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2015年7月12日
カンボジア進出ガイド

【建築・内装】

035 カンボジアの建築・内装①(2015年4月発刊 ISSUE02より)

建築 Construction

■ 建設業界 The construction industry

 カンボジアは建設ラッシュの真っただ中だ。プノンペンポスト紙によれば、建設部門への投資、特に住宅建設が向上しており、不動産取引が力強く成長していることを背景に、多くの不動産開発会社から建設許可の申請があると国土管理・都市計画・建設省のラオスチップ・セイハー氏は述べている。同省の発表によれば、2014年の建設投資額は約25億ドルで1,960件のプロジェクトが承認された。前年の27.7億ドル、1,641件のプロジェクトと比較しても、おおむね堅調に推移している。国別では韓国18.9億ドル43件と投資額で最も多く、次いで中国9.5億ドル85件であった。



 66社もの建設会社、サプライヤー、不動産会社等が加入するカンボジア建設協会(CCA)が支援する建築業界専門誌、コントラクション&プロパティ(C&P)のミース・プロックサー氏は「家賃などを含めた不動産価格はいまだに周辺国と比較して安価なままです。タイやベトナムなどと比べると、政治の安定性、低賃金、チャイナプラスワンなど、ビジネス的な優位性はカンボジアへの投資の引き金となっています」と語る。また、建設業界の将来について、「もし政治の安定性が保証されれば、約7%の年間経済成長率も保たれ、建設業界も健全なスピードで発展していくことと思います。どのプロジェクトも需要を基礎として進んでいくでしょう」と続けた。

■ 2017年問題 The year 2017 problem

 カンボジアデイリー紙によると、2017年までにプノンペン市内には9500ユニットが供給されるとCBREのシニアアソシエートデレクター、ティダ・アン氏は答えており、不動産会社最大手のボナリアルティ代表のソン・ボンナ氏によれば、投資家たちは投機的に購入しているものの、供給の増加によりプロパティを埋められないことを心配しているとし、マンションが建設された後の稼働率が懸念されると述べた。

 プノンペンで多数の建設実績がある韓国系デベロッパーNURID&Cのアンドリュー・J・アン氏は、「以前はオープンで入りやすいマーケットでしたが、現在の状況ではチャンスにも限りがあり利益を出すのも限界があると思います。きちんとストーリーがあり、質も一流のものを提供できる会社が生き残る時代へと変化を遂げています。ブームはしばらく続くと思いますが、価格は下がると予想されますので、会社のローカライズやサプライの強化、ローカル人材の育成、魅力的な新物件の投入、投資家の誘引がカギとなるでしょう。数年後は供給過多が予測され、多くの不動産開発会社が選択を迫られることになるでしょう」と語った。

■ 建築コストの上昇と需要の変化 Rising construction costs and changes in demand

 BDリンクの報告書によれば、2007年から2011年の5年間の建設労働者の賃金動向では、名目賃金が非熟練労働者て78%上昇している。そのほか、セメントや鉄などの資材など、あらゆる価格の上昇によるコスト面の変化、地価の高騰により戸建てが持ちにくくなったことから需要の変化が起きている。オーバーシーズ・カンボジア・インベスメント(OCIC)のトゥーチ・サムナン氏は「価格の話をするならば、10年前と比較してまず労働者の賃金が違います。当時は日給にして1.5ドルほどだったものが現在では5ドル程度になっています。セメントや鉄などの資材の価格も上がっています。また、需要にも変化が見られます。10年前はアパートメントの需要は多くありませんでしたが、現在ではかなり多くなっています。土地の価格が高騰して、個別の住宅を持てなくなってきていることも理由の一つでしょう。世代間でも需要の差はあります。若い世代はアパートメントに抵抗が無いようですが、年配の世代には戸建ての方が良いという方々が多いようです。現在は90%が戸建て、10%がアパートメントですが、近い将来は需要が逆転すると思います」と語る。

 ローカル系不動産仲介会社、Vトラストの2014年11月の報告書では、世帯数の増加と住宅需要の増加には相関関係を示唆しており、着実な核家族化の進行を背景とした住宅需要の増加を今後も見込めるとしている。また、銀行の住宅ローン金利が以前より下落したことも後押しとなって、現代的なライフスタイルに傾倒する中間所得者の利用が増加しており、住宅ローンは2012年に3.3億ドルと前年比20%増で成長し、2013年には最初の2ヶ月間で3.4億ドルまで成長したと、報告している。

 アンナキャムパートナーズの荒木杏奈氏は、「カンボジア人の生活スタイルが変化と共に、将来的には長屋のような住まいからマンションに住むという動きも予想されますので、高級コンドミニアムだけでなく、比較的安価なコンドミニアムも注目されていくと思います。」と語った。
(036 カンボジアの建築・内装②へ続く)


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