2017年10月4日
(前回の続き)
――日本人でも口座は開設出来るのでしょうか
ジョジョ・マロロス(以下、ジョジョ) もちろん、可能ですよ。例えばウィング口座に残金があった場合、ケーブルテレビの契約をしれば、家を出ることなく、その料金を支払うことができます。
現段階では、ウィング口座を持っていたとしても、わざわざ銀行や代理店に行って、口座内のお金を現金化してしまう人がいます。そういう人たちに対して、弊社は「現金化する必要はありません。 請求書や水道料金、保険に至っても、ウィングで支払いを済ませることが可能です」と通知しています。
また、例えばあなたがローンを申請して300ドルの融資が下りたとしましょう。口座には決済用の300ドルが存在するので、それで店頭で商品を買うことも可能です。一度口座を持ってしまえば、事業にも、携帯電話のチャージなどにも活用できます。もちろんウィングでの支払いが可能な素敵なレストランもありますし、その際現金を出す必要はなく、割引制度もあります。ともかく我々が導入しているのは、そういうシステムです。
――カードの発行枚数を教えて下さい
ジョジョ 発行枚数はおよそ100万枚ですが、年間のアクティブユーザーは、およそ53〜55万人です。月次ベースでは、およそ15〜20万人が使用していますね。
――カンボジア人と外国人の口座開設料金はいくらですか
ジョジョ ちょうど今プロモーション期間なので、手数料は頂きません。パスポートさえお持ち頂ければ、無料でウィング口座をお作りできますよ。入力が完了したら、スマートフォンでウィングのアプリが使えるようになります。アプリは約6ヶ月前にローンチしました。実際、多くの人が利用し始めています。新バージョンでは”Pay with Wing”という機能を追加し、支払いの際に、QRコードが使えます。取引用のシリアルナンバーを入力する必要がないんですね。時々、間違ったシリアルナンバーが入力されることもありましたから、これは便利です。
カードにはICチップが付いており、特別製で、NFC(Near Field Communication - 機器をかざして通信できる規格のこと)で動作します。これはカウンターで取引を行うたびに使用するものです。
それと、ご存知だと思いますが、指紋認証もあります。ログアウトした後に戻ってきたいなら、タッチして指紋認証するだけでOKです。毎回パスワードを入力する必要はありません※。
※スマートフォン自体に指紋認証機能が付いていないと使用不可
また、電話番号を入力するだけで、携帯電話のトップアップも可能です。彼が好きだから、彼は良い仕事をしたから。そんな時に、プレゼントとして相手の電話料金をトップアップ※することが出来るのです。もちろん、あなたも利用できますよ。誰かにお金を送ってほしい時とか。
※トップアップとは、携帯番号に対する残高チャージのこと。カンボジアの通信料は従量制なので、通信した分だけ残高が減っていく。トップアップをする場合、ATMに行くか、商店でプリペイドカードを購入してシリアル番号を入力しなければならない。
――開発は社内で行われているのでしょうか
ジョジョ はい、開発は社内で行っており人数は30人程度です。Wing全体では350人くらいですね。約5,000の代理店を個別に管理する必要があるため、弊社の大半は、販売・流通として動いています。代理店向けに取引を簡単にするアプリもあります。
本当に面白い仕事なのですが、かなりの仕事量ですし、苦労も多いです。パートナーと提携までにも、時間がかかりました。しかし、彼らのビジネス改善に役立っているという実感があります。それこそがウィングの目的であり、さらに最終的には、私たち全員がカンボジアの経済を改善できると思っています。
――カンボジアでは、優れたIT開発者、IT技術、ITエンジニアを見つけるのは難しいと聞きます。貴社はどのように技術者を採用し、またどのように教育されているのでしょうか
ジョジョ 我々も同じ問題に陥っています。弊社も、実際にITのチームを構築するのは難しく、あちらこちらに行っていますね。我々は年間を通じて、学校訪問をして採用できそうな人を探すなど、人材就職フェアを実施しています。あるいは、一部の学校や企業とともに、ITプログラムを開発など。カンボジアにおいて、こういった試みは不足していますね。しかし、カンボジア人の良いところは、彼らがまるでスポンジみたい、簡単に吸収しますし、飲み込みが早いことですね。
