カンボジアに進出する日系企業のための
B2Bガイドブック WEB版

カンボジア新しいスタンダード
(2016/5発刊4号より)
Cambodian Impress, CEO
安藤 理智
ANDO Risato

1978年生まれ、東京都出身。横浜国立大学教育学部卒。東南アジアに住んで16年。日本人でありながらタイ王国オリンピック委員会のオフィシャルフォトグラファーを務める。SoI and Luna(Thailand) Co.,ltd.代表取締役。株式会社スタディオアフタモード取締役。

Cambodian Impress, General Manager
橋本和彦
HASHIMOTO Kazuhiko

1978年生まれ、徳島県出身。東京大学教育学部卒。株式会社リクルートにてマーケティング部門と人材開発部門、および独立系戦略コンサルティングファームを経て、タイ、ベトナム、カンボジアと拠点を移す。得意領域は組織問題と人材問題。

最も大切な事は事前準備

ナリット: 漠然と質問なのですが、カンボジアでビジネスを始める上で、最も大切な事はなんでしょうか?

橋本: カンボジアに限らず、ビジネスを始める上で何より欠かせないのは事前準備だと思います。具体的には、現地視察や市場調査を自らの目でしっかりと行う事がその第一歩になります。その際に自社の商品の需要や競合、自社のビジネスの武器が何であるのかなどを明確にする必要があります。そのために市場の調査や分析を、自ら毎日欠かさず行う事が大切です。その結果を元に「これを武器に、競合他社との差別化を図り、この市場ドメインに新規参入し、第1ステップとしてこんな姿にする」という流れを自分の中にしっかりと描きます。

ナリット: どんな商品やサービスを、どこで、どのように提供するのかを明確なイメージにする、という事ですね。

安藤: ビジネスは業種や土地によって客層が大きく変化します。この客層と自社のビジネスが狙うターゲットが噛み合っていなかった場合、どれだけ商品力が高くとも一定以上の売上が見込めなくなってしまいます。必ず立地とターゲットを明確化して経営戦略を立てる必要があります。

 その際に最も重要となるのは開業予定地である不動産です。しかし、すぐにイメージに合致する不動産が見つかる事は稀です。慌てて不動産を契約してしまったものの、後になって立地が不利であることが判明したり、その他いろいろな問題が表面化してくることも少なくありません。

 また、カンボジアの税務をきちんと理解しないまま不動産契約をしてしまい、予想を超えた税金を支払うはめになってしまうといったケースも良く聞きます。

ナリット: なるほど。日本には「郷に入っては郷に従え」という諺がありますが、たしかにカンボジアの現状をしっかりと知り、そしてその上でビジネスプランを考えるのは大切ですね。

安藤: SWOT分析という経営戦略策定方法でも使われていますが、外部環境を正しく知るという事は大切です。

ナリット: SWOT分析?

橋本: その話をすると長くなってしまうので、またの機会にじっくりと話しましょう(笑)

タイムスケジュールを考えてイニシャルコストを下げる

ナリット: 市場調査や事前準備はどれくらいの期間を考えておくのが良いのでしょうか?

橋本: それは業種によって一概には言えませんが、短くて1~2ヶ月、長くて半年程度ではないでしょうか。

安藤: 日本の感覚からするとものすごい勢いでカンボジアは発展してきていますので、そのスピードに乗り遅れないような意識も必要ではないかと思います。

ナリット: 市場調査が終わり、いざ法人登記をしようとした場合、どのような手順になりますか?

橋本: カンボジアで法人を設立運営する際に必要な手続きは大きく分けて3段階あります。まず最初の段階が商務省(Ministry ofCommerce)への法人登記申請、続いて税務総局(General Department of Taxation)でのパテント登録(事業登録)およびVAT登録、そして毎月の税務申告になります。

安藤: 物件契約をするタイミングをどのタイミングにするのか、日本の一般常識からすれば商務省への登記申請前の段階になると思います。しかし、カンボジアにおいては物件契約を慎重に行う必要があります。税務総局での申請の際に物件の固定資産税納付証が必要になったり、あるいは初めての税務申告の際に、契約書の調印日からの源泉徴収税の納付が必要になったりします。我々は法人設立の際に、次のような順番を推奨しております。

 物件の手付契約→法人登記申請→物件契約→税務総局での登録→開業

ナリット: なるほど、物件の契約のタイミングが違うんですね。これはまさに新しいスタンダードですね!

橋本: また、各種申請の際に、全株主のサインを求められるケースも多々あります。申請の度に全株主のサインを集める作業を繰り返すと、それだけで時間を無駄にしてしまいます。時間を無駄にするということは、すなわちイニシャルコストが増えるということであり、その後の運営費を圧迫する結果になります。

安藤: 開業までのコストを最小限に抑えようと思えばこそ、事前準備はとても大切です。個人でも法人登記申請は可能ですが、全ての書類がクメール語表記ですし、専門的な知識も必要になりますから、法人設立サポートを依頼する場合がほとんどかと思います。その際は事前に情報や必要書類をしっかり開示してくれるエージェントを選ぶというのはとても大切なことだと思います。

ナリット: 事前に書類等は全て準備しておいて、実際に登記手続きが始まったら、人材の雇用や開業に必要なオペレーションの確立などに時間を割くことができるのですね。

橋本: おっしゃる通りです。日本では「時は金なり」という諺がありますからね。

ナリット: Le temps c’est de l’argent.

安藤&橋本: ????

ナリット: フランス語の諺で「時は金なり」です。

カンボジアで魅力のある企業になるために

ナリット: 最後に、カンボジア進出を考えられている方へのメッセージをお願いいたします。

安藤: 何も考えずに闇雲に始めた事業はほとんど成功しません。開業した後は自社の経営で非常に苦労することになります。24時間常に自社のことを考えて不安から眠れない夜を過ごすということも珍しくはありません。
だからこそ、開業後に少しでも余裕を持ちたいと思うのなら実際に開業する前の準備を綿密に行っておくことを強く推奨します。

橋本: 目の前のことに精一杯になっているような状態では広い視野を持って適切な判断を行い辛くなります。起業を成功させるためにも、起業家自身の心の余裕を保つためにも開業前の準備はしっかりと行っておきたいものです。

ナリット: だからこそ、プールのある開業支援シェアオフィスなのですね。

安藤: はい、そうなんです。心に余裕を持って、カンボジアでの滞在を楽しみながら、ビジネスをスタートし、そして皆様に成功して頂きたいと願っています。

 


(2016/5発刊4号より)




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