カンボジアに進出する日系企業のための
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特別レポート(2017/05発刊6号より)
陸路国境ポイペト、 混沌からの脱却なるか~カジノと国境交易で栄えたカンボジアの”陸のカオス”が、 日系企業が主導する「タイ+1」の新たな製造拠点に?変貌の過渡期にある国境の街の今~(2/4)

 カンボジア北西部、タイとの陸路国境の街ポイペト。古くよりタイとカンボジアをつなぐ交通の要衝として多くの多くの人が旅や行商のために行き交い、大量の物資が流通する陸路交易の交錯点として長く栄えてきた。一方、タイ国境とカンボジア国境に挟まれた「不思議な空間」にはいくつものカジノホテルやレストランが林立し、カンボジア領に属しながらも実質タイ経済に占拠された猥雑な歓楽街の様相も呈する。
 カジノと国境交易で栄えてきた混沌の街ポイペトが今、「タイ+1」を狙う製造業にとっての新たな生産拠点として脚光を浴び始めており、その原動力となっているのは日系製造業の果敢な進出だ。清濁合わせ飲む陸路国境のカオスからアジアの工場として脱皮できるのか、今その過渡期にあるポイペトの現状に迫る。

(1/4からの続き)

貿易物流拠点としてのプレゼンスの高まり

 ポイペトではタイから主に輸送機械や一般機械等の高付加価値機材・製品が輸入され、カンボジアからはセメントを主とした資材や食料品等が輸出される。 輸出入量を数字で眺めてみると、輸出が重量ベースで約9,851トン、金額ベースで約9,970万米ドルであるのに対し、輸入が重量ベースで1,626,968トン、金額ベースで8.8億米ドルと、取扱貨物の性質の違いにより輸入総額が金額・数量ともに輸出を大きく上回る状況が定常化している(カンボジア関税消費税総局発表2015年度)。

 同じくベトナムとの陸路国境の街であるカンボジア南東部スヴァイリエン州のバベット(ベトナム側はモクバイ)と比べると、金額ベースにて輸出量は約3倍、輸入量に至っては約7倍とポイペトでの取扱量が大きく上回っている。

 数量ベースの輸入取扱量に関して言えば、カンボジア唯一の深海港を擁する海の玄関口シアヌークビル港湾での取扱量の1.2倍の貨物量が流通しており(同2015年度)、ポイペトのカンボジアにおける貿易物流拠点としての存在感の大きさが計り知れる。

 ポイペトはタイの首都バンコクおよび同国最大の貿易港であるレムチャパン港から各々トラックで3~4時間の距離に位置し、ポイペトからカンボジア首都プノンペンまでは約7時間、世界遺産のアンコールワットで知られるシェムリアップまでは約2時間。カンボジア国内の幹線道路の整備もかなり改善されたこともあり、ポイペトは両国をつなぐ陸路物流拠点としては優位な立地条件のもとに位置している。

 そのポイペトに進出を開始している諸企業は、すでにタイ国内に生産拠点を持ちながら「タイ+1」のサテライト拠点をカンボジア側に持つことによるメリットに狙いを付けている。

「タイ+1」としてのポイぺトの優位性

 タイに進出している多くの製造業が直面している主な経営課題として挙げられるのは、労働コストの上昇、労使交渉の長期化、労働者確保の困難化である。カンボジアでも人件費が急激に向上してきたとはいえ、労働者の月額賃金を比較すればまだタイの60%程度。加えてタイでは労働者に払う年間賞与が基本給の4ヶ月から6ヶ月分にも上るケースも多く、最近1ヶ月分程度に落ち着いてきたカンボジアとは依然大きな格差がある。それら労務コストの減少幅と、タイの工場とカンボジア拠点との原材料・製品やりとりで生まれるロジスティックコスト(輸送+通関費用)を比べ、減少幅が上回るならば、カンボジアに新生産拠点を作るインセンティブが生まれる。

 その場合、カンボジア国内で拠点はロジスティックコストを極力低く済ませるため、国境近くで一定のインフラが整っている地域となり、必然的にポイペトが最有力候補地に挙ってくるわけだ。

 実際にかなり早い段階でポイペトの潜在可能性に目をつけた某日系大手メーカーは、諸々インフラが整う以前の2012年にポイペトに生産工場を新設、タイ工場から原材料輸入し、カンボジアでの加工後にタイ工場に輸出して戻すという形で順調に操業拡大しているという。

 

未だ残る法整備の混沌さ

 新たな製造業の誘致先候補として注目を集めるポイペトだが、カンボジア国内において整備しきれていない数々の制度やインフラの未成熟さに加え、不透明な商慣行がいまだ横行している現状もあり、いまだ昔ながらの混沌から脱却しきれていない点もまた事実と言える。

 制度が未成熟であることによる実務上の弊害として、国家経済がこれだけ海外との輸出入に依存しながらも未だに通関手続が各国境ポイントで完結できない点が挙げられる。カンボジアではインボイス(輸出入に用いる納品書兼請求書)記載価額が3000米ドルを超える輸出入については、どこの国境での通関であれ首都プノンペンに所在する関税消費税総局(General Department of Custom and Excise=GDCE)に関税評価申請を行わなければならない。通関当局(のみならずカンボジア行政機能全般において)の人員不足がもたらす地方での機能不全は現実問題として存在するが、現状では制度上において各国境通関には関税計算能力がないとみなしているに等しい。

 このGDCEによる関税評価にかかる日数は約2日。さらに実際の各国境での通関手続にあたってはこの関税評価シートの原本を国境に持参する必要がある。この発送に約1日かかるとして、実際の国境通関の3、4日前にはプノンペンのGDCEに各書類を提出し関税評価申請を行う必要がある。この事情を既に知っている貿易業者であれば現状先行して手を打てるものの、より取引量が増大してきた場合にはこの制度が大きなボトルネックとなることが関係者の間では確実視されている。



 昨今その存在意義そのものが厳しく問われている日本の農協は、戦前から戦後、そして高度経済成長時代、日本の農業発展に大きく貢献した農業組織でした。GDPの3割を占めるカンボジア農業の現況は、まさに農協を必要としていた当時の日本の農業の姿と重なります。
 JCGroupは2008年創業以来の主要事業であるカンボジア農業に日本の知見・ノウハウを導入、「古き良き日本型農協」の機能をカンボジアに実現させ「Made by JC(Japan & Cambodia)」によるカンボジア農業の産業化に貢献することを目指しています。
http://jcgroup.asia/

  髙 虎男
Ko Honam

早稲田大学政経学部経済学科を卒業後、日本の大手監査法人、戦略コンサルティング兼ベンチャーキャピタル(一部上場企業 執行役員)を経て、2008年カンボジアにて「JCグループ」を創業。日本公認会計士・米国ワシントン州公認会計士。


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