特にカンボジアでは、IT人材が不足していると思いますが、もう一つの問題は、技術の革新速度が速いことです。 データウェアハウスや開発など、新技術が生まれるとすぐに、アプリに組み込まれていきます。弊社のサービスがどのようにアプリに活かされるのかに、ぜひご注目ください。今や、誰もがアプリを持っていますから。
――金融業界における将来の展望をお聞かせください
ジョジョ 近年、多くの企業がモバイルバンキング市場に参入していますよね。誰もがフィンテックに取り組んでいると思います。外資系銀行が独自のモバイルバンキングアプリを導入したことや、インターネット上や電話上での取引導入を、どこかで聞いたことがあるでしょう。これからは、さらに様々なことが起こり、多くの人々が恩恵に与かれるでしょう。
銀行業務のうち、一般的に必要だとされていたものが減り、中には、単に預金を受け入れるだけで、もう残高を維持しない、と考え始めるかもしれません。もしくは、カンボジア人の約50%がスマートフォン保持者、約800万人の市場のため、さらに多くの新製品やサービスが登場するかもしれません。
それから、スマートフォンで操作完了できる製品が出てくるかもしれないため、カンボジア国立銀行は金融の健全性を維持する必要があり、かなり集中的なセキュリティ対策が必要です。ハッキングなどを防ぐためです。ですから、これらの金融機関の多くは、貯蓄だけでなくローンにも注力していくのではないかと思います。
また、オンライン融資仲介でアメリカ最大手の「レンディング・クラブ」をご存知でしょうか。余剰金を持つ個人投資家が、融資を希望する中小企業や個人に対して、お金を貸すシステムです。つまり、銀行からお金を借りる必要がありません。もしあなたが余分に50ドルを持ってるのであれば、レンディング・クラブに登録して、お金を借りたい人に50ドルを貸すことができるのです。テクノロジーはそういう出会いをもたらします。ピア・ツー・ピア・レンディングですね。
これらが、起こり得るでしょうね。新しい銀行商品やサービスがさらにたくさん出てくるでしょう。また、そのうち数社が、貧困層や銀行口座を持たない人たちへの投資を検討しており、今後数年間で多くの改善が見られると思います。カンボジア国立銀行は、新興市場であるカンボジアが、革新の面で他のマーケットに遅れを取らないようにしていますね。
――日本企業に何を期待されていますか
ジョジョ 1986年、私は日系企業と働いていました。当時のフィリピンでは、多くの日系企業が参入していましたから。カンボジアでも、今以上投資額が増えること、また新しい技術革新、投資技術を導入して、さらなる協力を期待しています。おそらくウィングの技術も、投資に活用できるでしょう。
我々はイオンなど、多くの日系企業と提携しています。カンボジアを投資のチャンスだと捉えるならば、日本にとって積極的であるべき時期だと思います。その一環として、ウィングはビジネスをより簡単に管理し、前進させるためのサービスです。
――最後に、読者にメッセージをお願いします
ジョジョ カンボジア企業と提携する機会は多くありますが、近年、企業間での競争が激化しているものの、実際には革新が起こるような製品は登場していないのではないでしょうか。
そんな中、我々は金融革新のリーダーであり続けています。貧困層を通じて金融面での取り込みを強化するだけでなく、お金を移動するコンセプトをすべてに導入し、先陣を切って経済を支えているのです。
カンボジアは、投資するのに最適な場所で、サポートするための基本的なインフラも整っています。先ほどからお伝えしていますが、ウィングはカンボジア全域で非常に良い実績があります。5,000もの代理店があり、近所で請求書の支払いを済ますことや、たとえ家にいたって取引が可能です。まるで、日本のセブンイレブンのようですよね。
我々は、日系企業とのパートナーシップを築くことで、さらに多くのことを成し遂げられるでしょう。再度になりますが、カンボジアは投資には非常に良い場所です。人々は非常に暖かく、親切で、そして新技術を吸収するスポンジのようです。一緒に働きやすい人々だと思います。これから、より多くの日系企業と出会い、ビジネスパートナーになる企業との協力を楽しみにしています。(取材日:2017年2月)