランキングで1位を受賞しました。
カンボジアにはレベルの高いITベンチャーがないと思われがちですが、我々だけは別格ということです。また、カンボジアのIT企業は、アメリカなどの先進国からIT技術を輸入・転売しているだけで、製品を作っているところはほぼありません。しかし我々は、ゼロから製品をつくっており、カンボジア発のプロダクトをたくさん持っています。
カンボジアのIT業界の問題点として、「夢はITエンジニアです」と語るカンボジア人が少ないことです。なぜならIT業界で成功してお金持ちになったカンボジア人がいないからですね。
我々がレベルの高い大学を作ったとしてもスポンサーしてくれるのはみんな日本企業。だから我々は、レベルの高いエンジニアを必要とする会社をカンボジアに作らなければならないと思いました。それがキリロムなんです。
今回、キリロム工科大学の1期生が卒業します。卒業生で一番高い年収は380万円位ですね。月給では30万位です。彼女は日本に就職するんですが、しかし、何年か働きカンボジアに戻ってくる際、彼女の高い能力を生かせる会社がありません。
我々はそういった卒業生を受け入れられる会社を作らなければならないという課題がありますね。もちろんそのような会社が他にあればいいのですけど…今のところはありません。また、学生は在学中にインターンをしますが、実力を養うインターンが出来るような企業はなく、それも必要だと思っています。
今回卒業する1期生は22人で、7人は年収300万を超える報酬を得ています。ちなみにカンボジア人学生は、スポンサー企業に就職し4年間働いた場合、大学4年間でかかる学費・生活費は一切払う必要がありません。
また、大きな変化として、生徒のグローバル化が進み始めました。キリロム工科大学は開校以来カンボジア人学生のみを受入れてきました。しかし今年4月には、日本からの学生たちが14人入学しました。さらに今後は、インドなど様々な国から学生が入学する予定です。在校生のインターナショナル化によって、生徒同士の相乗効果が生まれることを期待しています。
学生やスタッフが増えるにつれて、不動産事業開発も変化してきました。以前は、「キリロムに、セカンドホームとしての別荘を持ちませんか」と言う話をしていましたが、現状ファーストホームの需要が高く、我々もそちらに注力しています。
キリロム工科大学に通う学生、勤務するスタッフにはキリロムがファーストホームです。我々は、大学と連携するため優秀なITエンジニアを誘致しており、彼らの子供がレベルの高い教育を受けられるよう今年9月に小学生を対象にブイキリロムインターナショナルスクールを開始します。
我々が、給料の高い仕事とレベルの高いインターナショナルスクールを提供することで、安心してキリロムをファーストホームにする準備を進めています。
現在、学生を中心とした、約48個のテクノロジー系プロジェクトが進行しています。これまでも、学生向けのアプリ開発コンテストやハッカソンでは、のきなみ優勝や準優勝など、高い結果を出してきました。これが今後、花開いていくだろうと思っています。
「学生発ベンチャー」というのはよく聞くと思いますが、我々は、大学自体がまるごとベンチャーとなる「大学発ベンチャー」を目指しています。
そのような、高原リゾートと全寮制大学を融合した都市開発計画は、その高いポテンシャルと実現性から、日本のイノベーション・カンファレンス 「Industry Co-Creation™(ICC)カンファレンス」の 「STARTUP CATAPULT -スタートアップの登竜門-」で2位を獲得しました。
我々は、今後カンボジアのIT業界の中で、大きな台風の目になると思います。我々がこういう方向だと思ったというところにリードしていく。カンボジアのIT業界の方向性を決めていければと思います。
学生は、奨学金で学費と生活費を賄い、加えてインターンシップを行うことで経済的価値を生み出しています。いわばアルバイトをしながら、大学に通う。まさに苦学生ですよね(笑)。ただキリロムの場合、そのアルバイトが授業と密接に紐づいています。企業としては、どんな人を採用したいかというと、仕事ができる人です。先生が学生を評価するのではなく、インターンシップにより、成果を納品することで評価される。実際にインターンシップも数多く動いています。スポンサー企業にとっても、学生にとっても、まさにドリームスクールなんです。
早稲田大学理工学研究科を卒業後、東京工業大学で修士を取得。アクセンチュアを経て1998年に株式会社デジタルフォレスト社を設立。WEBアクセス解析の分野で日本シェアトップまで育て2009年にNTTコミュニケーション社に事業売却。
2011年12月よりA2A Town (Cambodia) Co., Ltd.を設立。高原リゾート、大学、産業クラスターを含む「リゾート学園都市vKirirom」を経営する。世界的な起業家組織EO(Entrepreneurs’ Organization)の日本支部会長、アジアの理事も務めている。
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