2015年7月2日
(前編からの続き)
――様々な懸案についてお聞きしますが、まず建設コストの上昇やワーカー不足などはについてはいかがでしょうか
アンドリュー J アン(以下、アンドリュー) 我が社は10年以上で良いチームを作り上げて経験を積んできました。様々な物件に関わってきましたのでそれなりにスキルも磨かれています。開発側としては今のところ販売価格が高いので利益は5割を超えています。今後は、供給過多による影響を受けた販売価格の伸び悩みと建設コストの上昇から、建設会社の利益は低下すると思います。問題は、このような懸案によって品質が低下するようなことが起きる可能性があることです。その時に備えて、私たちの場合は韓国から指導人材を呼び寄せ後継の育成に当たっているところです。
――自動車が増え交通渋滞が深刻化していますが、それについてはいかがでしょうか
アンドリュー 米国や日本、韓国ほど大きな国ではありませんので、地下鉄などの公共交通システムを導入するのは短期間では難しいでしょう。ボンケンコンなど路上駐車だらけでどうにもなりませんからね(笑)。政府も予算が無いがために何もできない状況ですし、マネジメントもひどいです。駐車場にしても、公共交通にしても個人的には政府が何らかの規制に乗り出す必要があると感じています。その点、市営バスも発達しているなどミャンマーは進んでいますね。我が社では、関わる物件には地下駐車場の整備を強く勧めています。
―――築浅なのに古めかしい物件を見かけますが、そのような物件はメンテナンスが悪いのでしょうか
アンドリュー コストと質のバランスが悪いのが原因ですね。今までのローカルの開発業者は初期建設コストばかりを見ていたので、初期コストを抑えれば抑えるほど物件にぼろが出るのは時間の問題です。そのようなメンテナンスコストをローカル会社は着目してこなかったのだと思います。最近になってようやく気づき、その辺も勘案するようになっていると思います。
このような小さなマーケットではメンテナンス専門業者も利益を出すのは厳しいですが、今後はチャンスもあるでしょう。我が社や近年の国際的な開発会社は初期コストよりもいかに長期スパンでメンテナンスコストを抑えるかに重きを置いていますから。今後は日韓のマネジメント会社の参入もあるのではないでしょか。ただ、大変だと思いますよ。ローカルスタッフはメンテナンスや管理をしたことが無い人ばかりですから。オーナーやテナントの要望を聞き入れるというところからトレーニングする必要があるでしょうね。いずれにせよ、現在プノンペンで計画されているプロジェクトだけでも2万件近いユニット数です。そのうち半分でも管理することができればメンテナンス系の会社も利益を出せると思います。
――進出するうえでの留意すべき点はなんでしょうか
アンドリュー 建築はもちろん、金融から製造業など様々な業種で多くの会社がカンボジアに参入を検討しているようですね。私はビジネスマンなのでその現象が良いかどうか断言はできませんが、個人的には今後ベトナムよりは良い市場になるのではと思っています。そして政府は今後ローカルよりも外国投資に傾倒していくでしょう。カンボジアはベトナムを追い越せではなく、目標とする国をシンガポールにすると良いかもしれませんね。市場を開放して誰でも参入できるようにし、経済が回るようにしていくべきです。あとはこの国は米ドル建てなので為替リスクも少なく安心だと思います。ベトナムはドンが主流ですのでそれも大きな違いです。
――日系企業へのメッセージをお願いします
アンドリュー カンボジアで働くビジネスマンとして、日本人のサポートに大変感謝しています。時に彼らの期待に応えられないこともありますが精いっぱい努力してより良くしようと思っています。今後も応援よろしくお願いいたします。
――好きな日本食はなんでしょうか
アンドリュー よく日本に行きますが、六本木や銀座、渋谷にそれぞれお気に入りの店があります。築地市場も好きです。桜の季節には家族旅行で京都にお花見に行ったりもしますよ。プノンペンにある和食レストランでもほとんど行きましたが、HACHIとKANJI、ORIGAMIが好きです。最近のお気に入りは姉妹がやっているSHINYAです。ストレスがたまるとあそこに癒されに行きますよ。(取材日/2015年3月)