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2017年1月4日
カンボジア進出ガイド

【医療・医薬】

169 カンボジアの医療・医薬②(2016年11月発刊 ISSUE05より)

救急への対応 Medical Evacuation

 国内の主な私立・公立の病院で救急治療を受けられる所もあるが、質にはばらつきがある。2次又は3次救急では、国外に搬送されるケースが多く、バンコクまたはシンガポールなどの医療適格地へ搬送される場合もある。(参考:専用機での搬送費、約2~4万ドル。入院費、手術費等別途。)

 一方で、日本人医師・看護師などの医療職スタッフが多数常駐するサンライズジャパン病院(以下、SJH)が2016年10月に開院し、カンボジア国内で高度な救急治療を受けることができるようになった。



 SJHの林祥史医師は、「カンボジアでは交通事故で頭の怪我をして命を落としてしまうことが多いようで、救急には脳神経外科は必須です。我々の病院は脳外科も一つの強みとしており、カンボジアだけでなく周辺国以上の質を提供できると思います」と述べている。SJHは救急車も保有しており、病院に電話して呼ぶことも可能である。



 2010年に世界保健機関(WHO)が世界181の国と地域を対象とした人口10万人あたりの交通事故死者数を調査したところ、カンボジアは17.2人で78位となっており、日本の3.3倍も交通事故で命を落とすリスクがあることが示唆された。SICの野々村医師は、「軽症から重症までを含めた交通外傷は相当な患者数が推測され、カンボジア国内の医療機関や専門医の数を考えると、治療が必要な患者に医療が十分に行き渡っていない可能性があります」と話す。このように、カンボジアの交通事情には日頃から十分注意が必要だ。万が一のときのため、カンボジアの救急搬送手段をあらかじめ理解・確保したい。

保険を選ぶ際のポイント What to consider when choosing health insurance

 カンボジアの医療費は先進国に比べて割安である。しかし、社会保険や国民健康保険がある日本と違い、医療費は100%本人の負担となるため、海外旅行保険の存在は大きい。また、普通の海外旅行保険には歯科治療が付帯されているものは少ないが、一部の民間保険や欧米系の保険にはカバーされているものがあり、日本の国民健康保険の加入者であれば海外治療でも保険の一部金還付を申請できる。なお、還付申請の際には、申請書・領収書・診断書(診療内容明細書)が必要となるので忘れずに取得しなければならない。

カンボジアでかかりやすい病気 Staying Healthy in Cambodia

 当地では日本とは違う環境であることを踏まえた健康管理が必要になる。蚊などに媒介されるウイルスや感染症、細菌・寄生虫による急性胃腸炎や生水にも注意が必要である。ケン・クリニックの奥澤医師は、「患者様で一番多いのは風邪です。腸炎、食あたりが続いて、季節によってデング熱やインフルエンザも多いです。蚊だけでなく、ダニ・シラミ・アリなどの虫刺されで来院する方もいらっしゃいます。結核にも注意が必要です。日本では隔離が必要な方でも普通に出歩いていたりしますので。病気以外では、ひったくりや交通事故による傷・骨折・捻挫なども多いです。」と語っている。

 また、SICの荒木医師も、「カンボジアではまだ風土病も多く、市内で赤痢、コレラ、食中毒、デング熱なども身近に見かけます」と注意を呼びかけている。

 また、SICの久保伸夫医師は、「経済発展が著しく、建設ラッシュや自動車の急増による大気汚染は深刻です。中国同様にダニ、かび、PM2.5などの呼吸器の汚染物質が室内外問わず多く、気管支喘息などを引き起こす可能性があります」と述べた。


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