2015年6月30日
――簡単な自己紹介とカンボジアの印象をお聞かせください
アンドリュー J アン(以下、アンドリュー) アメリカの大学で会計を勉強した後、アメリカやシンガポールの金融や投資関連業界で20年ほど仕事をしてきました。その後、2013年にNURIに副社長として参画したんですが、実は、初めてカンボジアに来たのは2011年です。当時は銀行の合併の仕事に関わっていたのですがうまく行かずシンガポールに戻りました。そんな苦い思い出もあって、最初はカンボジアに良い印象はありませんでした。現在では、知れば知るほど魅力が伝わってきて、特に金融や不動産開発、キャピタルマーケットなどのビジネスオポチュニティは計り知れないものがあると感じました。
――会社について教えて頂けますか
アンドリュー 我が社は11年前に創業した韓国系企業です。現在、我が社で働く多くのエンジニアはサムソンなどの有名企業などから合流したメンバーで、開発部の中にはさらにグローバルな企業で経験を積んだ人間もいます。2004年当時はマンションやコンドミニアムという概念がありませんでしたので、カンボジアにとってはとても新しいコンセプトに映ったことでしょう。この11年間で住居施設4件と商業施設数件に関わってきました。プノンペンタワーやライオンシティもそうです。今、プノンペンに建つビルは我が社が何らかの形で関わっています。
――他社との違いはどこでしょうか
アンドリュー 10年以上カンボジアで事業を営んでいることで強いチームを作り上げてきました。当然ですが、新規参入してくる会社の中には、我が社よりも大きな会社はいくらでもあり、財力やシステムで上を行くところがたくさんあります。しかし、僕たちの会社は何よりもカンボジアでの10年以上の経験があります。また、小さな会社なので社内での決裁や決断がとても早いのも特徴ですね。大きな会社だと一番上に到達するまでずいぶん時間がかかりますが、我が社は電話一本で解決することも多々あります。
――これまでで最も苦労したことはなんでしょうか
アンドリュー バランスを取ることですね。株主と従業員の関係など、僕は中間管理職なので両方に気を使います。コミュニケーションも大変です。言葉のバリアではなく、態度でしょうか。特に韓国に長くいてこちらに来た人はローカルや外国人とコミュニケーションを取るのが苦手です。僕は橋渡しをする役目ですね。ビジネスをしている以上僕は常にお客様として尊敬の心で接しています。たとえ自社のサービスを選んでいただけなかったとしても態度に出してはいけないと思っています。
――御社の今後の展開を教えてください
アンドリュー 計画としては住居物件を2棟、リバーサイドとバンケンコンに建設する予定です。開発としてはマレーシアのライオングループと共同でライオンシティの開発に取り組んでいます。今後レオパレスのトゥールコークのサービスアパートメントの建設の計画もあり、もしかしたら何かしらの形で関わるかもしれません。
――建設業界を取り巻く環境についてお伺いできますでしょうか
アンドリュー 現地のカンボジア人は大きな敷地に大きなビラを好みますが、そのような価値観も変わりつつあります。ですので、初めは厳しく感じても、必ず魅力が伝わるステージは到来しますし、その最初の数年のプロセスではとても利益が出しやすいです。最近では地元だけでなく、例えばシンガポールや台湾、そして香港系では有名企業など、新規参入が目立ちますね。
以前はとてもオープンで入りやすいマーケットでしたが、現在の状況ではチャンスにも限りがあり、利益を出すのも限界があると思います。きちんとストーリーがあり、品質も一流のものを提供できる会社が生き残る時代へと変化を遂げています。開発だけで言えば、後3、4年は大丈夫だと個人的には思っています。なぜなら銀行の住宅ローンも始まりましたし、金利も以前よりだいぶ落ちましたから購買者の後押しになっていますからね。さらに買いやすい郊外の物件開発も増えてきました。
――最近の建設ラッシュで将来の供給過多を不安視する人もいますが
アンドリュー はい。数年後は供給過多が予測されますから、多くの会社が選択を迫られることでしょう。良い人材を抱えているか、良い質のものが作れるかが大事です。建設コストの上昇もある中で、一部の会社には厳しくなるでしょうね。
マーケットプレーヤーは世界中どこでもいつの時代でも新商品を投入してきましたし、消費者は一定のところまではついてきます。ローカルの消費者からみて高価であるにもかかわらず人気のある商品、例えばIphoneやドミノピザなどを見てもわかりますね。ですので、ブームはしばらく続くとは思います。しかし、一方で価格は下がると予想しています。建設会社にとってはローカライズやサプライの強化、地元人材の育成、そして魅力的な新商品の投入と外国人投資家の誘因が今後の鍵になるでしょう。(後編へ続く)(取材日/2015年3月)