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業界別インタビュー

早く家に帰りたくなるような住まいを提供[不動産]上田武範 (2/2)

不動産

タマホームカンボジア Tama Home Cambodia
マネージングダイレクター: 上田 武範 Ueda Takenori
サービスアパートメント「TAMASA」とプノンペンタワーの22階のレストランバー&ホテル「Tama Hotel Phnom Penh Tower (D22/H22)」を手掛けるタマホームカンボジア。そのマネージングダイレクターを務める上田武範氏に、タマホームカンボジアの事業について伺った。
カンボジアの気候に合わせた造り

(前編からの続き)
――なるほど。その中で特に気を使った部分はありますか?

上田 はい、出来るだけカンボジアの風土を取り入れるようにしました。カンボジアの人は、光や風を上手に家の中に取り込んでいる習慣があるようです。アパートメントの2階、3階が涼しく感じると思うのですが、これらのフロアには窓がある訳ではありません。有孔ブロック(穴の開いたブロック)をうまく配置することによって、風と光を取り込んでいます。しっかり風が流れる設計をしているので、部屋の中も涼しいです。

例えば、北側は暑くも暗くもなく、平均的に明かりが差し込む造りです。 南面が一番暑そうですが、有孔ブロックをたくさん設けていますので、直接日光を遮りながらも最低限の光は取り入れえられるようにしていますし、暗くはならないようにしております。光は上から当たりますので、有孔ブロックの設置によって、光が入る面を狭くすることで室温の急激な上昇を抑えるよう工夫しています。

開放感も演出したかったです。暑い国ですからいくら考慮しても熱はこもりますし、熱はどんどん上に上がって行きますね。ですので、天井が低いと部屋全体が暑く感じてしまうので、温かい空気は上に逃がし、自然に換気ができるような設計にしています。

人が「住みたい」と思う部屋

――なるほど。並々ならぬこだわりを感じますね

上田 はい、家というのは、人が生活する上で最も重要なベースになる部分だと思います。造られた部屋ではなくて、この部屋にこういう絵があったら素敵だな、写真立てを飾りたい・キャンドルを置きたいなぁとか想像しますよね。キャンバスに例えるなら、真っ白な白地に色んな色を乗せられるような、そんなお部屋を準備させて頂いております。


全26部屋で、デザインは全室違います。種類は、スタジオタイプと2ベッドルームタイプです。部屋を区切ってしまうと開放感がなくなってしまうので、完全に区切るわけではないですが、ベッドルームとリビングをちょっと隔て、2mほどの壁で立ち上げることで、空間のリズムを変えることができるのです。ちょっとプライベート空間を隠すことで、安心感が得られると思います。

共有スペースには色々な仕掛けがあります。ご近所さんとお酒を飲んだり、部屋に入るのはある程度の距離感にならないとできないですよね。ですので、まずはお互いのことを良く知れる空間があればいいなと思いました。
自分のお部屋以外に、1階にカフェがあって、テラスがあって、2階、3階、4階の色々な所に椅子やテーブルが置いてありますし、特に4階に関してはプールがあって、ウッドデッキやサンデッキもありますので、自分の好きな場所で好きな時間を使ってもらえればと思っています。

自国では味わえない経験を

――他のサービスアパートと比べて特別な所はありますか?

上田 はい、例えば入居者様には無料でCCC(カンボジア・カントリー・クラブ)というカンボジアでも最大級のスポーツ施設のメンバーシップカードを無料でお渡ししています。住まいだけではなく、生活スタイルとして自分の国では味わえないものを提供したいです。例えば日本ならば、このような環境でスポーツクラブを自由に使い、このような建物に住もうとしたら、ものすごい金額がかかりますよね。カンボジアにいるのは期間限定だからこそ、市内に住むという選択肢だけではなくて、早く家に帰りたくなるような住まいや安心感を提供できたらいいなと思っています。

――なるほど。スポーツ施設のメンバーシップがついているとは知りませんでした。次に、どのような方をターゲットにしているのか教えて頂けますか?

上田 はい、TAMASAはプノンペン市内からは8キロの距離にあります。空港周辺の企業、経済特区の企業さんを狙えると考えましたし、そこに付加価値があると思います。市内から離れたところでやるのであれば、先ほどのCCC(カンボジア・カントリー・クラブ)等、何かしらのメリットが必要ですからね。

日本人常駐のサービスアパート

――なるほど。現在はどのような入居者が住んでいますか?

上田 今は日本人が4割、外国人が6割です。外国人は全員女性が入居しています。市内にある建物で人気があるのは、立地が良く、部屋が広く、家具がきれいという所ですが、高いですよね。BKK1エリアであれば1000ドルから1500ドルは最低かかる、ファミリータイプでは2000ドル以上かかりますよね。

TAMASAでは、掃除、洗い物、リネン交換などはサービスに含まれています。お洗濯に関しては付いていない所が多いようですが、TAMASAでは、週2回洗濯に入りますし、アイロンサービスもしています。もちろん24時間セキュリティです。忙しい方のために、お買い物サービスも承っています。
また、日本人マネージャーが常駐しているサービスアパートメントはおそらくTAMASAだけかもしれません。

また、市内から少し離れているので、入居者のみなさんの多くは車をお持ちです。ちなみに駐車場代は賃料に含まれております。足をお持ちでない方は、ご自身でトゥクトゥクドライバーやタクシーを呼んでいます。期間が決まっている入居者様が多いので、自国で味わえない心の豊かさや、建物が与えることのできる幸せを感じて頂きたいです。入居された方からは「なぜか写真を撮りたくなる、色々な所へ行ってみたくなる、普段聞きもしないジャズを聴きたくなる」という声をいただきます。まさしくそんな空間を目指しています。また、1階のカフェ作った料理をお部屋までデリバリーするサービスを実施しています。他ではなかなか味わえないことを、ここでは味わえることが強みのひとつかもしれません。

――なるほど。その他にも独自のサービスはありますか?

上田 はい、時々イベントを実施しています。というのも、他のサービスアパートだと、入居者同士の交流目的や、自由にプールを貸し切ってパーティーができる空間って、さほど多くありません。入居者が予約をすればというサービスはありますが、TAMASAは外部の方でも予算を決めていろんな形でパーティプランを決めて頂いて利用してもらうことも可能です。入居者への還元も兼ねて、オープンなイベントには無料で参加して頂けます。入居者同士も話すきっかけもできますし、生の声を聞きたいという方もいらっしゃるので、そのような時に交流をして頂いております。
また、通常は契約期間が1年からというのがサービスアパートメントの概念としてありますが、TAMASAは1ヶ月の短期でも受け付けています。ホテルライセンスを取得しましたので、1泊から利用していただけるようになりました。住むことを前提に、事前に宿泊して体験して頂くことが可能です。見た感じと、住んだ感じでは違いがあるのではないかと思います。

――最後にアピールポイントをお願いします

上田 はい。TAMASAアパートは、入居者が自分の手で心地良い空間に変えていただけるアパートメントになっています。TAMASAのようなサービスアパートメントを市内に作りたい、カンボジアに投資家を呼んで、こういう新しい発想の建物を作りたいなど、キッカケ作りができたらいいなと思います。カンボジア人にとっては未完成と思われる所を、未完成の美としてお伝えできればと思っています。(取材日/2015年3月)


タマホームカンボジア Tama Home Cambodia
事業内容:日本人常駐のサービスアパート、プノンペンを一望できる客室とレストラン・バーを併設したホテル
URL: www.tamahomecambodia.jp

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